お盆飾りは地域ごとにさまざまな特色がありますが、そうめんの産地である香川県の小豆島には「おいなわそうめん」という風習があります。乾燥させる前の生のそうめんを編んで、のれんのように仏壇の前にかけ、ご先祖様を迎えるというものです。小豆島の安田地区でただ1軒、この風習を続けている川崎さん宅を訪ねました。

長いそうめんをのれんのように編んだものを、仏壇の前にかけます

戦前には小豆島の多くの家庭で行われていたこの風習。しばらく途絶えていたのを、1998年、今年92歳になる川崎綾子さんが夫とともに知人から習って川崎家で復活させました。それ以来途切れることなく、川崎家のお盆前の風習として続いてきた習わしです。

娘と孫がそうめんを編んでいる姿を見守る川崎綾子さん(92)

例年は埼玉に住む長女がこの日に合わせて帰省し、作業を手伝っているそうですが、ここ3年はコロナ禍の影響で帰省できていません。今年主力となって作業したのは、大阪に住む孫の愛見さん。愛見さんも3年振りの帰省、3年振りのおいなわそうめんということでしたが、すぐに勘を取り戻して次々と編んでいました。愛見さんの母で、綾子さんの次女の香澄さんも加わり、2人で編んでいきます。

「久しぶりだけど手が覚えているんですね。前日にちょっと練習したらすぐ思い出しました」と愛見さん

ふたりの作業を横で見守りながら、ときどきアドバイスをしていた綾子さん。無事完成してホッとした様子です。

「今ではうち以外でおいなわそうめんをしている家は聞きませんね。これをすると、ああ、これでお盆の準備ができた、ご先祖様が迎えられるとホッとします。今は娘や孫、ひ孫も覚えてやってくれる。これからもずっと続けていきたいです」

仏壇にかけて、香川県の伝統的な米菓子を飾って完成です

おいなわそうめんは単なる飾りではなく、ご先祖様がこれを風呂敷にしてお盆のお供え物を包んで持って帰る、という意味があります。網に包んで背負っていくから、漢字では「負い縄そうめん」と書き、別名「背負いそうめん」とも言うそう。お盆の間じゅう飾っておくのですが、お盆を過ぎたら茹でて食べています。

「雨が続くとか、ものすごく湿気の多い日が続いたりするとカビが生えて食べられなくなりますが、それ以外は家族みんなで食べていますよ」

最後にみんなで仏壇に手を合わせます

そうめん作りの盛んな島だからこそ受け継がれている独特の風習。これからも続けていってほしいものです。

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