小豆島から豊島、粟島へ 会期中も成長し続ける参加型プロジェクト【瀬戸芸2022】

TANe FUNe(タネフネ)を動かすのは船長の喜多直人さん。
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TANe FUNe(タネフネ)を動かすのは船長の喜多直人さん。
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小豆島で現在展開している瀬戸内国際芸術祭2022のアート作品、「種は船 TARA JAMBIO プロジェクト」。一般のお客さんも一緒に海で漂着物を収集するという活動ができる、参加型のプロジェクトです。「海ゴミ」と呼ばれて悪者扱いされる漂着物も、元々は人間の暮らしのなかで役割を持っていたもの。そんな考えから漂着物を大切にコレクションする喜多船長が、全会期を通して瀬戸内の海を巡ります。
「種は船 TARA JAMBIO プロジェクト」は、アーティスト日比野克彦さんの作品。喜多さんは船長として、実際に現場に訪れる鑑賞者にプロジェクトの説明をし、TANe FUNeを操縦して一緒に海に出て収集活動を行います。
喜多船長には、ずっと疑問に思っていたことがありました。
「よくビーチクリーンとか海ゴミ拾いのイベントってあるじゃないですか。でも僕はその『海ゴミ』って呼び方にずっと違和感があって。どんなものでもかつては誰かの持ち物で、暮らしのなかで何らかの役割を果たしていたもの。それが捨てられたりして海に出ると急にゴミと呼ばれるようになるって、変だなあと思っていたんです」
この「種は船プロジェクト」では、船長が参加者と一緒に船で海に出て、さまざまな漂着物を収集。それを分類し分析することで、海の状況とあわせて人々の暮らしについても考えるという活動をしています。そしてこのプロジェクト、2022年の瀬戸芸で春会期は小豆島、夏会期は豊島、秋会期は粟島と会場を移して活動を継続。それぞれの島で収集した漂着物=その島の記憶をもって次の島へ行き、新たな記憶を積み重ねていきます。
喜多船長が大切にコレクションしている漂着物の一つに、「マメカン」というものがあります。これは牡蠣の養殖に使われる漁具で、宮城県や瀬戸内海など牡蠣の養殖が盛んな地域の海ではよく見かけるそうです。
「マメカンって本当に小さなものだけど、そこには牡蠣を育てる人や食べる人、さらにはその海そのものの記憶も宿っていると思うんです。これをビーチクリーンで見かけたら、海ゴミだ!悪いものだ!って感じる人が多いと思うけど、そもそも最初からゴミだったものなんてないですよね。プラスチック自体も悪者じゃない。かつて役割があったものなのに、いらなくなった途端に「ゴミ」と呼び方を変えるのは人間なんです。船長小屋では決して漂着物を海ゴミとは呼ばず、誰かの思い出のかけらとして大切に扱っています。暮らしの記憶の詰まった大切なものとして集めて、それが自分たちのライフスタイルを見直すきっかけになればと思います」
このプロジェクトは、春(4月14日-5月18日)、夏(8月5日-9月4日)、秋(9月29日-11月6日)全会期を通して活動。春は小豆島(池田)、夏は豊島(甲生)、秋は粟島にて展開します。