香川県善通寺市にある「善通寺五岳の里」市民集いの丘公園。花や自然に関するさまざまなイベントが開催されていますが、2021年7月、少し変わったオンラインイベントが開催されました。

その名も「ヤギ博士とヤギの魅力を語る会♪」。イベントを企画・運営したのは、公園管理室の御手洗和代さん。なぜヤギに特化したイベントを企画したのか、その理由を尋ねました。

公園管理室の御手洗和代さん。「この公園には、5名のスタッフに加え、たくさんのシルバーさんやボランティアさんが関わってくれています」

公園・ヤギ・ヤギ博士 3条件揃い、開催へ

「善通寺五岳の里」市民集いの丘公園は2010年4月にオープンした、四季折々の花や木が楽しめる、約4ヘクタールほどの広さを持つ公園です。5名のスタッフを始め、多くの人々が関わっています。

「善通寺五岳の里」市民集いの丘公園の入り口

毎年春に「善通寺フラワー&ガーデンフェスタ」という大規模イベントを開いており、2019年は約17,000人もの人が訪れました。しかし新型コロナウイルス感染拡大のため、最近は小規模イベントに絞って実施。中止にならないようにと、ZOOMなどのWeb会議システムを利用するなど、花や自然に触れ合える企画を行ってきました。

ヤギのイベントを開催することになったきっかけは、2頭のヤギの姉妹の存在でした。2019年秋にやってきた、ユキちゃんとフクちゃんです。

「善通寺五岳の里」市民集いの丘公園で住む、ヤギのフクちゃん(中央)とユキちゃん(左)

「2頭がいるのは、公園の一番奥、入口との標高差が50メートルの場所。ヤギに会うためには、公園を縦断する必要があります。しかし道中で季節の花や緑に触れ合えますし、遠くは善通寺の街も見下ろすことができるんですよ」

天気が良い日には、山の向こうに瀬戸大橋が見えることもあります

“ヤギへの道のり”は、四季折々の花や緑にあふれる道。公園の魅力に出会える道でもあったのです。

「足を悪くされた方が『ヤギがいるところまで歩こう』と、日々散歩されていました。リハビリのかいあって歩けるようになったと聞いた時は、とても嬉しかったです。訪問する方にとっても、ヤギは、魅力の1つなんです」

ヤギへの道のりは公園の魅力に出会える道

イベントを開催することになったもう1つのきっかけに、ヤギ飼育のために御手洗さんが熟読していた『ヤギ飼いになる』という本があります。この本を監修した中西良孝さんが、偶然にも地元・善通寺市の出身だと判明し、御手洗さんのアンテナがピンと立ちました。

中西さんは鹿児島大学農学部の教授で、ヤギの行動や飼養管理について研究。さらに山羊やその生産物に興味のある人々が集う「全国山羊ネットワーク」代表。まさに“ヤギ博士”なのです。

公園があって、ヤギがいて、ヤギ博士がいる。3つ条件が揃い、さらに地域おこし協力隊の中川裕太さんのサポートが重なったおかげで、「ヤギ博士とヤギの魅力を語る会♪」が開催されることになったのです。

御手洗さん(右)と善通寺市地域おこし協力隊・中川裕太さん(左)

ヤギ愛あふれるオンラインイベントへ

イベントには一般の人はもちろん、県外の動物学科のある高校、富山や福島のヤギ牧場、ヤギを飼っている香川の動物園や公園まで、幅広い層が集結しました。

“ヤギ博士”中西さんによるヤギ講座は、プロフェッショナルの視点を交えた専門的かつ初心者にも分かりやすい内容でした。司会進行を行った御手洗さんは、これまでのイベント運営経験を生かして手書きのスライドを準備したり、『ヤギ博士に聞いてみよう!』というコーナーを設けたりして、工夫を凝らしました。

「ヤギ博士とヤギの魅力を語る会♪」で使われた、ユキちゃんの幼い頃の写真

『みんなのウチのヤギ自慢』コーナーでは、食事やしつけなどの情報交換が行われました。御手洗さんもユキちゃんの生育秘話をかわいい写真を掲載したスライドで発表するなど、それぞれの個性豊かな「ヤギ愛」が発表されていました。

左がユキちゃんの幼い頃。誕生時に体が弱く、獣医師の元で約2か月共に育ったとか。好奇心いっぱいのユキちゃんの性格が出ています

イベントは中西さんの「ヤギは主役より名脇役を目指すべき。縁の下の力持ちであるべきなんです」との言葉で、閉会になりました。御手洗さんはイベントと中西さんの言葉を振り返りながら「公園が主役、ヤギは名脇役。ヤギが幸せに暮らすこの緑あふれる公園で、多くの方にほっと一息ついてもらいたいです」と語りました。
元気なヤギがいて、花と自然の四季折々の姿が感じられる公園。ここを訪れる人たちの笑顔が、自然と浮かぶかのようです。

イベント終了後も「ヤギを通じたつながりを大切にしていきたい」と御手洗さんは考えています。これからどのようなつながりが発生するのか、期待を寄せずにはいられません。

大好きなビワの葉っぱを食べるフクちゃんと、御手洗さん

この記事の写真一覧はこちら