卵巣がんは、自覚症状がないまま進行することをご存じですか?
下腹部痛や下腹部のしこりなどの症状が出たときには、かなり悪化していることが多いといいます。卵巣は2つあるため、片方ががんでも、もう片方が正常なら不正出血や月経異常が見られず、発見が遅れがちです。
転職先が決まっていた矢先に、卵巣がんと診断されたみょぬさん(@myonu.cancer)は、深夜に突然下腹部の痛みに襲われました。入社を延期してもらいましたが、抗がん剤治療のため結局できませんでした。
「仕事の代わりはいくらでもいる。でも、あなたの代わりは世界中どこ探したっていないんだよ!」と、悲しい思いをする人を増やしたくないとSNSで発信しているみょぬさんに、がんになって辛かったことやSNSで発信する理由などを聞いてみました。
「家族を悲しませてしまったことが一番辛かった」
33歳で卵巣がんであることがわかったみょぬさんは、病気が見つかる1ヶ月前には、北海道や沖縄へ一人旅するほど元気で、体調も良かったといいます。
ある日の深夜、急に子宮を突き刺すような今まで感じたことのない痛みに襲われ、みょぬさんは飛び起きました。そのとき痛み自体はすぐ治ったのですが「何かおかしい」と思ったため、すぐ近所の婦人科へ行くことに。
そこで卵巣の腫れがわかり、大学病院を紹介されました。

大学病院で、エコーとMRI検査の結果「悪性腫瘍だろう」とがんを宣告されました。卵巣腫瘍は手術で摘出して病理検査をしてからではないと確定診断はできないのですが、医師から「明らかに良性腫瘍ではない」と言われたのです。
卵巣がんであると知ったとき、みょぬさんは血の気が引いていくのがわかったといいます。また「当時は悪性腫瘍=がんということすら知らなかったので、先生の説明を聞くのが精一杯でした」と。

医師から「何か質問ありますか?」と聞かれたときには、何がわからないのかわからない状態で「私、大丈夫ですか?」としか聞けなかったと語ります。
自覚症状もなかったみょぬさんは、自分のことなのに自分のことだと思えなくて不思議な感情を抱きました。病院からの帰り道、電車の中で「みんな健康なのに、私だけがんなんだ…」と、見慣れた景色が別世界のように感じたといいます。
卵巣がんであることを、最初お母さんに電話で伝えたみょぬさん。そこで話していくうちに「丈夫な体に産んであげられなくてごめん」と泣きながら言われたことが苦しかった…といいます。
「一人で海外旅行に行けるくらい丈夫に産んでくれたよ」と返しましたが「病気になるのは誰も悪くないことなのに、自分のせいでこんなに辛い思いをさせてしまっていると悲しくなりました」と語ります。
また、家族からは「お金や今後のことは心配しなくていい。一緒に病気と闘おう」と言われました。そんな家族に対して「家族との関係が良くなかったり、頼れない方々もいたりする中で、自分は本当に恵まれている」と感じます。
「まだ全然親孝行できてないし、もう孫の顔見せてあげられないかも、ごめんね」と言ったときも「もう十分親孝行してくれたよ。まだ見ぬ孫よりあなたが一番大切だからそんなこと言わないで」と返され、涙が止まらなかったといいます。
みょぬさんは、全摘出ではなく、子宮と卵巣を残す妊孕性温存手術を受けることになりました。
手術も入院も何もかも初めてで不安でしたが、看護師さんが「眠れなかったら一晩中話聞くからね」と声をかけてくれたり、同室の方々と仲良くなって「一緒に頑張ろう!」と円陣組んだりなど、人の優しさに本当に救われたといいます。
無事に手術が終わり、目が覚めて意識がはっきりした後は、開腹手術だったのでとにかく何をするにも痛くて大変でした。シャワーを浴びることすら一苦労で「普段何気なく生活できることは当たり前じゃないんだな」と痛感します。
「身の回りの手助けをしてくださった看護師さんには、本当に感謝していて頭が上がりません」と話してくれました。
「大丈夫探し」をしないでほしい
みょぬさんは、SNSで自身の病気やそのときの経験について発信しています。発信に至ったのは「同じように闘病されている方の力に少しでもなれたらいいな…健康な方にも他人事だと思わず、体の異変を感じたらすぐ病院へ行ってほしいな」という気持ちがあったからでした。
発信していくことについてみょぬさんは、真面目な投稿もしますが、私はもともとふざけた性格をしているので…と笑いも交えながら語ります。
「YouTuberやインフルエンサーのパロディで、闘病の様子を発信してただ普通に発信するのではなくて、自分でしかできないことをしようと思いました。どこまでも愉快にいきたいんですよね」と…。

そうした発信に対して、みょぬさんが本当に嬉しかったのは「見ていて笑って元気をもらえる」と多くの方に言われたこと。
「病気になって良かったとは絶対言えないですし不安になることもありますが、どうせ同じ時間を過ごすなら楽しくいたいので、私の発信で少しでも楽しい気持ちになってくださる方がいるのは本当に嬉しくて、発信をしていて良かった…と思っています」と話していました。

卵巣がんと闘ったみょぬさんは、世の中の女性たちに伝えたいことがあります。
それは、少しでも不調を感じたら、すぐに病院へ行ってほしいということです。
「忙しいからとか、大したことないから大丈夫とか『大丈夫探し』をしないでお医者さんに相談してください。仕事の代わりはいくらでもいますがあなたの代わりはどこにもいません」
また特に不調を感じなくても、健康診断やがん検診を受けることも大切で、早期発見早期治療が何よりも大事だといいます。
「何もなかったらお金がもったいないという方もいますが『何もなかった』で済まなかった人も多く、健康への出費は浪費ではなく投資と考えてほしい」ということが、みょぬさんが経験したからこそ伝えたいことです。
がんで苦しむ人を少しでも減らしたい
手術と抗がん剤を乗り越えたみょぬさんは現在、生理痛や抗がん剤の副作用の痺れも多少ありますが、体調は安定していて今は数ヶ月に1回の定期検査になりました。

罹患した卵巣がんは、サイレントキラーと呼ばれているくらい怖い病気なのに知名度が低く、有効な検診方法もなく初期は自覚症状もないため半数以上がステージ3以上で見つかっているといいます。そのため、みょぬさんは今後「がんで苦しむ人を一人でも減らせるように、自分の経験を生かして今後もがんの啓蒙活動をしていきたいと思います」と話してくれました。
卵巣がんに限らず、大したことなさそうだから、また忙しいから病院には行かないなど「大丈夫探し」をしてしまう人は多いかもしれません。ですが「仕事の代わりはいても、自分の代わりは世界中探してもどこにもいない」というみょぬさんの言葉は、皆さんの心に響いたのではないでしょうか。
健康にお金を使うのは浪費ではなく投資、その通りだと感じさせられた人も多いでしょう。