妊娠中や出産後に、脳卒中を発症する可能性があるといわれています。
出産12日後に緊急搬送され、脳出血と診断された立川あんさん(@an_20230514reborn)。
今回は、旦那さんにサポートする立場で気づいたことや、奥さんであるあんさんへの思いについて聞きました。
※脳卒中…脳の血管が詰まったり破れたりすることによって、脳が障害を受ける病気のことで、脳の血管が詰まる「脳梗塞」、破れる「脳出血」や「くも膜下出血」があります。
奥さんの発症から手術直後まで
奥さんが最初に違和感を覚えたのは、出産から9日目の朝。睡眠中に今まで経験したことのないような、激しい頭痛で目が覚めます。しかし、数分で治ったそう。奥さんは出産後の授乳で睡眠不足だったのと、その数日前に陣痛を経験していたことで、痛みに対しての感覚が麻痺していたと考えていました。
そして、病院の受診はせずにそのまま過ごします。しかし、その3日後の夕方、また激しい頭痛が…。市販の頭痛薬を飲んでベッドに横になったものの改善せず、自然に涙がボロボロと出てくるほどの頭痛でした。また、突然左手に痺れの感覚が現れてろれつが回らなくなり、そのときに奥さんは体の異変に気づいたといいます。
そして救急車で病院に搬送後、手術を受けました。数日後、脳出血の原因を調べるため脳の血管造影の検査を行いますが、特に大きな異常は見られませんでした。脳出血のはっきりとした原因は掴めず、おそらく周産期のホルモンバランスが関わっているのではないかと言われたそうです。
緊急搬送されたのは、奥さんが出産してから12日目のこと。緊急搬送されるまでの12日間、旦那さんから見ても奥さんの体調に違和感はありませんでした。ただ、早朝深夜を問わずに新生児の授乳などをしてくれていることを認識していた旦那さんは、出産直後にもかかわらず、大変な日々を過ごしていると感じていたといいます。
育児休暇を取得することができ…
奥さんは脳出血発症後、左半身に麻痺が残り、リハビリのため入院をしました。そのため、旦那さんは仕事と育児の両立をすることになります。
発症から約2ヶ月は、仕事と育児の両立で1日の時間スケジュールの調整が非常に難しく、深夜のミルクの時間である午前2時ごろまで仕事をして、朝6時に起床というサイクルだったといいます。それを旦那さんの会社が考慮してくれ、急遽育児休暇を取得することができました。
「育児休暇の取得以降は育児に専念でき、負担は格段に下がりました」
しかし、初めての育児ということもあり、お義母さんとおばあさん、奥さんの親戚の力を全面に借りながら育児にあたってきたと話します。また幸いにも、娘さんがミルクを嫌がらず、大きな病気やけがもなく健康であったため、何とか大変な時期を乗り越えられた…とも語っていました。

不安に感じることももちろんあった旦那さんですが、支えてくれたのは友人の存在でした。家族ぐるみで仲良くしていた数人の友人には、奥さんの状況を伝えて子育てのアドバイスをもらったといいます。また、わざわざ遠い奥さんの実家まで会いに来てくれたことも大きな励みとなりました。

奥さんの入院中、旦那さんはできる限り、奥さんと娘さんが会えるように時間を作ることを心がけました。娘さんの負担も考慮しながらでしたが、できる限り奥さんの元に連れていくことで、奥さんの「リハビリを頑張る力」を引き上げるように努めていたのです。
奥さんは最初は座るのもままならない状態から、リハビリを頑張り、発症から3ヶ月目には1人で歩けるまでなりました。そうした姿を見て「発症から手術直後の状況を踏まえると、よくここまで動けるようになったということ、そしてリハビリの頑張りを思うと大変に頼もしかったです」と話してくれました。
自立に向けてサポートしていきたい
奥さんは、今回約7ヶ月間の入院をしました。退院が決まったとき旦那さんは「まずは率直に嬉しくて、長期間の入院生活をよく頑張ったなと労りの気持ちを感じました」といいます。その一方で、家族からすると約7ヶ月の入院期間は、長いようであっという間だったといいます。
さらに嬉しい気持ちと反面に「これから自分たちが育児だけではなく、経験もない中で妻の介護をしていくことに少し不安な気持ちはありました」と旦那さん。
また、退院後もともと生活していた家に戻ることになりましたが、お義母さんは協力をするために同居をしてくれたそうです。
「妻の退院を転換点として、とりまく関係者の生活環境がガラリと変わることに対して大きな感謝と、私自身もあらためて頑張っていこうと気を引き締めました」

奥さんが発信しているSNSには、たくさんのいいねやコメントが寄せられています。それに対して旦那さんは「人々の温かさを感じています」といいます。
SNSの匿名性にはポジティブな面もあれば、ネガティブな面もあります。そのため、奥さんの精神にマイナスな影響を与えないかを心配していました。しかし、実際には奥さんを応援してくれるようなポジティブなコメントや、似た境遇の方々からの報告などのいいコメントが多かったのです。
「SNSを始めてとてもよかったと思います。妻の頑張りと変化の報告によって、同じような境遇の方々にとって少しでも明るく、わずかでも希望となる話題になれるよう、私たち家族としてもサポート、応援していきたいと思います」

旦那さんにとって、奥さんは「大切な存在」と話します。
そして、これからもサポートを頑張っていきたいといいます。その一方で、現状に満足せず引き続きリハビリに励んでほしいと。
「妻と娘の面倒にあたって、大きく負担がかかっているお義母さんには大変感謝しています」と旦那さん。奥さん自身が少しずつでも自分でできることの範囲を広げていくことで、お義母さんの負担が軽減されるといいな…と話します。
また奥さんは、薬の副作用による眠気、脳の損傷に起因した喜怒哀楽の表現が以前より増したなどの多少の性格の変化もあります。病気前後で奥さん自身の変化に戸惑うことも多いですが、引き続き自立に向けてサポートしていきたいと旦那さんは語ってくれました。
無事に出産をした12日後、突然あんさんを襲った脳出血。こうした病気は当時者に注目されることが多いですが、今回サポート側の旦那さんのお話を聞くことができました。誰も予想できなかったことに、ご本人はもちろん、旦那さんの戸惑いはかなり大きかったことがわかります。
しかし、旦那さんが奥さんの力になろうと努力をしている姿や、周りの人の協力を得ながら毎日サポートしている姿は、同じような境遇の方々への大きな力となるのではないでしょうか。