由緒正しき殿様の庭の桜を2年ぶりにライトアップ

香川県高松市の中心部にある「特別名勝 栗林公園」はミシュラングリーンガイド ジャポンにも選ばれた大名庭園だ。春と秋にはライトアップが行われ県内外から多くの人が訪れる。

2021年も桜の開花に合わせてライトアップが行われている。2020年の春は感染症拡大防止の観点から中止を余儀なくされたため2年ぶりのことだ。

依然として感染症対策を講じている状況のため、公園内でのレジャーシートを広げての宴会は自粛するよう呼びかけられている。

「少しさびしいお花見になりそうだけど仕方ないね」

案内を見ていた花見客が顔を見合わせていた。

オンラインお花見イベント!「栗林公園・大人の花見」2021年春のライトアップ

ライトアップ開催の報を受け、たちまちオンラインイベントを立ち上げた人がいる。

数々のイベントをてがけてきたプロデューサーの藤田徳子さん。香川県観光協会などがつくる「栗林公園にぎわいづくり委員会」が主催し、藤田さんが企画運営を行なう大人のための花見イベントだ。

スタビライザー(手ブレを少なくする安定装置)とスマートフォンを一新して配信に臨んだ

地元ミュージシャン・Mintの協力を得てライブが実現

322日の試験点灯の日には公園内の和船上から先行配信を行い、その後も連日のようにイベントを企画。

和船の夜間運行は光源が集中した北湖を周遊する特別コース

先行配信では公園所長や船頭さんから見どころをうかがった

配信ページには栗林公園のファンが集まり、オンラインでイベントを楽しんだ。

ライトアップ期間中、全7回のオンラインイベントを開催

なぜオンライン花見イベントを?

栗林公園のライトアップが決まった時からすぐに企画して動き始めた藤田さん。

「宴会ができないならお花見に訪れるお客様も減ってしまう。ここがまた観光地として賑やかになる時のためにも、公園のファンを絶やさずにいたいんです」

連日、公園内で配信テストを行った

撮影機材を揃え、連日公園内で配信テストを行った。撮影、音響、進行、レポーターをひとりでこなす。ライブ配信には音響の助っ人も加わった。

閉園後の園内で夜桜をバックに無観客で開催された

400年の歴史ある大名庭園にアコースティックな音色が響く

「生音楽ライブ」「樹木医と歩く」「老舗料亭の女将がこっそり教える」など季節の花を愛でるだけにとどまらないコンテンツが盛り込まれているのは、大人の知的好奇心をくすぐるためだ。27日にはスペシャルゲストとして、平井卓也デジタル改革担当大臣を迎えて園内の桜スポットを巡った。

配信中はバッテリーの消耗が激しいためモバイルバッテリーを携帯

有志の音響スタッフによってライブ会場さながら専門機材も持ち込まれた

今回のイベントはFacebookページの限定公開で、視聴するにはページに申請するというワンクッションが必要になる。

「栗林公園を訪れる時に入園券を購入する一手間があるように、オンライン花見ではページで申請の一手間を設けています。公園の伝統と格式を重んじる人たちにみてもらいたいという思いからです」

またオンライン配信では視聴者との双方向コミュニケーションが可能。配信画面には「きれい」「桜が見られてうれしい」とリアルタイムの反応が並んでいた。

自宅でワイン片手にオンライン花見。見守った人の感想は?

「船の上からの映像は普段見られない。贅沢な時間を楽しませてもらった」(岡山市の男性)

「お花見とあって、急遽ワインを開けてしまった。新しいスタイルの花見を楽しめた」(高松市の男性)

和船から眺める幻想的な映像を自宅から堪能できる

栗林公園の春のライトアップは44日まで。41日には今年最後のオンライン花見イベント「明治時代にタイムスリップ! “讃岐迎賓館”と歴史ロマン」が開催される。

「桜の歌を本物の桜の下で歌えて贅沢なステージ!」と演者も感激

配信動画はアーカイブされており、今後も視聴することができる

「ひとりで配信するのはチャレンジだったが、今後の自身のイベントプロデュース業にも生かしていきたい。今回のオンライン花見の視聴者の方々が『いつかこの公園に行きたい』と思ってもらえればうれしい」と思いを語った。

この1年で「常識」はいとも簡単に変わり、オンラインやリモートの環境は思いもよらず進化し、みな試行錯誤を重ねている。友人や家族とにぎやかにお花見を楽しめる日を、今はオンラインから楽しみに待ちたい。

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