学生時代に、摂食障害になった女性。退学することになり…「受け入れられなかった」 その後の姿に迫る

学生時代に、摂食障害になった女性。退学することになり…「受け入れられなかった」 その後の姿に迫る
ハンドメイド同好会の活動で制作した着ぐるみ

東京都主催の若手アーティストの登竜門「Next Fashion Designer of Tokyo」で大賞を受賞し、ブランド「BIFURCATUM(ビフルカツム)」を立ち上げた河村奈央子さん。インクルーシブファッションとは異なる斬新なアプローチで、パラアスリートなど身体に障がいのある方とコラボレーションしている。そんな彼女の背景に迫った。

摂食障害に苦しんだ中高生時代

中学1年生の頃に摂食障害になった河村さん。入院が長期化し、高校2年生のときに卒業が難しくなったため、通っていた中高一貫校を退学することになった。

「当時、新体操部に入っていました。先輩たちみたいに細く可愛い女の子になりたいと思い、ストイックにダイエットをしていました。気づいたときには、はまってしまって抜け出せなくなっていました。そして最終的には、ほぼ何も口にできなくなりました。思春期特有の女性らしい丸っこい体つきになっていくことを、当時の私は受け入れられなかったんです」

デザイン部員とモデルのみなさんで

心理療法や作業療法などを通して、もともとの自分を少しずつ取り戻していった河村さん。もう一度、高校生活を過ごしてみたいと思い、県立高校に入学し直した。

「はじめは2学年下の子たちと一緒に学ぶことにコンプレックスを抱えていました。でも2年生になった頃くらいから、学内に同い年の人がほとんどいなくなったことで吹っ切れ、やりたいことはやろうという気持ちになりました。学校が単位制で、私服登校で、帰国子女も多く、年齢も多様で、自由な雰囲気だったことが自分を解放してくれたんだと思います」

ものづくりに熱中し、ファッションの道へ

2年生になってから入部したデザイン部や、自分で立ち上げたハンドメイド同好会などで、ものづくりに熱中した河村さん。3年生のときには「ヨコハマファッションアワード2013」の高校生の部でグランプリを受賞。将来はファッションに携わる仕事がしたいと受賞インタビューで語った。

「思い出せば、小学生の頃からアイデアを形にすることが好きでした。レクリエーションを企画したり、図画工作で何かを作ったりしていました。また、入院中にも美術の時間のような時間がありましたが、そのときに看護師さんから将来ものをつくる仕事をしそうだねって言われたんです」

ハンドメイド同好会の活動で制作した着ぐるみ

お茶の水女子大学在学中には、服をアカデミックな視点で見ることが面白くて、服飾史と社会学を組み合わせながら学んだ河村さん。服の持つさまざまな可能性を知った。その後、主に革のバッグの企画を行う会社に就職したが、学生時代に服飾の技術については学んでいなかったことから、自分らしいものづくりへの思いが高まっていく。

「最初のうちは、何でも初めてのことばかりで楽しかったです。でも、だんだん会社としての制約や、顧客から求められるものを作らなければならないという中で、制限がない状態で自由に作ってみたいという思いがどんどん強くなりました。あとは、一度どこかで本格的に服飾の技術を学びたいとも思ったんです」

一念発起した河村さんは、パリで生まれた世界最古の服飾専門教育機関であるエスモードの日本校に入学。服飾の技術をとことん学ぶ中で、自らの大切にしたい価値観が深まっていった。

過去の経験を踏まえて自分らしい表現へ

「学生時代から、“機能と造形”をキーワードに服を作っていました。当時は実用的な服というよりは造形的な表現を追求した作品が多かったです。卒業間際に東京都主催のNext Fashion Designer of Tokyoへの応募をきっかけに、自分のものづくりの方向性が、障がいのある方と共に取り組む表現と相性が良いと思いました。障がいのある方が抱える問題解決を目的としたアプローチでもなく、インクルーシブファッションという括りでもない中で、一番似合うと思ったモデルさんが、義手や義足の方など造形的に特徴のある方たちだったという感覚です」

「摂食障害で一度社会からドロップアウトした経験がある私が、きれいなモデルにきれいな服を着せるだけの表現に留まっているのはとても違和感を抱いていたので、自分のたどり着いた答えに自分で納得しました」

MEETS the FORM(辻沙絵:パラ陸上義手)

ファッションモデルによる身体美からの脱却を目指す試みへとたどり着いた河村さん。Next Fashion Designer of Tokyoでは車椅子の方がモデルとなった作品で、インクルーシブデザイン部門、東京都知事賞・大賞を受賞した。その後「ジュンヤワタナベ」でパタンナーとして勤務する傍ら、同賞の特典としてパリファッションウィーク中に行われるショーに出ることになり、その準備を行う中で、新たな決意が生まれた。

「本業もパリのショーの準備もどちらもとても忙しく、両立は難しいと考えるようになっていました。そんな中で、迷ったのですがファッションの世界に身を置く人間として、パリという舞台で、自分の名前で勝負できることはかけがえのないことだと思い、退職してパリのショーに専念することにしました」

ファッションは社会に参加する媒介

そのタイミングで立ち上げたのが「BIFURCATUM」というブランドだ。
「Athletic form」をコンセプトに掲げ、スポーツウェアをベースに、植物や自然、動物の生態などからインスピレーションを受けたデザインを生み出している。

「私にとってファッションは社会に参加する媒介、道具というイメージを持っています。ファッション業界だけに閉じるのではなく、ファッションを軸にいろいろな業界とコラボレーションしたいと考えています」

その中で、学生時代に行き着いた価値観を大切に「ミーツ・ザ・フォルム」というパラアスリートなど、身体に障がいのある方に、自身のブランドの服を着用してもらい撮影するプロジェクトにも取り組んでいる。

MEETS the FORM(山下千絵:パラ陸上義足)

「一般的なファッションフォトは、モデルさんに当日会って撮影して終わりです。でも、ミーツ・ザ・フォルムでは、モデルの方に事前にお会いして趣旨を伝え、普段の生活の様子や、その方のライフヒストリーを伺っています。写真を撮るカメラマンにも同席していただいています。そうして、なるべくリラックスした雰囲気で撮影します。個人の身体を扱っている感覚が強いです」

今後は、ライターやパラアスリートのコーディネーターなどの参画も予定しているという。単なる撮影ではなく、この営み全てをメディアとして捉えている河村さん。半年に1回の撮影を続けて、5年後にはフォトブックにしたいとのことだ。

これからも、ファッション業界に限らず、さまざまな分野に展開しながらファッションの可能性を試していく予定だ。河村さんがこれから生み出す思いもよらないコラボレーションが楽しみだ。

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