2023年11月1日から12月11日の日程で「JICA海外協力隊秋募集」が実施されている。募集時期には全国各地で説明会や各種イベントが行われ、高知県でも11月19日に開催された県下最大の国際交流イベント「国際ふれあい広場」内で「JICA海外協力隊経験者によるパネルディスカッション」「JICA海外協力隊募集説明会」が実施された。

JICA海外協力隊経験者によるパネルディスカッションの様子。(右)松田さん(中)ウガンダに派遣されていた森田眞麻さん。現在は高知県内の中高等学校で教員として勤務している。(左)ゲストの「よしもと住みます芸人」淀家萬月さん。彼もまた、高知県の地域活性のため活躍する一人だ。

JICA海外協力隊として活動した2年間に、開発途上国で培われた能力や経験を活かし、日本の地域課題を解決するため多くの帰国隊員が全国各地で活躍している。今回、パネルディスカッションにパネリストとして参加した松田洋平さんもその1人だ。隊員としてマラウイに派遣された後、現在は家族で高知県に移住し「地域おこし協力隊」として活動している。

マラウイの主食「シマ」。とうもろこし粉(メイズ)を湯で炊いたもの。

人生は時折、思いがけない方向へと進むものである。

松田さんが塾講師として働いていた24歳の頃、将来への選択に迷いを感じ、新たな環境で自分を試したいと考えた。学生時代のインドでのバックパッカー体験が、途上国での活動に対する強い関心を呼び起こし、その思いがJICA海外協力隊への応募へと繋がった。

「広がる三色の原風景」の中で過ごした2年間

松田さんが派遣されたマラウイ共和国はアフリカ南東部に位置し、日本の約三分の一(北海道+九州)の国土に青い空・緑・茶色い土の広大な「アフリカの原風景」が広がる内陸国である。松田さんは南部州バラカ県にあるチェンベラ中高等学校に配属され、数学と物理を教えた。

青と緑と茶色の「アフリカの原風景」の中にある、配属先のチェンベラ中高等学校。

松田さんに2年間の活動の中で印象に残ったエピソードを聞いた。
日本では考えられないが、配属先の学校にはコピー機が無く、片道1時間半の道のりを自転車で何度も何度も往復し、試験問題の用紙をコピーした。
「日本との違いについて身を持って実感できた貴重な機会でした」と松田さんは語る。

松田さんと配属先の生徒たち

高知県移住のきっかけ

マラウイから帰国後はJICAに入構し、JICA海外協力隊候補生の訓練施設である二本松訓練所や青年海外協力隊事務局で約10年勤務した。同じくJICA海外協力隊経験者である松田さんの奥様の実家である四万十市を訪れるたび高知に魅了され、「いつかは高知に移住し、JICAで得た知識、経験を活かしてみたい」と思うようになった。
そして、子どもが生まれるタイミングで家族で嶺北地域にある土佐町に移住することを決断した。

豊かな自然に囲まれた嶺北地域。まさに「日本の原風景」である。

JICA海外協力隊やJICAでの経験を地域に還元

土佐町は高知県北部、四国の中央部に位置し、日本三大河川の一つ吉野川の源流地域にある、水と森と棚田に囲まれた「日本の原風景」が広がる人口約3,700人の美しい町だ。

美しい棚田。稲穂が実る時期には天空に浮かぶ黄金の草原のような景観が広がる。

「最近は台湾からの修学旅行も増えてきており、日本の田舎体験に皆さん感動されています」
松田さんは土佐町の地域おこし協力隊として、嶺北地域を管轄する土佐れいほく観光協議会に勤務し、県外や国外から嶺北地域への修学旅行生を増やす取り組みを進めている。
「まだ嶺北地域に来たことがない方は、是非一度遊びに来てください」松田さんは最後に笑顔でこう締めくくった。

JICA海外協力隊の詳細はこちら:https://www.jica.go.jp/volunteer/

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