香川県では2022年4月から、ドクターヘリが導入されます。現場での医師による救急医療が早く適切に行われるようになるため、救命率の向上と予後の改善が見込まれています。特に香川県は瀬戸内海にある有人島が多くあり、島々はもちろん、山間部や過疎地域などでのドクターヘリの有効活用が期待されています。

そんなドクターヘリに将来携わることを夢見て、現場で整備士として働きながら勉強を続けているのが、四国航空入社4年目の長岡裕介さん。今回は長岡さんに、多岐に渡るヘリの整備士としての仕事の内容や、やりがいについて尋ねました。

少数精鋭のヒーロー

ーヘリコプターに関わる仕事を志した理由を教えてください
幼い頃から父親と一緒に空港に遊びに行っていたこともあり、将来は航空業界で働けたらいいなと漠然と思っていました。高校生になってもその夢は変わらずに、高校卒業後の進学先も迷うことなく、航空整備士の資格が取得できる専門学校に進みました。
飛行機の道か、ヘリコプターの道に進むか迷っている時に、ドクターヘリや防災ヘリの存在を知り、大きな飛行機みたいにたくさんの人は運べないですが、困った人の所に助けに行くヒーローみたいでかっこいいと思い、ヘリコプターの道に進むことを決めたのを覚えています。

―どのような点で、「かっこいい」と感じたのでしょうか?
操縦しているパイロットや整備士の人たちという、乗っている人たちが少数精鋭でやっているので、自分もそういう仕事に携わりたいなという思いでした。

整備士もヘリに乗る

―ヘリコプターの整備士とは、具体的にどのような仕事をするのですか?
毎日の機体の点検や、フライト中は無線業務があります。例えばドクターヘリの場合、パイロット、同乗するドクターやナースはもちろんですが、着陸するランデブーポイントに先着して安全を確認する消防隊の方、運航支援、消防や病院と調整を行うCSなど、関わっている方々とコミュニケーションを取ることも大事な仕事です。また、ヘリコプターに近づいてくる人がいないか周囲を確認するのも整備士の仕事です。

―整備士も同乗するのですね。
今は小型のヘリで仕事に行くことが多いのですが、機体のトラブルが出てきたときには対応する必要があります。また、空港以外のヘリポートや、山の中の何もないようなところに降りることもありますので、そこでもし何かあった場合には、整備機材も他の整備士もいない状態です。判断を間違えないようにしないといけないので、頻繁に会社に電話して聞く、ということもありましたね。

さらに上を目指して

―ヘリコプターの整備士としてのやりがいを教えてください。
車やバイクが半年点検、1年点検、オイル交換をするように、ヘリコプターも定期的に運休して点検しなければなりません。1年に1回は、車でいう車検のような点検も実施します。その時は作業責任者として整備作業を行います。大きな不具合が発見されることもありますが、作業責任者として点検した機体が無事に仕上がると、達成感を感じます。

―将来の夢を教えてください。
幼い頃からの夢を実現させて、社会貢献度の高いヘリコプターの仕事に従事出来ていることに非常にやりがいを感じています。今後はさらに上級の資格も取得して、他の整備士やパイロットからも信頼される整備士になることが、今の目標です。

縁の下の力持ち

四国航空では、ドクターヘリ(※)や防災ヘリの他にも、さまざまなヘリ業務があります。物資輸送のほか、山の中での送電線巡視など、電力や土木施工などのインフラ整備にも貢献しています。そんな、影ながら誰かのために貢献している「縁の下の力持ち」としての一面も、この仕事の魅力なのだと、長岡さんは話してくれました。

※四国航空は、2011年から高知県のドクターヘリ運航を受託している。香川県のドクターヘリ運航も受託しており、2022年4月から運航開始予定。

長岡さんは現在、小型ヘリを主に担当する二等航空整備士です。ドクターヘリや防災ヘリなどの中型ヘリを扱える一等航空整備士になるため、仕事が終わった後や休日も、日夜勉強に励んでいます。

「どうしてそこまで頑張れるのか?」と尋ねると、「将来就きたい仕事という、夢があるので」と、笑顔で答えてくれた長岡さん。幼い頃から思い描いたヒーローになるために、その目はまっすぐ前を向いていました。

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