咳をするわが子に違和感…その後、医師「半年も生きられなかったかもしれません」再診をしてわかった病とは 母の思いに迫る

咳をするわが子に違和感…その後、医師「半年も生きられなかったかもしれません」再診をしてわかった病とは 母の思いに迫る

「先天性心疾患」という病気について、聞いたことがありますか?先天性心疾患とは、生まれたときに心臓に何らかの異常がある病気で、100人に1人の確率で発症すると言われています。しかし、生後3ヶ月で先天性心疾患であることがわかった「うーたん」は、心疾患の中でも非常にまれである「左冠動脈肺動脈起始症」という30万人に1人の病気にかかっています。先天性心疾患を患う娘さんについて、うーたんのお母さんに話を聞きました。

30万人に1人の病気

うーたんは、病気が見つかる生後3ヶ月までは順調に成長しており、他の子と変わらず元気な赤ちゃんでした。しかし、今思えば心疾患の特徴に当てはまっていたため「症状はすでに現れていたのかもしれない」とお母さんは振り返ります。

ある日、お母さんは予防接種の予約を入れるために小児科に電話しますが、そのときにうーたんが咳をしていたため、そのことを伝えると受診を勧められました。そこで、かかりつけの小児科を受診しますが、ウイルス検査はすべて陰性で、喘息だと診断されました。

ただしその翌日から、咳が止まらない、笑わない、ミルクの飲みが悪いなどの症状がどんどんひどくなっていったのです。そこでお母さんは「喘息ではないのでは…」という気がして再診をお願いし、大きい病院へ紹介状を書いてもらいました。

そしてすぐに大きい病院を受診し、肺炎の診断を受けます。入院し、点滴をして4日後、肺の影がなくなったので退院できると言われたのですが、その後、医師から急に「このままでは退院できません。心臓専門の医師に診てもらいたいので、B病院に行ってください」と伝えられます。

うーたんはそのまま転院し、B病院で心臓エコーなどたくさんの検査をしました。

病気が確定するまでは「薬で治るものだろう。ちょっと入院したら治るだろう」と、考えていました。

しかし検査の結果、医師から先天性心疾患で手術が必要だと言われたのです。お母さんはそのとき、目の前が真っ暗になり涙が止まらず、うまく呼吸ができなかったといいます。とにかく「どうしてこの子なの」という考えで頭がいっぱいでした。

さらに手術のために別の病院へ転院したうーたん。
医師からは「この病気は手術でしか回復は見込めない。このまま生きていても苦しいだけだから明日手術をします」と伝えられます。
「その時、もしかしたらこの子に二度と会えなくなるかもしれないと思いました」

「医療ドラマでよく見る心臓手術を今から受ける。胸を開いて肋骨を切り心臓をとりだす。その間、うーたんの身体は機械に繋がれて生きる。そんなことを想像するだけで足元が崩れ落ちそうになりました。つらかったです。そして、どんどん衰弱していくうーたんを見るのもつらかった…」

そこで、うーたんをたくさん抱きしめ、手を握り、写真をとったというお母さん。
「明日も会えますように。1歳の誕生日をお祝いできますように。この子がたくさん幸せな人生を歩めますように。どうかまた抱っこできますように」と願うことしかできなかったと語ってくれました。

医師からは、本来なら生後2ヶ月までにわかる病気で、この子のように気づかないのは珍しいと言われたそうです。実際に、気づかずに大人まで生きる人もいるそうですが、うーたんの場合は見つかっていなかったら半年を迎えられなかったかもしれないと話します。

うーたんの心臓はびっくりするほどに大きく肥大しており、かなり負担がかかっていたようです。

手術後(@uutannokirokuさんより提供)

その後、手術は無事に終わり、お母さんは久しぶりにうーたんを抱っこできました。

1ヶ月半の入院で…

うーたんにはお兄ちゃんとお姉ちゃんがいます。うーたんは1ヶ月半入院することになりますが、すべてのサポートを母と旦那さんがしてくれたといいます。

そのとき、お兄ちゃんは小学一年生になったばかりでした。お兄ちゃんに対して「息子はひとりでよく頑張ったと思います。自分で片付けをして、宿題して、自分で寝て、朝起きて。ママのいない生活をさせていることが私の中で申し訳なさでいっぱいでした」と話すお母さん。

お兄ちゃんお姉ちゃんと(@uutannokirokuさんより提供)

退院後のうーたんは、CPAP(シーパップ)という呼吸器をつけて生活しなくてはならず、毎日の機械チェックや月に1回の器具の取り替え、つけたまま外に出られないので、お母さんは家でどう過ごすかということを考えていたといいます。

うーたん①(@uutannokirokuさんより提供)

現在のうーたんは、普通の子たちと同じように生活できますが「1ヶ月半の入院生活で発達が少し遅れているようなので、心配事のないよう、できることをサポートしていきます」と話していました。

母親の勘を信じてほしい

お母さんはうーたんの病気についてSNSで発信しています。

「他のママに勇気をあげられるかもしれない。そして30万人に1人というレアカードをひいたうーたんが、病気だからといって後ろ指さされたり噂されたりするような人生にしたくない。ラッキーガールなんだよ!と伝えたかった」という思いから、発信していくことにしたのです。

また、うーたんがあまりにも可愛すぎるため「自慢したかったというのもあります」とお母さんは笑いも交えながら語ってくれました。

うーたん②(@uutannokirokuさんより提供)

発信していく中で「同じ症状があるかもしれないので心配です」というDMが多かったといいます。そのほとんどが1人目を育児中のママさんでした。
「みなさん共通して自分の子をとても愛しているんだと思います」と。

また、3名ものうーたんと同じ病気の方とも出会い、うち1名から「今、わたしはとても幸せです。うーたんも同じように思える日が来ます」と書かれたDMが送られてきました。これは今お母さんの大切な宝物になりました。

うーたんのお母さんは「うーたんの病をもっと早く見つけてあげたかった」とSNSで話しています。それには、周りからなんと言われようが、母の勘を信じてほしいという願いがありました。

初めは、ただの咳で初診は喘息診断だったうーたん。お母さんは、そのときにおかしいと思っていましたが「周りの人たちや先生が言うんだから…」と気に留めてもらえませんでした。しかし、明らかに弱っていくうーたんを見て、お母さんは再診の電話をすることに。

「とても勇気がいりました。嫌な顔をされるかもしれない。セカンドオピニオンの方がいいかもしれない」という思いがありながらも、勇気を出して「もう一度見てください、わからないなら紹介状出してください」とお願いしたのです。お母さんの「何かおかしい…」という勘が、うーたんの病気の早期発見に繋がりました。

入院中(@uutannokirokuさんより提供)

うーたんは一時は「ECMO(エクモ)という、肺の代わりになる機械をつけたままかもしれない。酸素チューブは外れないかもしれない。経管栄養かもしれない。旅行にもいけないかもしれない」と言われていました。お母さんは「今元気に過ごすうーたんといられることが何よりも幸せ」と話します。そして、今後は「何かに挑戦したい!というよりも、家族で過ごす時間をたくさんとって、とにかく幸せと思える時間をたくさん作ってあげたいと思っています」と語っていました。

うーたんは最初喘息と診断されましたが、その後の様子を見て「喘息ではないのかもしれない…」というお母さんの気づきによって、病気が見つかり、手術を受けることができました。
「母親の勘は当たる」とうーたんのお母さんが話しているように、何か変だと思ったらまずは誰かに相談してみる、病院に行ってみるということが必要なのではないでしょうか。

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