ただの頭痛だと思ったら…医師「心して…」その後、判明した病。 誰にも理解されない辛さをSNSで発信するその理由とは

ただの頭痛だと思ったら…医師「心して…」その後、判明した病。 誰にも理解されない辛さをSNSで発信するその理由とは
痛みから解放されたパパおじさん(@papaojisan2525さんより提供)

世界三大激痛とされる「心筋梗塞」「尿路結石」そして「群発頭痛」。
そのうちのひとつ、群発頭痛と日々闘っているのが、ある男性「パパおじさん」です。

その痛みは想像を絶するもので、発作が始まると30分〜1時間、ただ耐えるしかありません。まぶたも腫れ、涙が止まらず、人によっては嘔吐してしまうこともあるといいます。

出産を経験した女性の中には「陣痛よりもつらい」と語る人もいるほど、群発頭痛の痛みは激しいとされています。そんな群発頭痛について、パパおじさんは痛みが起こっているときの様子をSNSで発信しています。

そこで、群発頭痛との向き合い方やSNSで発信する理由を聞いてみました。

耐えるしかない「群発頭痛」

パパおじさんが闘っている群発頭痛は、片目の後ろに今までに感じたことのない激しい痛みが生じます。キリで目を突き刺されるような痛みと表現されることも。

群発頭痛は一度発症すると、1ヶ月から長くて3ヶ月の間、毎日複数回発作のように症状が出ます。その間はあまりの激しい痛みにのたうち回ることしかできません。そしてその痛さゆえに、うつ病やパニック障害を発症する方もたくさんいます。

群発頭痛が起きたときの様子(@papaojisan2525さんより提供)

理解されず、予測できない痛み

パパおじさんが初めて群発頭痛に襲われたのは、高校2年生のときでした。
最初は何なのかまったくわからず「脳の血管が切れてしまったと思った」といいます。そこで、急いでお母さんに病院へ連れていってもらい、さまざまな検査をしました。

ところが検査をした結果、何も問題なく、何件も病院に行った際「精神的な病気でしょ?」と言われ、精神科の受診を勧められたことを今でも覚えています…と語ります。そんな訳がないと思ったパパおじさんは、地元の有名な脳神経外科に行った際に初めて群発頭痛と診断されました。

「『先生に、しんどい病気だからこれから心して付き合っていかないといけない』と病気の説明を受けた際は、病名がわかった嬉しさの反面、一生付き合っていかないと知り、絶望感に襲われたことを今でも覚えています」

高校2年生のときに初めて群発頭痛に襲われたパパおじさんは、その後、約2年から3年の周期で発症していました。群発頭痛が来るたびに、壮絶な痛みと闘い続けてきたのです。
「何より家族や知人、そして職場などに迷惑がかかることが本当に嫌で、周りからの理解もなかなか得られずに、歯痒い思いと申し訳なさで精神的に追い詰められました」

群発頭痛は人によってさまざまですが、年齢を重ねるたびに頻度が減ることもあるといいます。パパおじさんは、8年間症状が出ていなかったことがあり、そのときは治ったと安心して家族や職場の仲間も喜んでくれていました。ところが、安心していた最中にまた発症したのです。

「ひどく落ち込みました…」とそのときのことを振り返ります。

忘れられない痛み(@papaojisan2525さんより提供)

群発頭痛はいつ来るかわかりません。そんな恐怖との向き合い方についてパパおじさんは「考えないようにしていた」と話します。
「とにかく痛い、苦しい思い出しかないので、できるだけ痛みの発作がでていない期間は思い出さないようにして日々を過ごしていました」

ただ、8年ぶりに群発頭痛が出てしまい、このままではダメだと思ったパパおじさんは、同じ病気で苦しむ仲間との交流やこの病気がまだまだ知られていない現状を改めて痛感したため、SNSを使って発信を行うことにしました。

群発頭痛を知ってほしい(@papaojisan2525さんより提供)

痛みがいつくるかわからない恐怖、そして言葉では表せないほどの痛みと闘う、そんなパパおじさんを支えてくれたのは家族でした。

「今回、8年ぶりに発作がでた際、これまで以上に痛みが続き精神的に参ってしまい、落ちこんでいた際に献身的に看病してくれたのが家族でした。発作時は些細な音や光、心配する声までも頭に響いてしまいますがすべてにおいて気を遣ってくれ、発作が落ち着いた後も明るく接してくれた家族には感謝しかありません。また、独り身だったら…正直、耐えられなかったと思います。」

世界三大激痛に認定されているにもかかわらず…

パパおじさんは群発頭痛について、周囲からの理解は未だになかなか得られないのが現状だと話します。幸いなことに現在の職場は、過去に働いていた職場に比べて圧倒的に理解があり、長い間勤めていることもあって発症期間中は「しっかり休んでいいよ」とお休みをいただけたのでした。
「本当に助けられています」と語ります。

