じめじめした梅雨の季節は、身体がずしりと重く感じ、気持ちもどこか鬱蒼としがち。そんな時、“香り・アロマの力”を借りてみるのもいいかもしれません。

今回紹介するのは、スポーツアロマトレーナー・鍼灸師として活動する柏木里美さん。香りを使って、アスリートを始めさまざまな人の「心と体」をサポートし、心身のコンディションを整える仕事をしています。

スポーツの場でも活用している「アロマの力」

柏木さんは、シドニーオリンピックでアロマセラピストが活動したという話を聞き、当時勤めていた職場を辞め、2004年にスポーツアロマトレーナーとして活動を開始しました。国家資格である鍼灸師を取得したり、スポーツトレーニング法の一種・イメージトレーニングを取り入れたりと、積極的に活動範囲を広げ、現在は香川県と沖縄県を拠点に活動しています。

香川県高松市で活動した後、沖縄へ移住

柏木さんは、プロからアマチュアまで、たくさんのスポーツ選手に関わる中、「気持ちを切り替えるためのセルフコントロール力」が求められる場面に、数多く遭遇してきました。そのたびに施術に使ったのが香り・アロマです。植物由来のエッセンシャルオイル(精油)を用いて、心身の調子を良い方へと導いてきました。

「嗅覚は、生きていくための本能に、直接働きかけます。例えば良い香りだと『良い香りだな』と判断する前に、ほっとするでしょう? 逆に食べ物から悪臭がすると、人は身の危険を感じます。嗅覚は生存本能に関わっていて、思考より先に反応します。香りは、ダイレクトに感情に働きかけるものなんです」

柏木さんは社会人ホッケーチームに関わった頃「アイスホッケーのチームの香り」を作りました。氷、格闘、北海道、スピードといったイメージを香りに注ぎ、チームメイトで香りを共有。チームとしての一体感を高めるためにも、アロマの香りを活用したのです。

香川県の社会人アイスホッケーチームの香りを作った際の名前は「Trust」。自分の力を、チームの力を信じて、の思いがこもっています

気持ちを切り替える、スイッチ役としてのアロマ

そんな柏木さんは、スポーツの場面だけでなく、日常生活にもアロマを取り入れ、梅雨の季節を乗り切ってほしいと話します。

「梅雨の時期から夏に向けて暑さと湿気が厳しくなり、今の生活に欠かせないマスクが蒸れがちになります。そうなると呼吸がしづらくなり、息が浅くなる傾向にあります。浅い呼吸を繰り返すと気持ちが荒れたり不安になったり、精神的にもあまりよくありません。でも自分の気持ちが穏やかであれば、日々の行動も心も前向きになります。例えばお風呂場にできたカビを見つけたとしても、前向きにお掃除に取り組めますよ」

柏木さんが使う、エッセンシャルオイル(精油)は、植物が持つ自分を守ったり子孫を残したりするための成分を抽出したもので、植物のホルモンとも言われています。

エッセンシャルオイルは、植物から抽出された有機化合物。合成化合物とは全くの別物です

「日本の法律では、アロマオイルは雑貨として分類されるため、規制がなく、合成香料のフレグランスオイルがアロマオイルとして表記されてしまっていることもあります。植物から抽出された有機化合物としてのエッセンシャルオイルには、何らかの体に働きかける作用が含まれています。ラベルに記載されている成分表や抽出方法を見て、判断してください」

さまざまな種類のアロマがありますが、自分のお気に入りを見つけることから始めてみては?

梅雨の時期におすすめの香りは、ペパーミント。すっきりした爽やかな香りは、リフレッシュや集中力を高めるのにぴったりです。またメントール成分による冷却効果が期待できます。マスクにスプレーしたり、手首に1滴つけたりして、気分転換を図ることが可能です。また、アロマスプレーを作って、においの気になるところへしゅっと一吹きして、消臭・抗菌対策として活用するのもおすすめとか。

ペパーミントやゼラニウムが、梅雨の時期にはおすすめ

また、柏木さんは自分のためのアロマをぜひ持っていてもらいたいと話します。それは「切り替えとしてのアロマ」、柏木さんは“ナウ・アロマ”と呼んでいます。

「ペパーミントに限らず、お気に入りの香りがひとつあるといいです。それが精油でなくても、コーヒーや海の潮の香りでもいいと思います。深呼吸にアロマの香りを伴うことで“自分は気分転換ができるんだ”と思えると、きっと次の一歩が踏み出せますよ」

情動を刺激するアロマの力を信じて

見えないけれど、必ずそこにある存在。柏木さんはあふれる笑顔で、感情を一番に刺激してくれるアロマの力を信じています。

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