「どこに行くか、ちゃんと書いておいてね」
子どもが一人で遊びに行くようになると、親として必ず伝える言葉ではないでしょうか。
しかし、子どもの解釈は時に大人の想像を軽々と飛び越えてくることがあります。
ある日曜日の午後、家事を終えてリビングで一息ついていたお母さんと、小学生の息子の間で交わされた、
なんとも微笑ましい「メモ」を巡るエピソードをご紹介します。
「ぼくは ぼうけんに でています」テーブルに並んだ出動準備
その日は、のんびりとした空気が流れる休日でした。息子が遊びに行こうとする背中に、お母さんは「遊びに行くならメモを残してね」と声をかけます。
息子は素直に頷き、ペンを走らせている様子。
しかし、彼がテーブルに残していったのは、単なる行き先のメモではありませんでした。
そこに置かれていたのは、『ぼくは ぼうけんに でています』という、力強い“冒険宣言”。
さらに驚いたのはその横です。
水筒、双眼鏡、そしてお菓子が、まるで行列を作るかのようにきれいに整列されていました。
それはまさに、これから未知の世界へ挑む“冒険家の出発準備”そのもの。
実際は近所の公園へ虫取りに行くだけなのですが、その気合の入りように、お母さんも思わず「これから大仕事に行くのね……」と圧倒されてしまったといいます。
目的地はどこ? 届いたのはまさかの「移動ログ」
しかし、本当の驚きはここからでした。
お母さんが「結局どこへ行ったのかしら」とメモをよく確認すると、そこには目的地が一切書かれていなかったのです。
代わりに残されていたのは、3枚に分けて貼られた不思議なメモ。
「いま玄関」
「いま階段」
「いま外」
なんと、行き先ではなく“現在地の実況中継”が記されていました。
まさにリアルタイムの移動ログ。
「えっ……なにこれ?」
それを見た瞬間、お母さんは思わず固まってしまったそうです。
メモといえば紙に行き先を書くもの。
そんな大人の常識を鮮やかに裏切る、息子の「実況スタイル」に、脳の理解が追いつかない不思議な感覚に陥ったといいます。
しばらくして、公園から帰ってきた息子は「任務完了!」と言わんばかりの誇らしげなドヤ顔。
その表情を見て、怒る気などどこかへ消え、笑いが込み上げてきたのでした。
大人の「当たり前」を再解釈する、子どもの柔らかい発想
「大人なら『メモ=紙に行き先を書く』としか思いませんが、子どもは自分なりにその概念を再解釈してしまうんですね」
今回の出来事を通して、お母さんはそう感じたといいます。
時にはメモが靴だったり、暗号だったり、あるいは冷蔵庫の中に隠されていたり……。
子どもにとっての「伝える」という行為は、私たちが思うよりもずっと自由で、クリエイティブなものなのかもしれません。
あの日以来、このご家庭では、息子がメモを残すことがちょっとした「家族のイベント」になったそうです。

最近では少しずつ「今日は◯◯に行くよ!」と、内容が“伝わるメモ”へと進化してきたとのこと。
それでも、お父さんとお母さんは、今日はどんな驚きがあるのかと、テーブルの上のメモを見るのが密かな楽しみになっています。
子どもの自由すぎる発想に、時に振り回され、時に癒やされる。
そんな日常の小さな「ズレ」こそが、家族の思い出を彩る宝物なのかもしれません。







