タイ人向けのTikTokフォロワー55万人、SNS総フォロワー70万人を抱えるバンコク在住日本人のまにょさん。彼女にタイでブレークするまでの経緯や、SNSに注力する理由を聞いた。

ドラマーがタイ向けTikTokerになるまで

「アロイマーク!(=すごく美味しい)」と、笑顔で激辛麺の食レポをする日本人女性の動画に、1000を超えるタイ語のコメントがつく。動画の主は、タイで人気TikTokerとして活躍中のまにょさんだ。

タイで人気の韓国製激辛カップ麺を食レポ(まにょさん提供)

中学時代に音楽に目覚めてドラムを始め、早稲田大学在学中に女性インスト・バンドを組んで全国デビューを果たしたまにょさん。6年のバンド活動を経て、音楽ライターに転向し、まにょさんは、2019年に念願だったタイ移住を実現した。

インスト(歌のない楽器だけで演奏された曲)バンド時代はドラムを担当(まにょさん提供)

移住後「タイを知らない日本人女性向けに、 “タイ=風俗” といったアダルトなイメージを払拭する新しい情報を届けたい」という思いでYouTubeを始めた。

タイ在住者やタイ好き以外の層にリーチする難しさに直面するなかで、転機が訪れる。とある動画を境にタイ人視聴者が急増したのだ。

「日本人目線でタイの魅力を語る動画がタイ人にリーチして数字が伸び、想定外の事態に驚きました。そこで、日本人向けにタイを発信するには、渡辺直美さんみたいに自分が海外で評価されて日本に逆輸入する形がベストでは?と思い至ったんです」

タイ人視聴者が増えるきっかけになったYouTube動画(まにょさん提供)

「タイで有名になろう!」と決意した彼女は、2021年1月に主戦場をTikTokに移し、タイ人向けの発信に舵を切った。

試行錯誤の末、食レポ動画で大バズり

TikTokの参入当初について、まにょさんは「滑りまくりだった」と振り返る。

「強みを生かそうとドラム演奏の動画を数本アップしたら、1000再生&100人フォロワーしかいかず絶望しました。でも反省と分析を重ねるうちに、TikTokの特性を掴んでいったんです」

突破口になったのが「ドラム×エンタメ」の動画だった。

「ある日『これだ!』とひらめいて、ドラム演奏にエンタメ要素を混ぜた動画を投稿したら、初日に1万再生を叩き出しました。でも友達には、『なぜこの動画が?』と全然理解してもらえませんでした(笑)」

ドラム演奏にエンタメ要素(脳トレーニング)を混ぜた動画がヒット!(まにょさん提供)

その2か月後には、10万人フォロワーを突破。勢いは止まらず、今度はタイ料理の食レポ動画が大バズりした。とくに激辛グルメを食べる動画は、「面白い!」「〇〇も食べて!」と大反響。

「タイ人と同じく、私も激辛グルメが大好きなんです。辛くて臭いマニアックなタイグルメを食レポしたら、『タイ人の私でも無理なのに』と称賛のコメントも増えました(笑)」

臭いが強烈なソムタムプーパラ(青パパイヤと塩漬け沢蟹のサラダ)の食レポ(まにょさん提供)

10代〜20代のタイ人女性がメイン層であるフォロワーは現在55万人に達し、仕事の依頼も多く舞い込んでくるという。

加速するタイのSNS市場が熱い!

まにょさんが熱量を込めて語るのは、タイのSNS市場が秘める可能性だ。

「タイ人のネット利用時間の長さは世界最上位で、SNS人口も圧倒的に多いです。大手企業の本格参入で案件や広告の数が増えて、タイのTikTokerの多くはそれ一本で十分な生計を立てています」

タイでSNSビジネスが盛り上がるのは、華僑の存在も大きいと分析する。

「タイには “ガンガン稼ぐぞ精神” が宿る商売上手な華僑が多く、マネタイズ機能の導入も早いです。彼らのモノを売るアイデアや手法をトレースするだけで、ビジネスチャンスが広がるはず」

バンコク開催、『名探偵コナン』の試写会にインフルエンサーとして招待されたとき(まにょさん提供)

朝から晩までSNSの数値分析やコンテンツ作成に情熱を注ぐ、まにょさん。彼女はなぜそこまでSNSに注力するのだろうか?

「根底にあるのは “大好きなタイの魅力を日本に届けたい” という思いです。それからSNSを”突き詰めて攻略したい” というマーケターとしての楽しさもありますね。若いプラットフォームの成長を追うのはワクワクします」

動画作成の裏側。企画や編集などすべて自分で行っている(まにょさん提供)

さらに、「本当は目立ちたいわけじゃない」という、意外な心境もあるという。

「私、実はメンタルが弱くて、ネガティブなコメントにもすごく傷つきます。でも自分が好き、面白いと感じるモノの魅力をみんなにどうしても伝えたくて、発信を続けているんだと思います」

チョンブリー県の地獄寺「ワット・セーンスック」にて(まにょさん提供)

2022年、まにょさんはタイでWEBマーケティングの会社を設立し、これまで蓄積したSNSノウハウを、事業にも全力投入している。

バンド時代から、彼女のなかで「自分が良いと思うモノに光を当てたい。そのために影響力がほしい」という信念は常に一貫していたという、まにょさん。「影響力をつけた先で、私なりの社会貢献ができたら嬉しい」と明るく笑った。

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