「今日もありがとう」「今日も会えて嬉しい」

生後8ヶ月で亡くなってしまった息子へ、当時母親が日記につづっていた感謝の言葉。

現在、小学1年生の長男と4歳の三男の父親である秦野さん(@tomo.mental_)は、生後8ヶ月の次男を亡くすというつらい経験と、それを受け入れ前を向いて歩み始めた今の思いをSNSで発信し、多くの方の共感を得ています。

亡くなった次男の蒼くんは三男と一緒に双子として生まれてきました。生まれてから8ヶ月間の人生を精一杯生きぬいた蒼くんへの思いと、これからSNS発信を通して伝えていきたいことについて聞きました。

母親の想い(@tomo.mental_さんより提供)

息子を亡くし、どん底にいた父を救ったのは…

約3年半前、秦野家の次男として生まれた蒼くん。産声をあげず、生まれてすぐの緊急処置により一命はとりとめましたが、自力で呼吸をすることができないため寝たきりの状態でした。"重症新生児仮死状態"と診断され容態は非常に悪く、生きて生まれることができたのはいくつもの偶然と奇跡が重なったからだったのです。

産まれて間もない蒼くん(@tomo.mental_さんより提供)

蒼くんは生まれて8ヶ月間を懸命に生き、そして生涯を終えました。
蒼くんが亡くなったことで、父親である秦野さんの心はどん底に落ち、自分の無力さに生きる希望を感じられなくなったといいます。

暗い世界をさまよっていた秦野さんの心を引き上げてくれたのは、当時3歳だった長男の存在でした。毎日そばにきて話しかけ「あそぼう」と言って外に連れ出してくれたことで、秦野さんは少しずつ感情を取り戻し、笑うことができるようになり、今ある幸せに気づくことができたとふり返ります。

秦野さんの心を救った子どもたちの笑顔(@tomo.mental_さんより提供)

「天国にいる息子に自慢できるパパになろう」

そう決意した秦野さん。いつか天国で蒼くんに会ったときに「パパの人生、最高だったよ」と伝えられるよう、自分の人生を楽しく好きな自分で生きることを決めました。

蒼くんと共に生きる SNS発信を始めたきっかけ

蒼くんの死から少しずつ前に進みはじめた秦野さん。そんなとき、蒼くんの症例が世界の医学会で発表されました。蒼くんが歩んだ人生が、たくさんの人の勇気と支えになると知ったのです。

秦野さんはそんな蒼くんの凄さとエネルギーを感じました。
「自分と同じように大切な人を亡くし生きることに前を向けなくなっている人が笑顔を取り戻すきっかけを届けたい」と、SNSで自身の体験を発信することを決めます。

「蒼に出会うまでは手足が動くこと、話せること、目が見えること、耳が聞こえること、自分の気持ちを伝えられること、すべて当たり前だと思っていました。蒼が懸命に生きる姿に、今の自分が生きていること自体が奇跡で恵まれている、生きているだけで充分だと知ったんです」と話す秦野さん。

自分の発信をきっかけに「楽しく、大切に、後悔ない人生」を送れる人を増やしたい。そう願っているといいます。

家族の愛をうけ懸命に生きた蒼くん(@tomo.mental_さんより提供)

「生きる」「命」「死」について発信する秦野さん

秦野さんは自身のアカウントで「生きる」「命」「死」について、経験したことをもとに発信しています。

こうしてSNS発信することで、奥さんと一緒に蒼くんの話をすることも増え、自身のグリーフケアにもなっているといいます。そしてなにより蒼くんがより身近に、一緒にいるように感じられると話します。

秦野さんは、投稿を見た人からの共感の声を聞き、同じ志の元「生きること」について一緒に話をする仲間と出会い、より自分の価値観が明確になったといいます。大切な人やお子さんを亡くし、悲しみに打ちひしがれている多くの方の存在を知ることができたのも、このSNSを通してでした。

蒼くんとの出来事を発信することで「苦しみを抱えている多くの方の支えとなり力になれたら」というのが秦野さんの思いです。

今後について

家族で一緒に過ごした時間(@tomo.mental_さんより提供)

秦野さんが蒼くんについての出来事や思いをSNSで発信することを、秦野さんの奥さんも応援しています。秦野さんの投稿により、蒼くんの存在や生きた証が広く知られていき「誰かの役にたっている」「蒼くんの人生がまだ続いている」そう感じるそうです。

我が子が小さな身体で病と戦う姿を間近で見守り、そして見送らなければならなかったという壮絶な悲しみを乗り越え、家族と共に未来を見る秦野さん。自身が経験したからこその視点で、悲しみから立ち直るきっかけや、前を向いて生きていくコツについて、日々発信しています。

「悲しみは『愛の証』大切な人を亡くして人生で最もつらい経験をしたけど、あなたは『今』生きている。それだけですばらしい。よく頑張ってるよ」

秦野さんの思いを必要とするたくさんの方の心に届き、明日への勇気となりますように。

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