夕日の絶景スポットとして人気の父母ヶ浜(ちちぶがはま、香川県三豊市)。「日本のウユニ塩湖」とも呼ばれるこの地で、1031118日、「父母ヶ浜芸術祭Vol.0」が開催中だ。

父母ヶ浜芸術祭Vol.0“日本のウユニ塩湖”で音楽、アート、食のイベントが満載!

 父母ヶ浜の景観を生かしたアートをはじめ、音楽ライブ、食イベント、マルシェ、地域の農家や若者によるトークセッションなど、8日間のプログラムは盛りだくさん。31日に行われたミュージシャン・小室哲哉さんのライブには、多くの人が詰めかけた。

オープニングセレモニーの様子。芸術祭では、地元の有志「ちちぶの会」のトークセッションも行われる

 父母ヶ浜には、かつて埋め立て計画もあった。それを、地元有志が25年以上にわたり毎月清掃をして、美しい景観を守ってきた。

 その後、SNSに投稿された絶景写真で人気に火が付き、2019年の来訪者数は46万人に上った。

 しかし、多くの観光客は夕日の写真を撮って帰るだけ。地域の人口も減り続ける中、どうやって父母ヶ浜の美しい景観を残していけばいいのか。

今川宗一郎さん(左から2番目)と実行委員会のメンバー

 「地域内外の人々の出会いを作っていくことが、父母ヶ浜の未来につながるのではないか」。芸術祭の実行委員、今川宗一郎さん(34)はそう語る。

 今川さんは、地元・仁尾町の地場スーパーの後継者。これまで、多くの地域活性化の活動に関わってきた。

 2019年には、ほか2社とともに父母ヶ浜の指定管理事業を受託。観光客と地域の関わりを生み出す仕掛けを施したコーヒースタンド「宗一郎珈琲」を出店するなど、地域の内外を結び付ける努力をしてきた。

 もっとも、一緒に父母ヶ浜の指定管理に携わる東邦レオ(株)の吉川稔社長から「父母ヶ浜で芸術祭をやらないか」と打診された時には、正直、戸惑ったという。それまで、アートに携わるなど、思ってみたこともなかったからだ。

 だが、「地域のためになるなら」と、実行委員を引き受けることを決意。その後、考えを深める中で、「アートとは、11人の生き方そのものではないか」「アートを通して、今までになかったコミュニケーションを生み出せるのではないか」と思うようになったという。

地元の人気店が出展するフードマルシェ

 芸術祭の開催が決まったのは、8月半ば。新型コロナウイルスによる閉塞感が漂う今だからこそ、アートを通じて地域の関係を紡ぎ直したい。そんな思いも背景にあった。

 だが、約80日間の準備期間では、できなかったことも多い。直前までプログラムが決まらず、思うように宣伝ができなかった。地元関係者との調整にも、多くの課題が残った。

現代アーティスト・脇田玲さんによるビデオアート

 それでも、今川さんを含む関係者たちは、最終日の118日まで全力疾走の構えだ。8日まで、砂浜に設けられた茶室での野点や、地元料理人の食アート、地元中学生たちによる演奏会や映画上映など、ユニークなイベントが続く。

 香川県は「瀬戸内国際芸術祭」の開催地として有名だ。瀬戸内海12の島と2つの港を舞台に行われるこの現代アート最大級の祭典に比べ、父母ヶ浜芸術祭の規模は小さい。

 しかし、参加アーティストからは、「その分、自由にやりやすい」との声も聴かれる。今後、新たな芸術祭の可能性を切り開いていくことが期待される。

詳細は父母ヶ浜芸術祭Vol.0のホームページ(https://chichibu-artfest.org/)まで。

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