役目を終え、廃棄される予定のバレエドレスたち。そのバレエドレスが、次はウガンダの子どもたちのもとへ送られました。

教育支援NGO団体なかよし学園は2023年5月に、アフリカの文化であるサプールにちなんだ「なかよしリトルサプール」プロジェクトを企画し、ウガンダの子どもたちへ衣装をプレゼントしました。

サプールとは、海外の高級ブランド服やとっておきの服を着て街中を歩く“世界一お洒落な男たち”と呼ばれる集団のこと。平均年収130円以下で暮らすコンゴの人たちが、あえて海外のブランド服を着ておしゃれを思いきり楽しむ文化です。

子どもたちにプレゼントされた衣装は神奈川県の衣装レンタル会社である株式会社アトリエヨシノが、なかよし学園へ寄贈したものです。

なかよしリトルサプールの様子(なかよし学園さまより提供)

今回、NGO団体なかよし学園の代表中村雄一さんと、リトルサプールプロジェクトのリーダー北川夏実さんに話を聞きました。なかよし学園は下は5歳から上はシニアの方が特殊な訓練を経て、現地で喜びを作るために活動をしています。

100着の衣装をプレゼント

なかよしリトルサプールの様子(なかよし学園さまより提供)

「なかよしリトルサプール」プロジェクトは、「オシャレで思わず笑顔になる心で戦争のない平和な世界を創る」をコンセプトに、ウガンダ共和国ルワムワンジャ難民キャンプで行われました。この難民キャンプでは南スーダン、コンゴ民主共和国、ルワンダから多くの難民を受け入れています。

寄贈された衣装は100着。イベント当日は難民キャンプの子どもたちと衣装を着て、歌ったり踊ったりして友好を深めました。

この企画を立案したのはプロジェクトリーダーである北川さん。北川さんは現在18歳です。高校生の時、地理の教科書でサプール文化を知った北川さんは、1日100円前後で暮らすコンゴの人たちがおしゃれをするためにお金をかけ、平和を訴える文化に興味を持ったといいます。
「今まで訪れた国でも、ボロボロの服を着た子どもやその日生きていくための食べ物がないような子どもたちを見てきました。アフリカに興味を持ったときにサプール文化に出会い、とても興味を持ったのです」

今回株式会社アトリエヨシノから話をもらったときに、日本で捨ててしまう服を提供すれば持続可能な支援ができ、子どもたちも喜ぶのではないかと企画を進めていきました。

衣装を見た子どもたちの反応は…?

なかよしリトルサプールの様子(なかよし学園さまより提供)

難民キャンプの子どもたちは戦争から逃げてきたり、親を亡くしていたりと心に傷を負っている子が多く、そういった子どもたちは写真を撮りたがらなかったり、笑わない子が多いといいます。

衣装を見せると、子どもたちは最初驚いた表情をしたといいます。
北川さんいわく「『こんな素敵な衣装を見たことがないし、まさか自分が着れるなんて思っても見なかった』と驚いていました」とのこと。

北川さんは「これはあなたたちにプレゼントするために持ってきたんだよ。これを着てみんなで一緒に平和をつくろう」と、一人ひとりに話しかけ、衣装をプレゼント。子どもたちは北川さんの話を聞き、徐々に心を開いてくれました。
服を買う余裕がなくボロボロの服を着ていることが多い難民キャンプの子どもたち。「こういう衣装を着れるなんて信じられない!」と喜んでいたようです。

また、北川さんを驚かせる出来事もありました。普段写真を撮るのに抵抗がある子どもたちですが、衣装をプレゼントをしたあと、子どもたちは北川さんに「写真を撮ろう」と誘ったというのです。
「子どもたちから『一緒に写真を撮りたい』と言ってくれたことがとても印象深かったです。活動を通じて心を開いてもらえたのは嬉しい瞬間でした」

衣装を着て北川さんと写真を撮る子ども(なかよし学園さまより提供)

中村さんは「こういった地域に北川のように若い子が訪問することはなかなかないんです。ある種危険なところではあるので。今回、子どもたちと同世代である北川が訪れ、一緒におしゃれをして笑顔を生むことができました。おしゃれが笑顔を生むということを世界中に知ってもらうことで、平和が生まれるのかなと思います。
(中略)誰かが見てくれている、自分にはいいことが起きるから頑張ろうという気持ちになってくれれば、戦争はなくなるのではないかと思っています。実際に難民キャンプから少年兵になっていく子がたくさんいます。そういった子を減らすためにも平和活動は必要だなと考えています」

今後は職業支援学校を設立予定

なかよしリトルサプールの様子(なかよし学園さまより提供)

持続可能な平和をつくるサプール活動は、7月にコンゴへ、8月にウガンダへ、12月にカンボジアにて実施予定です。音楽やダンス、劇などを盛り込み、サプール活動は進化していきます。

また、なかよし学園はUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)からオファーを受け、ルワムワンジャ難民キャンプから土地を貰い学校を建てる予定だといいます。職業支援学校を作り、裁縫や土木、農業など難民キャンプの人々が技術を学ぶ場をつくるのです。
「彼らに働くチャンスが生まれ、自分で稼ぐことにより犯罪や戦争への介入を防ぐことができます」と中村さんが話してくれました。

現在は設立に向けて準備中。学校の校長は北川さんが担う予定です。
北川さんは「企業とコラボをしながら職業訓練に必要な情報を提供し、この学校を作っていこうと考えています」と話してくれました。

国際舞台で活躍する18歳。若い力は今後も世界を動かしていくでしょう。

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