岡山県の北部、鳥取県との県境にある奈義町。ここに「究極の赤身の熟成肉」への挑戦を続ける畜産家がいます。地元の豊福牧場の三代目、豊福祥旗さんです。

豊福牧場は、1950年頃から畜産をはじめ、2012年に「株式会社オリジナルキューチ」として法人化しました。現在、約130頭を飼育しており、奈義町産ブランド牛「なぎビーフ」の指定農場でもあります。

事務所兼なぎビーフ予約販売店 「キューチ・プラス」。レンガ色が雪に映える。

この一見するとカフェのような建物は、オリジナルキューチの事務所兼なぎビーフ予約販売店です。外観からは想像出来ないのですが、建物の裏にある牧場の事務所です。食肉の加工場も併設されており、飼育、生産から販売まで行っています。

料理人から相談を受けた「究極の赤身の熟成肉」

大きな熟成肉のかたまり

最近耳にすることが多くなった「熟成肉」というワード。旨味があり、肉の味が凝縮されていておいしいと、食肉の一つのカテゴリーとして認識されつつあり、オリジナルキューチでも加工・販売をしています。

オリジナルキューチの熟成肉は、最初は熟成を目的としてではなく、「育てた牛の1頭が食肉になった時に冷凍する事なくお客様に届けたい。」という思いから始まりました。出来るだけ長く、おいしい状態のまま提供できる精肉の販売や、レストランで使用する肉の鮮度を保つにはどうしたら良いのかを追求した結果の副産物として生まれました。

数年前、ある料理人から「昨今、赤身肉が注目されて来ているが、食べるなら外国産ではなく安心できる国産黒毛和牛の赤身が食べたい。という層のお客様がいる。安心、安全でしかもおいしい。黒毛和牛の究極の赤身の熟成肉が出来ないだろうか。」と相談を受けました。

「出来ますよ。」

この瞬間、豊福さんの挑戦は始まったのです。

コンセプトは「プレミアムな赤身」、そして「牛の健康が人の健康を作る」

岡山県和牛の血統を受け継ぐ豊福牛

そして、豊福さんが力を入れたのは独自のブランド牛「豊福牛」です。

岡山県の和牛の血統を受け継いだ黒毛和牛でありながら、霜降りのさしが少なく、赤身のおいしさを追求した牛です。与える飼料は国産のみ。出来るだけ地元産のえさを選びます。1日2時間ほど牛舎の外に出して遊ばせ、ストレスを与えないようにのびのびと健康的に育てます。

牧草地で自由に過ごす牛たち。(豊福さん提供)

そして、その肉を氷温熟成(※)させ、旨味を凝縮させて出来上がったのが、奈義町産黒毛和牛「豊福牛」の”プレミアムな”赤身の熟成肉です。赤身でありながら、柔らかく、熟成された肉の旨味と黒毛和牛の脂の甘さもあわせ持っており、プレミアムの名に偽りはありません。

※0℃以下でも凍らない温度域を「氷温域」といい、この氷温域で熟成がおこなわれた状態

消費者に寄り添った情報発信を

“株式会社オリジナルキューチ”取締役、豊福祥旗さん

豊福さんは究極の食肉を目指していますが、黒毛和牛だけに価値を見出すのではなく、それぞれの家庭で、それぞれの価格帯のお肉があっていいと考えています。
消費者が口に入れる食べ物が、何から、どこで、誰に、どのように作られたかを知り、選択出来るように、消費者に寄り添って情報を発信していくことが、これからの畜産農家の課題であり目標だと話してくれました。

「食べるために育てた牛に、美味しくない肉はないと思っています。」

そう語る豊福さんの言葉に、真摯に畜産業に向き合う生産者の誇りと意志を感じました。社名の“オリジナルキューチ” には、「究極(キュー)の地産地消(チ)」と「家(ウチ)のクオリティ(Q)を上げ発信する」という2つの意味が込められています。

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