社会人2年目の秋、@nakaji_aoiさんは寒気や関節痛を感じ始め、やがて全身へと痛みが広がっていきました。
痛みは日に日に強まり、体重は10kg減少。一時は寝たきりの状態になるほどでした。その後、原因不明の全身の痛みが続く「線維筋痛症」と診断されましたが、判明までには1年ほどの時間がかかりました。
現在も病と向き合いながら、歌手として活動を続ける@nakaji_aoiさん。その歩みを伺いました。
「線維筋痛症」と診断されるまで
社会人2年目の秋、寒気と関節痛が出始めたという@nakaji_aoiさん。そのうち、背中を中心にだんだんと痛みが広がり、背中が何かに触れると「激しい痛みが走る」という状態になります。
当時、婦人科系の病気が見つかったばかりなこともあり、その病気の症状か薬の副作用でないかと@nakaji_aoiさんは婦人科を中心に複数の病院を受診していました。ただ、どこの病院でも「婦人科の病気の症状ではないし、その薬の副作用でもない」と言われ、不安や焦りが募る状態になります。
「自分に何か起こっているのだろうか…」と不安と焦りの気持ちを抱きながらも、痛みは日に日に強くなり。@nakaji_aoiさんは、目指して就いた仕事を休職せざるを得なくなります。
休職後は一人で痛みに耐える日々となり、起き上がることも難しく、一時は寝たきりになることもありました。
そんなとき、病院で働いていた@nakaji_aoiさんの職場の医師が、診断がつかず休職していることを心配し、大きな病院へつないでくれました。そこで初めて「線維筋痛症」と診断されます。
病名が分かったときは「原因不明の症状に名前があるんだ」と、ほっとしました。
しかし病気について調べるうちに、治療法が確立されていないことや、当時の情報では症状が改善する人・悪化する人・変わらない人がそれぞれ3分の1程度とされていることを知りました。
そのため、自分がどれに当てはまるのか分からず、不安や心配が募っていった当時の心境を振り返っています。
※線維筋痛症…全身の筋肉や関節に3ヶ月以上続く激しい慢性的な痛みを主症状とし、身体・精神・神経の多様な症状を伴う病気
音楽に支えられた日々と変化
寝たきりの生活や苦しくてつらい日々を送るなかで@nakaji_aoiさんの支えとなったのは、子どものころから好きだった音楽でした。
高校生のときから歌詞や曲を書いており、自分の思いを音楽にぶつけることで、折り合いのつかない気持ちを少しずつ整理してきました。
また、生き方や価値観を大きく変える出来事がありました。寝たきりで外出できず、ごみが溜まっていた部屋で過ごしていた冬の日のことです。その日、ふとごみを捨てに行こうという気持ちになりました。
家から約50m先のごみ捨て場へ向かい一歩踏み出すと、積もった雪の柔らかさや硬さが足の裏に伝わってきます。
「これが雪の感覚だ」と感じたことで、世界の見え方が変わったという@nakaji_aoiさん。その出来事をきっかけに外に出ることが好きになり、当時は職場の人に見られないよう、朝の時間帯に少しずつ歩くようになりました。
この体験は「冬から春、夏、秋へと移ろう自然のように、どんな状況でも生きていこう」と考えるようになったきっかけだったと振り返ります。

その後、散歩がやがて趣味になり、体調が落ち着いてからは登山もできるようになりました。
痛みと向き合い続ける現在の生活
@nakaji_aoiさんは治療を経て、座ったり歩いたり、演奏活動もできるようになりました。
「みなさんの前に出て音楽活動をしたいと思ったのは、線維筋痛症を経験したからでした」と語ります。
「この体験がなければ、人前に出ることはなかったかもしれません。座れることや歩けることなど、当たり前のことに感謝する気持ちを持てたのも、この病気があったからです。そう考えると厄介ではありますが、私にとっては憎みきれない同居人のような存在です」

ただ、その日によって体調の波は大きく、体調が悪いときには激しい痛みや頭痛が起こり今でも寝たきりになることも。そうしたときは、通院に加えて「痛みで何もできなくなる自分を責めない」と意識し、無理をせず休むようにしています。
また、長く病気と向き合う中で、痛みが起こりやすい状況も分かるようになりました。@nakaji_aoiさんの場合、気圧や気温の変化、日光や音、風のほか、重いものを持つことや睡眠不足、ストレスなどが影響しているといいます。
そのため、脱ぎ着しやすい服を持ち歩く、外出時はサングラスを着用する、できないことは周囲に頼るといった工夫を実践。あわせて、規則正しい生活も心がけています。
そして、何よりも@nakaji_aoiさんが一番大事にしているのは、痛みの悪循環に陥らないことです。
好きなお笑いやアニメを見る、お風呂に入る、マッサージをする、散歩をするなど、自分の好きなことを取り入れることで、自然と痛みを忘れられることが多いのだとか。

@nakaji_aoiさんは、病気になってから自分が元気でいられる方法をたくさん見つけることができました。特に歌っているときはまったく痛みを感じず「不思議な感覚です」と明かしています。
一生活動を続けることが目標
@nakaji_aoiさんは自身の体験をもとに音楽を制作しているほか、エッセイの執筆や講演活動にも取り組んでいます。
こうした活動を通して「線維筋痛症や病気と向き合って生きる人のひとつの体験として、歌も私自身のことも伝わったら…。そのなかで同じような体験をしている誰かに歌や想いが届けば嬉しいです」と話します。

今後の目標は、オリジナル曲やCD、エッセイ集の制作と難病支援や地域活性化にまつわる活動を続けていくこと。
同じような体験をしている誰かに「こんな生き方をした人もいたんだ」と形として届けられるように自分自身で、そして歌や言葉で伝えていきたいといいます。
「一生活動を続けることが目標なため、体調と相談しながら細く長く活動を続けていくことが大切だと思っています」と語ってくれました。

@nakaji_aoiさんは病気を経験したことで、日常のささやかなことに感謝できるようになったといいます。
病と向き合いながら歩んできた経験は、それぞれの暮らしを考えるヒントの一つといえるかもしれません。

