“初詣”の半年後に“夏詣”を 日本の新たな風習で神社を身近な存在に
日本の新たな風習「夏詣」
日本の新たな風習「夏詣」
日本人の多くが、年末年始に神社仏閣へお参りします。年越しの大祓で一年の罪穢れを祓い清め、翌日の元日は新しい年の始まりとして、その年の平穏を願う初詣を行います。しかしながら、一年のうち神社へお参りするのはその一度きり、という人も少なくないのが現実。そんな状況を憂う気持ちから、新しい風習「夏詣」が生まれました。
夏詣とは、2014年に浅草神社で始まった新しい取り組み。一年のちょうど折り返しとなる6月30日に、半年の罪穢れを祓い清める「夏越の大祓」を行います。そして、過ぎし半年の無事を感謝し来る半年の平穏を願うべく、7月1日以降に神社仏閣に詣でることを、新たな習慣にしようというものです。この取り組みは2015年以降全国の神社へと広まり、2021年、香川県の小豆島でもスタートしました。
小豆島での夏詣の中心となったのが、大和美祈さん。以前は浅草のまちづくりを行う会社に勤めており、そのなかで浅草神社での夏詣の立ち上げ・運営にも関わりました。
浅草神社の夏詣の運営に関わるなかで、神社が抱えるさまざまな課題を知ることになった大和さん。
「神社がそこに鎮座し続けるためには、地域の人のサポートが必要不可欠。だけど、少子高齢化が進んで若い人がいなくなると、それが難しくなってしまいます。私たちは日本人として、古き良き大切な風習を次の世代に継承していかなきゃいけない。そのためにも、初詣やお祭りのときだけだなく、もっと日常的に神社を訪れる機会を増やしていきたいんです」
小豆島夏詣プロジェクトは、若い世代を中心として進められました。大和さんが巻き込んだのは地元の青年団。島で生まれ、島で育った彼らもまた、地域活性化のために何かできることはないかと模索していたところだったといいます。
「島の担い手である若い世代の方たちにとって、神社はいわば彼らのルーツになるもの。それに私は移住者ですが、小豆島夏詣のスタートに地元の人が関わることで、夏詣が地元のものになるのではと思ったんです」と大和さんも振り返ります。
香川県神社庁の小豆支部へ企画を持ち込み、会場となる7社が決まったらプロジェクトチームは大忙し。ロゴ入りのちょうちんやのぼりの手配に始まり、オリジナルの御朱印や御朱印帳の準備、さらには茅の輪作りまで神職とともに行いました。
小豆島夏詣限定の御朱印では、「夏詣」の印は各神社で異なる色になっています。右下には小豆島夏詣のキャラクター「なっちゃん」の印も押されています。
夏詣には、「夏詣盆をどり」という踊りと歌があります。その歌は4番まであり、1~3番までは共通の歌詞、4番はそれぞれの地域オリジナルの歌詞を作れるようになっています。小豆島では全国に先駆けて小豆島バージョンの「夏詣盆をどり」を作りました。
「帰れるふるさと残したい」
「やっぱええとこ小豆島 いつでも待っちょるよ」
そこに込められているのは、島を出た人たちへのメッセージ。帰る場所を作って待ってるから、いつでも帰ってきてね。そんな思いが、島の美しい風景とともに歌詞に乗せられています。
「芸術祭やオリーブを目当てに島を訪れる人がいるように、これからは夏詣の御朱印を目当てに島に来る人が増えるとうれしいですね。7つの神社を巡れば島内のいろいろな地域に足を運んでもらえます。そのなかで、たくさんの島の魅力を発見してもらいたいです。翌年は、ほかの地域おこし協力隊のメンバーとも協力して、さらにパワーアップした小豆島夏詣をお届けできると思います」
地元の人だけでなく誰でも参加できる夏詣。小豆島では7つの神社(内海八幡神社、亀山八幡宮、葺田八幡神社、富丘八幡神社、伊喜末八幡神社、土庄八幡神社、離宮八幡神社)で、8月31日まで行われています。