水・米・気候に恵まれた酒どころ、岡山県で新しい日本酒が誕生しました。メイクアップアーティスト・源奈央さんがプロデュースし、創業1806年の倉敷市児島の酒蔵・三冠酒造とのコラボレーションで実現したのは「澡浴の酒 『禊』」です。

源さんは「この日本酒は、飲用にはおすすめしません」と話します。なぜなら、「澡浴の酒 『禊』」は身と心を清めるための入浴用の日本酒だからです。

飲むだけでない、日本酒の楽しみ方

「澡浴(そうよく)」とは、からだを洗い清めること。食材を洗ったり、下処理したりすることを岡山弁で「しょうやくする」といいますが、その語源という説もある言葉です。

三冠酒造が独自に作った、岡山県産米を使用した日本酒と、天日干しの天然塩が原料となっています。なめるとしょっぱいので、飲用には適しません。

入浴では、湯船にたっぷりと湯を張り、一升瓶(1,800ml)から付属のオリジナル枡(約100ml)で200ml分を目安に湯船に入れます。肌が弱い人、アルコールに弱い人は少なめの量から試すのがおすすめとのこと。全身を洗って自分の身体に意識と思考を集中させたら、いよいよ入湯。日本酒の香りを感じながら、15分から20分かけてゆっくりと入浴を楽しみましょう。

社の建築などでも用いられる檜を使ったオリジナルの枡

入浴のほか、スプレーボトルに入れて空間のお清め、口をゆすぐ、料理酒など、さまざまな使われ方がされているそう。酒を飲めない・控えているという人でも、飲んで楽しむ以外の方法で日本の文化「日本酒」に触れることができます。

酒蔵とのコラボで実現

澡浴の酒 「禊」 1800ml 9800円(税込)

源さんは開発の経緯について次のように話します。

「入浴剤といえばバスソルトがメジャーですが、日本酒のお清めの力にこだわるものがあったらいいな、という思いがありました。酒蔵さんに協力をお願いすることにハードルを感じていたのですが、友人から『三冠酒造さんだったら話を聞いてくれるかも』とアドバイスをもらい、さっそくお話をしに行くとすぐにOKと言っていただけて、今では奇跡だと思っています。その後、候補となる天然塩を全国から取り寄せたり、話し合いを進めるなど、約3年かけて完成しました」

源奈央さん

開発の相談に乗ったのは、三冠酒造の営業を担当する自称「そのうち7代目」の前畠眞澄さん。10年前に蔵を閉める話が出たことをきっかけに、家業を継ごうと当時の勤め先を辞めて酒蔵に入りました。

三冠酒造 前畠眞澄さん

蔵内の稼働していなかった倉庫を角打ちができるギャラリーに改装したり、地元企業とコラボレーションした商品を開発したりするなど、日ごろから柔軟な発想で新たなことに挑戦しています。

飲まずに浸かる日本酒を作りたいという話を聞いたとき、さぞかし驚いたのではと思いきや、「私もよく日本酒風呂はやっていたんです。いただきものなども含め日本酒がたくさんある家で育ちましたから。日本の『もったいない文化』のひとつかもしれませんね。ぽかぽかとして気持ちいいんですよ」とのことでした。

入浴をより豊かな時間に

源さんの本業はメイクアップアーティストです。メイク指導に関わる中で、外見の変化が心の在り方にまでいい影響を与える例を多く見てきました。

「20代・30代までは若さで見た目の美しさがカバーできるかもしれないけれど、長い人生で自分への肯定感を広げていくには、自分の内面を知り、磨いていくことが大切だと感じています。私もそうでしたが、自分の個性や強みを知ることが、夢への新たな一歩を踏み出すきっかけになるんじゃないでしょうか」

「澡浴の酒 『禊』」には、リラックスした状態で自分を受け入れ、新たな日々を迎えるための準備として、入浴をより豊かな時間にしてもらいたいという思いが込められています。

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