早稲田大学社会科学部4年生の今村奎太さんはNPO法人JYMA日本遺骨収集青年団に所属し、世界各地の旧日本軍の戦地を訪ね、遺骨収集活動に取り組んでいる。2026年3月までは約2年間、学生代表を務め、現在も副代表を務めている。福岡県出身。曾祖父の弟がインド・インパール作戦に参加し、21歳で亡くなった話を祖父から何度も聞いていた。
遺骨収集活動との出会い
「上京したばかりのころ、国際協力や国際ボランティアに関心があったのですが、ちょうど他大学の先輩と食事に行く機会がありました。その方がJYMAに所属していて、パラオで遺骨収集ボランティアに参加したという話を聞き、自分の関心とルーツが重なり、すぐに参加を決めました」
初参加は沖縄県豊見城市での遺骨収集だった。湿度の高いガマの中で汗を流して活動に取り組み、実際にご遺骨と対面した時は「本当にまだ残されているんだな」と驚いたという。その後、インドやキリバス、パプアなど世界各地で活動を行った。現地の方々と一緒に活動できることも貴重な機会であり魅力だと感じているという。
「厚生労働省の政府派遣事業として、戦没者遺骨収集推進法に基づき、日本遺族会や考古学者等とも協力して、各国や硫黄島などで活動しています。一方で、沖縄県については民間の遺骨収集団体による活動が盛んで、私たちも自主事業として行っています。沖縄については、1回の派遣で20〜30名ほどの学生を派遣し、経費が300万円以上かかるので、助成金やクラウドファンディングなどの個人寄附を募って活動しています」

過酷な現場、低い帰還率
遺骨収集の現場は非常に過酷な環境である。南方方面では厳しい直射日光の中、気温が40度を超える場所で1日活動する。休憩や水分補給をこまめにとり、体調に気をつけながら取り組んでいる。
「過酷な現場だが、女子学生も多く活動しています。いまは学生60名程度で、男女比は同程度です。私のようにルーツを意識していたケースはむしろ珍しく、多くは国際ボランティアを探していて出会った方や、歴史や考古学に興味があった方が多いです」
戦後80年が経過したが、各地に残された旧日本軍兵士のご遺骨の帰還率はいまだ50%程度。多くの戦没者が、故郷から遠く離れた地で眠っている。
「資金面の課題もあるが、私は広報面の課題を特に感じています。SNSなどによる発信活動は十分に行えていません。ボランティア活動で遺骨収集が行われていることがあまり知られておらず、遺族ですら知らない方もいます。対照的なのはアメリカ政府で、DPAA(米国国防省捕虜・行方不明者調査局)が中心となって積極的に広報しています」

世界各地の現場に赴いた今村さんに、特に印象的だった活動場所について伺ったところ、パラオのアンガウル島が挙げられた。現地の方が非常に協力的だったことと、あまりにも美しい海で、かつてここが戦場だったとは信じられなかったという。集団埋葬地があり、毎日のようにご遺骨が出て、中には頭から足まで完全な状態のものも少なくなかった。骨にレインコートのようなものが巻き付いているなど、当時の状況が想像された。
「もう一つはインドのインパールで、ご遺骨が中々お迎えできない地域です。そこで出会った99歳の村人から、昔亡くなった日本兵を埋葬したとの話があり、現地当局への確認や専門家による慎重な調査を経てそのエリアの特定に至り、無事にご遺骨をお迎えすることができました。現地の心ある方が80年を経て思いを寄せてくださっていたことに胸が熱くなりました」
学生代表として精力的に活動
学生代表となった今村さん。より多くの学生を派遣できるように、資金集めに取り組んだり、SNSを活用した広報活動などに取り組んだりした。また、学校や地域団体など各地で講演活動を行い、現場の声を政策に繋げるために行政への報告・説明や沖縄県議会議員の遺骨収集現場への案内など、現状を伝えるための政策提言活動も精力的に行った。
「ご遺族との交流も大切にしてきました。80代の方が中心ですが、現場で私たちと同じように活動しています。孫世代、曾孫世代の私たちに対しても、とても温かく迎え入れてくれます。また、活動中に時々涙を見せる場面もあり、身近な大切な人を亡くした思いや、ご遺骨に向き合う姿勢に大変感銘を受けます」

2025年10月からは、大学を休学している今村さん。まだまだ現場に行きたいということで、今後もソロモン、ミクロネシア、ミャンマーなどで活動予定だ。
「まずは広報活動の拡充を実現させたいと思います。現場の声をしっかり行政に届けたいと思います。あとは、4年間の活動で学んだことや遺族とのつながりをしっかり後輩たちに継承していきたいです」
6月からは、ガダルカナル島の慰霊巡拝や慰霊碑保全のためのクラウドファンディングも予定している今村さん。記憶の風化が懸念される中、慰霊と平和への願いを継承する若者世代の存在は大きな希望だと感じた。