しかし、今の職場に出会うまではまったく理解をされなかったのです。
「頭痛くらいで休むな、たかが頭痛」と言われたパパおじさんは「正直、群発頭痛という名前を恨みました。これが頭痛ですまされるわけはないと…」といいます。

痛みから解放されたパパおじさん(@papaojisan2525さんより提供)

また、休み期間中も診療のために貯蓄を切り崩さざるを得ず、金銭面の負担が重くのしかかるのも、この病気の大きな課題だと語ります。

群発頭痛は、俗に“世界三大激痛”の一つとも言われるにもかかわらず、公的な支援制度が十分に整備されていないのが現状です。パパおじさんはインターネットで「障害年金を受給できる場合がある」という情報を見つけ、希望を抱いて地元の年金窓口を訪ねました。

携帯用酸素ボンベを手に、発作への不安を抱えながら足を運んだものの、窓口では「群発頭痛単独では障害年金の支給は難しい」という回答を受けました。

さらに「群発頭痛のみで支給された前例は確認できず、ネット上の情報は別の病気を併発していたケースかもしれない」と曖昧な説明を受けたと言います。「うつ病やパニック障害と併発していれば受給対象になる可能性があります」と続けられた瞬間、怒りがこみ上げたそうです。

「私と同じ病気で苦しんでいる人が大勢いるのに、なぜ公的な支援がいまだに整わないのか。なぜ指定難病にもならないのか……」──そう悩み、苦しみ続けています。

片目が腫れあがってしまう(@papaojisan2525さんより提供)

パパおじさんの現在の職場は、病気に対する理解はありますが、さまざまな病気がある中で、なかなか病気の理解をしてもらえる会社は少ないのが現状だと話します。

群発頭痛患者であるパパおじさんの仲間たちは、会社での対応に困っている方達がたくさんいて「頭痛ぐらいで休むなら辞めろ、皆に迷惑をかけるな」と言われ、退社せざるを得ない方も少なくはないといいます。

そこでパパおじさんは「会社というよりは国が動いて、病気が発症した期間だけでも良いので補助を受けられる体制を作っていただきたいです」と語っていました。

群発頭痛を難病指定にするための活動を続けていきたい

パパおじさんは、変わらぬ医療制度や病気の認知不足に絶望したことがきっかけとなり「何か行動を起こしたら、少しは状況が変わるのではないか?」と淡い気持ちから、TikTok配信を行ってみることにしました。

配信には想像以上の反響がありました。同じ病気で闘っている方をはじめ、異なる病気で苦しんでいる方、そして病気ではないものの群発頭痛について理解しようと力を貸してくださる方まで、多くのメディアや視聴者から、温かいコメントが数多く寄せられたのです。

しかしそれでもなお、パパおじさんが本当に望んでいる結果には、いまだ繋がってはいません。また「SNSはすごい力を持っていることもわかりましたが誹謗中傷もたくさんあり、正直、心が何度も折れてしまいそうになりました」ともいいます。

難病指定されるように…(@papaojisan2525さんより提供)

今後については「まずは今の状況を克服することから始めます」とパパおじさん。
それは、今回の発作で何度も群発頭痛を発症し、発作期間が終わったあと、初めて体や心に明らかな不調が現れたことがきっかけでした。発作中の苦しみが頭から離れず、群発頭痛のことを考えるだけで不安が押し寄せてきます。

さらに、夜に部屋を暗くして眠ろうとすると、当時の感覚がよみがえり、パニック障害を起こしてしまうこともあるのです。
「幸い、私は軽い症状なのですが、家族や仕事のこともあり、パニック障害を起こさせないためにもなるべく考えないようにして今を過ごしておりますが、今後少しずつSNSの発信や、群発頭痛を難病指定にするための活動を再開したいと考えております」

群発頭痛と向き合いながらもパパおじさんは、同じ病気で苦しむ仲間たちと結託して、この病気が一刻も早く認知され少しでも平穏な人生を送れるように、これからも活動を続けていきたいと今後について話してくれました。

パパおじさんは「群発頭痛をもっと知ってほしい」「指定難病に認定してほしい」という思いから、実際に群発頭痛が発症したときの様子をリアルに配信し続けています。
薬も効かず、ただ耐えるしかない痛み。そして、次にいつ発作が来るかわからないという恐怖と闘いながら、発信を続けているのです。その姿を見れば、決して「気のせい」などとは言えない現実があることが、はっきりと伝わってきます。

それでも、群発頭痛の認知度はいまだ低く、理解も十分とはいえません。ですが、これは決して他人事ではなく、誰にでも起こり得る病気です。
まずは「群発頭痛」という病気の存在を、ひとりでも多くの人に知ってもらうことが、今、必要なのではないでしょうか。

そしてSNSでの発信や、この記事が多くの人の目に留まることをパパおじさんは願っています。

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