持続可能な里海を目指す「香川方式」は、1人の漁師の情熱から生まれた

地域の「里海」づくりに取り組む、かがわの里海コンシェルジュが今回お伝えするのは、「香川県方式」の海底堆積ごみ回収・処理システムに協力を惜しまない、前向きな漁師さんのお話です。

香川県方式の海底堆積ごみ回収・処理システムは、「漁業者×行政」というコラボレーションが最大の特徴。漁業者がボランティアで海底堆積ごみを持ち帰り、行政が運搬・処理の役割を担うという、全国初の取組みで、平成25年5月から始まりました。

いわゆる香川県方式が出来上がるきっかけには、「100年先の漁師も安全でおいしい魚を獲り、みんなに食べてほしい」と願うとともに「漁師が天職や!」と言い切る、海を愛する漁師の気付きと行動がありました。

その人、西谷明さん(68)は、高松市瀬戸内漁業協同組合に所属する底びき網漁師。私たちはこれまでにも「かがわ里海の幸」の取材などを通し、西谷さんから、海の環境や底びき網漁のこと、海底にあるごみについてなどたくさんのお話をお聞きしてきました。西谷さんの話題はとても豊富で、何より面白い。この面白さをぜひみなさんにも知ってほしいと思います。

かがわ里海の幸リーフレット(西谷さんに取材した「シタビラメ編」は、かがわの里海づくりHPからも閲覧可能)

2020年10月下旬、私たちは改めて西谷さんに取材を敢行。まずは海底堆積ごみ問題の解決に関わり始めた動機をうかがいました。

「20年くらい前かな。網を上げたときに、ナイロンの袋の中に入った鯛やヒラメがバタバタと苦しんでいるのを見て、海底も同じような状況ではと思ったんよね。ナイロンや空き缶などのごみも潮の流れで移動するでしょう? ごみが魚を傷つけているんじゃないかと思ったのが、最初のきっかけ」

船上からは見えない海底の様子に思いを馳せた西谷さん。海を愛する男らしく「これではいかん」と、自ら網にひっかかったごみを分別・処理するようになりました。しかし、テレビなど大きなごみの扱いは困難でした。

そこで、市や県にごみ収集場所の設置を依頼。当初は「逆に不法投棄が増えてしまう」と反対されたものの、粘り腰の交渉が実を結び、ごみ収集用のコンテナの設置と、漁業者への回収袋の配布が決定しました。自分だけでは限界のあった海底堆積ごみ問題を動かし、香川県方式が完成した背景には、1人の漁師の情熱があったのです。

西谷さんが集めた海底堆積ごみ。ペットボトルなど、身近な生活ごみが多い

漁から戻り、ごみの仕分けで1日を終える

「でも、不法投棄の問題も出てきて。コンテナに監視カメラを取り付けたりしてね。やっぱり『これで終わり、万々歳』とはいかない。今はコンテナを置かずに、船や漁協の前に集めたごみを直接収集してもらってる。その時その時に、工夫しながら進める。諦めない。だから前向きなのが香川県方式ってこと」