手放された飼い鳥を保護し、里親を探す活動などを行っている、埼玉県のNPO法人TSUBASA。2000年に設立され、2014年には認定NPO法人に。2022年で活動歴22年になります。
長く飼い鳥のレスキューに関わってきた理事の望月健人さんとスタッフの城ヶ﨑裕海さんに、具体的な活動内容、そしてペットとして飼われる鳥たちが直面している現実について話を聞きました。

「犬や猫は高価です。それに比べて、セキセイインコや文鳥などの鳥は安価で買えます。ペットとして、鳥は敷居が低いと思われ、負の部分も生まれているのが現状です」

第二の暮らしへのサポート

セキセイインコの「あめ」 ガンを患い、足が不自由になりましたが毎日一生懸命に生きてくれています(TSUBASA提供)

手放された飼い鳥たちのレスキュー、看護、里親探しなど、TSUBASAの活動は多岐にわたります。

保護した鳥たちの飼育には、スタッフ以外の人たちにも協力してもらっています。清潔で暮らしやすい環境を維持するために、有志の人たちに「ケージや周辺用品の水作業を手伝っていただいています」という望月さん。これからもボランティアの協力は積極的に求めているとのことです。

手放された鳥たちを飼育する大部屋(TSUBASA提供)

保護された鳥は、第二の飼い主を待ちます。里親志願者には「数回の里親面談を設けています」という城ヶ﨑さん。

「保護鳥のなかでも、特に大型の鳥はとても高価なのです。そのため、転売目的で里親に立候補する方がいらっしゃるのも現状です。ほかにも、爬虫類のエサとして、鳥を引き受けたいという本意を隠して里親志願される方も。そういう部分をチェックしています」

かつての飼い主との別れを経験し、寂しい思いをした鳥は心に傷を負っています。鳥たちに二度と同じ思いをしてほしくないから、そして安心して新しい家庭に迎え入れてほしいからこそ、里親希望者には、さまざまなお願いをしているといいます。

(TSUBASA提供)

「里親希望者には、まず、環境のチェックをお願いします。マンション住まいの場合、『ペットOK』であっても念のため大家さんへの確認が必要です。大きな声で鳴く、声が響きやすい鳥はNGということがあってはいけないので」

また、面談後は、鳥の緊張を解きほぐし、安心させるために、1~2週間のホームステイもお願いしているとのこと。

第二の暮らしに溶け込めたとき、鳥たちは“保護鳥”から飼い主にとっての“パートナー”に変わります。

時代と人の影響を受けやすい

望月さんと、キバタンという種類の「ピーニャ」(TSUBASA提供)

望月さんによると、鳥は、時代と人の影響を受けやすいといいます。

「失業、貧困、高齢化など、金銭的な問題で飼育が難しい、自身の病の影響で同居が難しいなど、そのような事情の手放しが増えてくるのではないかという懸念があります」

精神疾患、持病の悪化など、飼い主にも変調が起こり、その影響が鳥にも及ぼされるとのこと。また、飼い主の高齢化、鳥の長寿などで経済的困窮の末の手放しなども。

103羽もの鳥を一斉にレスキューした年もあるそうです。

SNSに投稿される鳥の愛くるしさは「ほんの一部」

(TSUBASA提供)

ひょうきんな表情、愛らしいしぐさを見せてくれることがある鳥ですが、繊細で意志がある生身の鳥は、かわいいだけではありません。

「鳥はとても賢い生き物です」という望月さん。TSUBASAでは鳥を飼っている人の電話相談窓口を開設していますが、飼い始めて間もない(一週間以内)の人からの相談がとても増えているということです。

「SNSには鳥たちのかわいい、面白い姿がたくさん投稿されています。生活のなかのほんの一部を切り取ったかわいさに惹かれて鳥を購入したものの、本来持っている性質や特徴に驚いてしまったという人が多いようです。想像以上に鳴き声が大きい、よく噛むという攻撃性の強い種類や個体もいます。そのことで『飼いづらい』という相談が増えています」

一瞬のベストショットに注目し、「自分も飼ってみたい」と思い、買ったものの、その後飼い続けられないという人もいるといいます。

鳥と人の幸せのための活動

TSUBASAスタッフの城ヶ﨑さんとオカメインコのランラン&テンテン(TSUBASA提供)

「鳥と人が幸せに暮らすコツは、お互いに無理しないこと、余裕をもつこと」という城ヶ﨑さん。意外なほど長寿だという鳥との長い旅、頑張りすぎないことも大事だと教えてくれました。

鳥がかわいい、かわいそうという思いだけでは務まらないTSUBASAの活動。スタッフとして働くために必要な条件は、「人との関わり合いや協調性を大事にできるということです」と城ヶ﨑さんは話します。

その理由を、「鳥が好きという条件はもちろん大切な要素なのですが、同時に私たちは“人”と接する機会が多いのです。鳥を救うのはもちろんのこと、その周辺の“人々も救う、変えていく”ことが重要なのです」と望月さんが教えてくれました。

引き締まった表情のなか、鳥について語るときに、一瞬ふわっとほどける表情を見せる2人と、その背後から、聞こえてくる鳥たちの多様な歌い声、おしゃべり、さえずりが印象に残りました。

オカメインコの「ZAPP」 少し足が不自由な25歳以上のおじいちゃん。生活しやすいよう、床に柔らかいタオルを敷いています。(TSUBASA提供)

この記事の写真一覧はこちら