「歩ける車いすタレント」としてモデルやタレント、講演会や患者会を開くなど、さまざまな活動をしている塚本明里さん。
塚本さんには「筋痛性脳脊髄炎」「線維筋痛症」「脳脊髄液減少症」という3つの病気があります。極度の疲労感と全身に激しい痛みがあり、治療法も原因も見つかっていないというこの病気。全身40ヶ所に麻酔注射を打ち、痛みが和らいでいるわずかな時間を使って、塚本さんはいろいろなことに挑戦してきました。
一度に頭を起こしていられる時間は約20〜30分。立って歩くこともできますが頭を横にしないと体調が悪くなるため、リクライニング式の車いすに乗って活動しています。その車いすを押し、二人三脚で歩んできたお母さんは塚本さんにずっと寄り添ってきました。
そんなお母さんへの思いや、病気のことについて塚本さんに話を聞きました。
原因も治療法もわからない3つの病に…
幼いころは体を動かすのが大好きだったという塚本さん。異変が起こったのは、高校2年生の春のテストの日でした。
その日、塚本さんは風邪を引いたように体調が悪い中、そのまま学校に行ってテストを受けます。しかし、その最中に机に突っ伏して動けなくなり、担架で保健室に運ばれてしまいます。その日からは体調が悪くなる一方で、全身に広がる痛みとだるさに悩まされ「痛みの日記」を書いていました。
目には見えない極度の痛みやだるさ、それによって長時間立っていられず、すぐ横になるため怠けていると思われる症状と闘っていたのです。

いろいろな病院や医師にかかり、1つ目の病気が診断されたのは発症から1年半後のことでした。
病名を医師から告げられたときについて、塚本さんはこう話します。
「自分の痛みが嘘じゃなかったことが証明されて、やっと病名にたどり着けて嬉しかったです。家族でお祝いしたくらいです」
しかし、塚本さんの病気は十分に認知されておらず、医師にも理解されにくいものでした。
塚本さんの「脳脊髄液減少症」という病気は、頭を上げ続けると体調が悪くなり最悪失神してしまいます。失神しなくても、無理に頭を上げていると後で体調が悪化してしまうため、上げすぎないように気を付けて過ごしています。また「筋痛性脳脊髄炎」と「線維筋痛症」という病気の症状として、常に倦怠感と痛みが全身にあります。
「頑張って動くと体調が悪化するので気をつけています」と語りました。

塚本さんが抱えている「筋痛性脳脊髄炎」「線維筋痛症」「脳脊髄液減少症」の3つの病気は、いずれも医師にも十分に認知されておらず、診断までに時間がかかるケースが多いといいます。
そこで、周りに説明することが難しく、理解を得るのも大変でした。また、専門的な知識を持つ医師が少なく、何度も精神科に回されたことがつらかったといいます。しかし、そんな中で心の支えとなったのは、信じて諦めなかった一番身近にいる両親でした。
当時の高校の担任の先生と保健室の先生も支えてくださり、塚本さんを卒業させるために尽力してくださったのです。
「みんなとは違うけれど、おかげで良い高校生活になりました。皆さんに支えられて今があります」と話してくれました。
家族の支えがなければ今の私はない
「歩ける車いすタレント」として活動している塚本さん。
幼いころから「やりたい!」と思ったら、何事も挑戦してきました。病気になってもその性格は変わりません。あるとき、車いすを手に入れ「これなら何かできる!」と思い、岐阜美少女図鑑という一般の女の子をモデルにして写真を撮るフリーペーパーに応募したのです。
そこで合格をつかみ、いろいろなことに挑戦していくようになりました。そうした挑戦について発信しているSNSでは、同じ病気の人から「励まされています!」という声をいただくことがあるといいます。それに対して「私が励まされています」と語る塚本さん。

また、発信をきっかけに病気が判明し、診断を受けることができたという声も定期的に届くといいます。それには「これが何よりも嬉しく、頑張ってきて良かったと思う瞬間です」と。
塚本さんを支えてきたのは、お母さん、そして旦那さんでした。そんなご家族に対しても「なくてはならない存在です。家族の支えがなければ今の私はないですし、今の暮らしもありません。本当に感謝しています」と話していました。

そして、先日出産された塚本さん。
「今は、この子を幸せに育てることだけを考えています」と語ります。もちろん家族のサポートは欠かせませんが、できる限りのことは自分でも頑張りたいと塚本さん。
SNSで妊娠を公表したときには、同病患者さんの中にも、出産・子育てをしている方が多くいらっしゃることを知ったといいます。そこで「病気や障がいがあっても、サポートを得ながら子育てできることをお伝えしていければ嬉しいです」と話していました。

塚本さんは、医師にも理解されない病気と闘ってきました。そして今も闘い続けています。ですが、支えてくれた周りの人たちへの感謝も忘れません。病気と闘いながらも挑戦を続ける塚本さんに、心を打たれた方も多いのではないでしょうか。
また、極度の痛みやだるさは目に見えないため、周囲の理解を得るのが難しいものです。しかし、こうした病気の存在を知り、理解を深めることが大切ではないでしょうか。