2020年12月、日本の木造建造物を受け継いでいくための伝統技術「伝統建築工匠の技」の、ユネスコ(国連教育科学文化機関)無形文化遺産への登録が決まりました。
構成する17の技術の中にあるのが、かつては日本の家々に多くみられたかやぶき屋根を作るための、「かや採取」と「かやぶき」です。

今では一般家庭であまり見かけなくなったかやぶき屋根の家に今も住んでいる夫婦が、岡山県奈義町にいました。
なんでも、町内で現存するのはこの家だけなのだそう。なぜ今もかやぶき屋根の家に住み続けているのか、そして無形文化遺産登録のニュースを聞いてどう感じたのか、住人の永幡さん夫婦に話を聞きました。

祖父と両親の思いを受け継ぐ

永幡修さん(右)と優子さん(左) 新しくなったかやぶき屋根と

明治30年代に建てられたという永幡さんの家。夫・修さんの祖父は、生まれてからずっと日々を過ごしてきた我が家に対する思い入れが強く、1965年頃から近所の家が瓦屋根に変わっていく中でも、かやぶき屋根を守り続けていました。

「あの時代に瓦に変えておけば、今の時代に変えるよりは少しは安かったんですが…」と妻の優子さん。物価の上昇を嘆いていました。

修さんに3代にわたってかやぶき屋根を守り続けている理由を聞くと、「すきまだらけで寒いし、こだわりがあってかやぶき屋根にしているわけではない」と予想外の返答。しかし、さらに話を聞いていくと、そこにはある思いが。

祖父が亡くなった後も、修さんの両親がその意志を引き継ぎ、補修や修繕を繰り返し続けてきました。修さんの母は2020年に亡くなるまで毎年欠かさず、かや刈りの作業をしていたそうです。

「かやぶき屋根を守るのは、両親の思いを受け継いだ結果だと思う。」
口数が少なくシャイな修さんが、つむぎだした言葉でした。

かやぶき屋根は手間暇かかる!

長いかやと短いかやを分ける

永幡家のかやは、自宅近くに自生しているすすきです。毎年穂が枯れてから刈り取り、乾燥させ保存しておきます。そして長さをそろえて一束一束重ねていき、屋根に使います。

屋根裏にいる永幡さん。次回のふき替えに使うかやが大量に保存してある

屋根は20年ほどの周期で一面ずつふき替えます。次のふき替えに使う予定のかやを、稲刈りが終わった秋から冬の時期に準備しておくという、なんとも手間暇かかる方法でかやぶき屋根は作られています。

自動運搬機でかやを屋根の上にあげる永幡さん

ふき替えの作業は、職人さんたちと一緒に行います。24年ほど前から永幡さん宅を担当している職人の山本さんによると、「永幡さんの家のかやぶき屋根には囲炉裏の煙を出すための空気穴が残っており、今では大変珍しい。個人宅にもかかわらず、かやぶきを続けているのはすごい。」とのことでした。

かやぶき屋根の上にある小さな屋根のような部分が空気穴

無形文化遺産登録のニュースが励みに

12月下旬、修さんから「かやぶき屋根が無形文化遺産になった」と、とても嬉しそうな様子で連絡がありました。特に、毎年行っている「かや採取」も登録されたことに驚いたようです。

「私たちの生活の一部になっているかや刈りが世界的に認められたことについて嬉しく思います。また、ニュースを聞いてから、かや刈りの作業も少しは楽しく思えるようになりました。」

ユネスコ無形文化遺産に登録されたことが永幡さんの励みになったようで、こちらまで嬉しくなりました。古き良き建物を、いつまでも守ってほしいものです。