思いがけない出会いが、人生を大きく動かすことがあります。
モンゴルの草原で羊や牛を追っていた一人の少年は、現在、日本で会社を経営。
そんな五十嵐さんに、これまでの歩みを聞きました。
草原での暮らし・心に秘めた思い
モンゴルの遊牧民家庭で生まれ育った五十嵐さんは、羊200匹、牛50頭、数頭の馬を世話する毎日を送っていました。広大な草原での生活は、休みなく続いていたといいます。
当時の義務教育は9年間。高校進学を望んでいましたが、家計に余裕がなく、諦めかけていました。
「嫌でも遊牧するしかない」と自分に言い聞かせていたそうです。

そんな中、日本人夫婦との出会いが人生を変えました。
観光で出会った夫婦から高校進学を支援したいと申し出を受け、嬉しくて感動する五十嵐さん。高校生活の3年間、夫婦は毎年会いに来てくれたそうです。
文房具を届け、日本の桜や紅葉の写真や動画を見せてくれることも。五十嵐さんは再会のたびに歓迎会を開き、段ボールで楽器を作って演奏するなど、かけがえのない時間を過ごしました。
挫折と努力を重ねた学生時代
高校卒業後、日本への留学を決意するも資金が足りず、渡航のめどが立ちませんでした。
「なんで僕だけ行けないの」と、涙ながらにお兄さんへ電話をしたこともあるそうです。
藁にも縋る思いで日本人夫婦に相談すると、学費と入国手続の支援が得られることに。
そして2004年4月、日本への来日が叶います。
親戚の中には、応援してくれる人は少なかったとのこと。
「どこまで家族に迷惑をかけるんだ」「わがまま言うな」と言われたこともあります。五十嵐さんは、悔しさと悲しさを胸に成功を心に誓いました。
来日後、最も苦しかったのは最初の半年間です。所持金は約5万円。日本語が十分でなく、アルバイトが見つかりませんでした。
紹介で中華料理店の皿洗いを始めましたが、勤務は週1~2回。短期アルバイトを掛け持ちして生活費を稼ぎ、居酒屋で長時間働けるようになった頃にようやく安定します。

就職活動も厳しいものでした。約80社を受けても内定がもらえず、少しでも可能性を広げようと運転免許を取得し、インターンにも参加します。
大学卒業後、ハローワークを通じて大手人材派遣会社に就職。この経験が現在につながっていきました。
外国人を支える経営者へ
日本で成功し、家族を豊かにする。そして、反対していた人たちを見返す。その強い思いが五十嵐さんを起業へと導き、独立を目指しました。

現在は外国人に特化した会社を経営し、就職や住居など多方面で多くの外国人を支援を行っています。
独立して10年。かつて抱いた「外国人の困りごとを解決したい」という夢を形にしています。国籍に関係なく共存共栄できる社会を目指し、外国籍の人がより働きやすい制度づくりにも取り組んでいます。
日本人夫婦とは今も月1回ランチを共にし、相談を重ねています。実際に「お父さん、お母さん」と呼ぶ存在で、精神面でも生活面でも支え続けてくれた恩人です。

現在、モンゴルの家族も安定した暮らしを送っています。今年には、娘さんの夏休みに合わせてモンゴルへ帰省予定とのこと。
一つの出会いが人生を変えることを、五十嵐さんの歩みが証明してくれました。

