12月4日から2日間、香川県高松市で「全国年明けうどん大会inさぬき」が開催されました。会場であるサンメッセ香川に、北海道、秋田県、茨城県、山梨県、愛知県、大阪府、高知県、大分県など、全国から19店舗が集結しました。個性あふれるうどんがずらりと並び、その様は圧巻でした。

この「年明けうどん」の生みの親とも言える、本場さぬきうどん協同組合の理事長であり、「小豆島 麺匠 おおみね」社長の大峯茂樹さんを取材。年明けうどんへ込められた思いと、今回の「全国年明けうどん大会」について、話を聞きました。

大峯茂樹さん

年明けうどんとは?

うどんは太くて長いことから、長寿を祈る縁起物として食べられてきました。結婚式の引き出物にも登場することもあります。

「年明けうどん」は、純白なうどんに「紅いもの」を添えて、年の初めの1月1日から15日の間にに食べるものです。「紅」の具材は何でも大丈夫。香川県のうどん店では、赤いあん餅や金時人参、かまぼこ、梅干しなどのほか、ミニトマトや、高級牛のオリーブ牛、鮭とイクラを組み合わせたものもあります。

もちろん家庭で気軽に作ることができるのも、年明けうどんの魅力の1つ。赤い具材という自由度の高いルールが、各家庭でもアイデアや味に個性が出せる理由になっています。

年明けうどんが始まったきっかけ

大峯さんは2008年に香川県で開催された「世界麺フェスタ2008inさぬき」に、さぬきうどんの代表として参加しました。大会後のコーヒータイムに、仲間たちと今後の目標などを語り合っていた際、ふとした疑問が生じたといいます。

「年越しそばはあるのに、なんで『年明けうどん』といったものはないんだろうか?とね」

歳末の食文化として定着している「年越しそば」に対して、大峯さんが思いついたのが「年明けうどん」。年のはじめに縁起よい紅白のうどんを食べることで、1年の幸せを願おうというアイデアが生まれたのです。

そして2009年1月1日、香川県にある善通寺で紅いうめぼしの入った初の「年明けうどん」を、訪れた人たちにふるまいました。これが「年明けうどん」の始まりです。

その後、年明けうどんを「食文化」として全国に広めるため、日清食品と「日清どん兵衛・年明けうどん」を共同開発したり、トッピングとなる赤い具材を求めて東京へ赴いたりするなど、精力的に活動しました。

大峯さんは若い頃、実家の製麺業を継ぐ前は、カメラ製造メーカーの企画・営業の仕事をしていました。その頃に「ものづくりへ」のこだわりを叩きこまれたと言います。いかに自分が欲しいものを考えるか。ものづくりのマインドは、カメラもうどんも同じだと語ります。

「物事を成就するためには、しつこさも必要。でないと、思い出にならないんです」

2016年、香川県からも声掛けがあり、誕生したのが「全国年明けうどん大会」。大峯さんは、全国製麺協同組合連合会の現・常務理事でもあり、全国に大勢の「麺仲間」がいます。全国から様々なうどん店が出店し、2020年のコロナ禍でも感染症対策を施し、開催となりました。

一杯を求めて並ぶ人たち。

年明けうどんを全国へ!

年明けうどんの名称には「讃岐」と冠されていません。そこには、大峯さんの思いが込められていました。

「僕は全国の麺を知っています。うどん、日本そば、中華めん、パスタなど、本当に豊かな麺文化があります。うどんに関して言うと、出汁や麺の種類、具材も食べ方も様々。全国の皆さんに、さぬきうどんだけでないことを知ってもらいたいと思っています」

2021年、2日間に渡って繰り広げられた大会は、事前予約制や時間制限などの感染症対策を施しながら実施し、約5900人が訪れました。

広い会場内は、出汁の香りが充満。食欲をそそる香りです。

会場には、各地域の特色が表現された様々な年明けうどんが並びました。ほうとうや、団子汁、きしめんなど地域色の強い麺や、煮込んだうどんもあれば、焼うどんもあり、出汁が真っ赤なうどんも。赤い具材に「たこ」を用いた店舗もありました。

愛知県より「もろこしうどん 年明けうどんバージョン」。紅い具材は、小梅。

北海道より「北海道たこしゃぶうどん」。紅い具材は、北海道産みずだこと、かまぼこです。

訪れた人たちの中には、1時間という制限時間の中で、3杯をかきこむ強者も大勢いました。家族連れで楽しむ人たちの笑顔も印象的でした。大峯さんも会場で様子を見ながら、嬉しそうでした。

「今年も無事に開催できて本当によかったと思います。来年の大会では、何しよっかな!と今から思います」

年明けうどんに込める、2022年の幸せ。食べることで幸せを祈る、幸福なひと時を全国で楽しんでみませんか。

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