香川県民からすると、実は北海道や沖縄より遠く感じる東北の地。
空路での直行便がないため、飛行機の乗り継ぎや、一度本州に渡ってからの新幹線での長旅です。

そんな東北・仙台から移住し、香川県での暮らしを4コマで描いた日常マンガがあります。
作者のだてまいさんに、目指す夢とマンガ制作のきっかけについて話を聞きました。

移住して驚いた香川県の文化

だてまいさんは、生まれも育ちも宮城県仙台市。
奥さんは香川県出身ですが、出会う以前から人気テレビ番組の四国八十八ヵ所巡りをきっかけに、香川には興味があったそう。
4年前に移住し、2年程前からnoteやX(@setodiary)で、宮城県民から見た香川の暮らしをマンガにして発信しています。

「引っ越してきて、香川と宮城の文化の違いに直面しました。街の様子や地形、人の感じとかも全然違うから、どこかでそれを残しておきたいという気持ちがあったのと、――仙台と高松って遠いんですよ。飛行機だったらすぐに行けるのに」

だてまいさんは、仙台と高松でもっと交流が盛んになれば、直行便が運航されるかもしれないと考えました。

「東北の人にも香川にいっぱい来てもらいたいなって気持ちもあって、そのきっかけになればと思ってマンガを描いています」

主人公のビジュアルモデルは、だてまいさんの奥さん

コミック『てくてく瀬戸日記』では、宮城から香川に移住した女性を主人公に、暮らしの中で発見したことや人々との交流をエッセイ風にほのぼのと描いています。
ストーリーは実際に、だてまいさんが体験したノンフィクションだそうです。
香川県民が読んでみると「これって当たり前じゃないの?」が数多く登場します。

『てくてく瀬戸日記』より「ハプニング」

だてまいさんが絶対に描こうと思ったのは、香川県民は夜になると必ず反射板をつけているというエピソード。仙台では、ほとんど付けている人はいないといいます。

「仙台でそんなの付けてたら恥ずかしくて歩けないですよ!(笑)あれは結構衝撃でしたね。でも香川県の夜は暗いんですよ。田んぼが多くて、街灯の間隔が広いので。自分ももう今はつけてランニングしてます。これはちょっと好きなエピソードですね」

他にも、釣り人の多さや、意外と自転車王国でもあること、積雪予報に裏切られるなど、旅行で訪れただけではわからないユニークなエピソードが楽しく描かれています。

香川県移住者にとっては「あるある」ネタで、香川県を訪れたことのない人にとっては宮城と香川の両方に発見や驚きがあるかもしれません。

『てくてく瀬戸日記』より「エマージェンC」

もう一つ、だてまいさんがWEBコミックで発信しているのが、プロバスケットボールチーム・香川ファイブアローズの応援日記です。

「ハマったきっかけというのが、当時B2だったファイブアローズがB1に上がれるかという最終的な決戦が仙台のチームとで、どっちかが上がるっていう戦いだったんですよ。その時はホーム戦だったのでファイブアローズを応援していたんですけど、そんな試合を僕が出身の仙台と今住んでいる香川で争うっていうのが運命的だって思って、一生懸命見ていたんです」

残念ながら、ファイブアローズはB1に上がることはできませんでしたが、仙台ともう一度、次はB1で戦えるように応援しようと思ったそう。
現在は、観客動員数3000人を目指しています。

「僕ができることといったら、観戦記を描いて、X(Twitter)にあげることぐらいなんですけど。それをまとめたファンブックを、シーズン開始前に昨年はこうでしたみたいな感じで、無料で配布できたらと思っています」

ファイブアローズの大ファンだという、だてまいさん

移住者からの視点で香川の魅力を伝えたい

コミック『てくてく瀬戸日記』は、現在Vo.2まで発行されていて、取り扱いがあるのは高松市の古本屋『なタ書』と、コワーキングスペース『チョイビズプラザ』、坂出市の『珈琲屋 松尾』の3ヶ所です。

チョイビズプラザでは、『かがわの「あるある」かるたピンバッチ』が入ったカプセルトイも置いています。こちらは主に、香川のうどん店でのくすっと笑えるエピソードなどが描かれています。

「かがわあるあるかるた」ピンバッジ(全10種)

「香川の魅力発信として、『てくてく瀬戸日記』のうどん屋バージョンや四国遍路バージョンも、いつかやりたいなと思っています」

マンガを描いていく中で、他の移住者クリエイターとの交流も生まれています。

「やっぱりそれぞれで、移住してきたってことで伝えたくなるようなことってあるみたいで。僕はマンガで伝えていますけど、写真だったり、文章だったりをまとめて、何か移住者が発信するものを、今後作っていけたらいいなって思っています」

また、海岸で釣りをしている香川県民を見て、趣味を日常の延長ベースで楽しんでいる人が多いことにも気づいたそう。
生活を楽しんでいることが、香川のライフスタイルでとても魅力的だと、だてまいさんは話します。

「基本的に香川の方って元気なんですよ。仙台と比べて、道端でお喋りしている方も多くて賑やかですし、知らない人に対しても懐に入れてくれるような雰囲気があると思って。そこの垣根のないところがいいなって思いますね」

今後も、だてまいさんは仙台と香川を繋ぐため、さまざまな活動に取り組んでいくそうです。

10月22日(日)には、丸亀市のマルタスにて「BOOK WEEKEND」というイベントが開催されます。だてまいさんは似顔絵のブースを出店し、『てくてく瀬戸日記』も販売されるとのことです。

だてまいさんの似顔絵ブース(写真提供:だてまいさん)

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