結婚式の準備の中で、夫婦として大切にしたい価値観を言葉にする「夫婦の理念づくり」。
岡山県倉敷市でウェディング事業を行う株式会社サムシングフォーでは、結婚式のプロデュースの中で、この取り組みを行っています。
背景にあるのは、「結婚式を当日だけのイベントで終わらせない」という考え方です。
結婚式は、人生の節目となる一日。だからこそ、その前に自分たちはどんな夫婦でいたいのか、何を大切にして生きていきたいのかを言葉にしておくことには意味があるといいます。
忙しい日々の中では、相手を大事に思う気持ちがあっても、それを改めて確認する時間は意外と少ないものです。
結婚式という節目の前に立ち止まり、価値観をすり合わせることで、その後の人生の支えになることもあるそうです。
今回話を聞いたのは、この理念づくりを行った田中敦望(あつき)さん・朱梨(あかり)さんご夫婦。
出会いから現在に至るまでの歩みや、理念を決めた理由について伺いました。
高校の同級生だった2人 最初の印象は「情報量が多すぎて面白い人」
2人の出会いは高校時代でした。
朱梨さんが敦望さんを初めて認識したのは、高校2年生の音楽の授業だったそうです。
発表会で、敦望さんが1人で弾き語りをしていた姿を見たことがきっかけでした。
披露していたのは、ピクミンの「愛のうた」。
「情報量が多すぎて爆笑しました。めちゃくちゃ面白い人だな、というのが第一印象でした」
強く印象に残る出会いではあったものの、その時点ではまだ特別親しい関係ではなかったといいます。
一方、敦望さんが朱梨さんをきちんと認識したのは高校3年生のとき。
英語の授業でペアになり、質問し合ったり絵本について話したりしたことがきっかけでした。
何気ない授業の時間の中で少しずつ相手の人柄を知っていったことが、後の関係につながっていったようです。
再会は成人式のあと 初デートはハイキング

2人が再び距離を縮めたのは、成人式の数年後。 23歳のとき、同じクラスだった4人で集まったことがきっかけでした。
高校卒業後はそれぞれ別の道を歩んでいましたが、再会をきっかけに連絡を取り合うようになり、自然な流れで初めてのデートへとつながったそうです。
場所は山。ハイキングでした。
その日、朱梨さんはお母様が作ったお弁当を持参。
2人で一緒に食べた時間が、今でも印象に残っているそうです。
帰りには、敦望さんがそのまま朱梨さんの実家へ行き、ご家族と食事をすることに。
特にお父様と意気投合し、温かい時間を過ごしたといいます。
初デートでありながら、自然と家族の輪の中に入っていったことも、2人らしいエピソードのひとつだったようです。
留学前夜のLINEでの告白 「結婚するならこんな人がいい」
その後、朱梨さんがオーストラリアへ1か月留学することに。
出発前日の深夜、LINEで突然「好きです」と告白が届きました。
当時敦望さんは、前の恋愛が終わったばかり。
すぐに返事はできなかったそうです。
それでも直感的に「結婚するならこんな人がいい」と思った気持ちを伝えました。
恋人としての時間が始まる前から、将来を自然に思い描けるような安心感があったのかもしれません。
朱梨さんが帰国した後、4月ごろから正式に交際がスタートしました。
就職活動で落ち込んだとき、絵本を読んでくれた
約6年間の交際の中で、2人の絆が深まった出来事があります。
朱梨さんが就職活動でうまくいかず、自信を失っていた時期でした。
教員を目指していた敦望さんは、就活の経験がなく、どう声をかけたらいいか分からなかったといいます。
そこで、車の中で1冊の絵本を読んでくれました。
『たいせつなこと』という絵本でした。
「あなたはあなたでいい」というメッセージに、朱梨さんは救われたといいます。
うまく励ます言葉を探すのではなく、その人らしい方法で寄り添ってくれたことが、朱梨さんの心に深く残ったそうです。
「この出来事があって、この人となら大丈夫だと思えました」相手を変えようとするのではなく、そのまま受け止めてくれる安心感が、2人の関係をより強くした出来事でした。
結婚の決め手は「安心感」と「家族との相性」
結婚を決めた理由についても聞きました。
敦望さんは、「高校時代に同じクラスで過ごしていたので、人となりを知っている安心感が大きかったです」と話します。
さらに、「朱梨のご両親がとても素敵で、このご両親に育てられた人なら間違いないと思いました」と振り返ります。
朱梨さんは、「付き合う前に実家に来たとき、家族とすぐ打ち解けていた姿を見て、こういう人が家族にいたらいいなと思ったんです」と話します。
その時点で、結婚のイメージが自然に浮かんでいたそうです。
恋愛感情の強さだけでなく、一緒に暮らしていく相手としての安心感や、家族を含めた関係のなじみやすさも、2人にとって大きな決め手になっていたことがうかがえます。
理念づくりを通して見えた、2人にとっての幸せの形
結婚式の準備の中で、2人は株式会社サムシングフォーの提案で「夫婦の理念づくり」を行いました。
夫婦の理念づくりは、単に“素敵な言葉を考える時間”ではありません。
どんな時に幸せを感じるのか、何を大切にして生活していきたいのかを対話しながら、お互いの価値観を確かめていく時間でもあります。
そこで2人がたどり着いた夫婦の理念は、「てっとり早い幸せ」でした。
一見すると軽やかな印象のある言葉ですが、そこには2人らしい、確かな意味が込められています。
2人とも教育関係の仕事をしており、忙しく生活リズムがすれ違うこともあります。
そんな中で大切にしているのが、一緒にご飯を作って食べる時間。
何か特別な出来事ではなく、同じ食卓を囲むこと、同じものを食べて「おいしいね」と言い合えること。
そうした日々の積み重ねこそが、2人にとっての幸せの土台なのだと見えてきたそうです。
また、価値観を言葉にすることで、これから迷ったときや忙しさの中で余裕をなくしたときにも、「自分たちは何を大切にしたかったのか」に立ち返りやすくなる感覚があったといいます。
【 てっとり早い幸せ 】
「なに食べよっか?」
大切な人をねぎらうおいしい時間
きっと色んなことがある
うれしかった日も
くやしかった日も
がんばった日も
「いただきます」
「おいしいね」
同じものを食べて同じ幸せを感じて
そうやって幸せを共有し合う毎日が
明日の元気の素になる
どんな日もよかった日
幸せになるのに準備はいらない
いつだってふたりは今すぐ幸せになれる
もうすぐ家族が増える 理念をこれからにつなげていきたい
現在、朱梨さんは妊娠中で、来月出産予定です。
今回決めた理念は、これから夫婦だけでなく家族の中でも大切にしていきたいと話します。
子どもが生まれれば、生活は大きく変わっていきます。
今まで当たり前にできていたことが難しくなる場面も増えるかもしれません。だからこそ、今のうちに2人にとって大切なことを言葉にできた意味は大きかったようです。
「忙しい社会人だからこそ、一度立ち止まって価値観をすり合わせる時間が大事だと思いました」
結婚式の準備の中で決めた言葉が、その日だけのものではなく、これから先の暮らしの中で何度も思い出されるものになっていく。
2人にとっての“夫婦の理念”は、新しい家族のはじまりを支える言葉にもなっていきそうです。





