香川県高松市のギャラリー「Make Merry」で4月15日から26日まで開かれている個展「たいようのみちくさ」。

動物たちが散歩をしていたり、猫と小鳥が会話をしていたり、あるいは、猫が大きい木の幹でお店を営んでいたり。アクリル絵の具と色鉛筆を使った優しい色彩で描かれた動物たちのイラストは、あたかも絵本の中に迷い込んだようなわくわく感を演出しています。

「小さな友達」

個展を開いた香川県在住のイラストレーター・いとまみきさんに、着想のヒントやこの道を目指したきっかけ、そして新たなチャレンジについて尋ねました。

その日見た夢を描く

飼っていた犬や猫など、小さいころから動物に囲まれて育ったいとまさん。チラシの裏に描く絵は、自然と動物のものが多かったそう。現在も、動物たちの日常を想像したり、夢で見たりしたものを、イラストに表現していくことが多いそうです。

「Que sera,sera」

今回の個展のテーマである「たいようのみちくさ」は、ぽかぽか陽気の中に鳥が飛んでいる夢を見たことからインスピレーションを得たという、いとまさん。黄色い背景に動物が鳥に乗って飛んでいる情景は、あたたかい春の日に楽しそうに寄り道をしている動物の気持ちを想像させます。

「たいようのみちくさ」

「あたたかな日はなんか寄り道したくなりますよね。それでその日見た夢を描きました。あまり力を入れずに肩のちからを抜いて描くようにしています。1日で描けるものもあれば、4日かかるものもあります。描けなくなったら別のものを描き始めて、でもまた描きたくなってひっぱりだしてくることもあります」

「あかいくるま」

イラストレーターを目指すことになった2つの出会い

もともと絵を描くことが好きだったいとまさんですが、小学生のころに雑貨店で1枚のポストカードに出会います。パッと目を引く色彩と、ユーモラスなイラストを見て、くすっと笑えて、明るい気持ちになれたといいます。そして、そのイラストを描いた人がお菓子のパッケージデザインも手掛けていることを知り、イラストやデザインに興味を持つようになりました。

レイモン・サヴィニャックのポストカード ずっと家に飾っている

その後、もう1つの出会いがいとまさんに訪れます。雑貨店巡りが趣味だったいとまさんは、クリエイターや作家が、作品を展示販売する「Box Gallery Make Merry!」(Make Merryの前身)と出会います。訪れたその日に作家として登録。絵を描きながらハンドメイドのブローチやアクセサリーの販売を開始しました。

さまざまなクリエイターとの出会い。さまざまな作品から受ける刺激。実際に作品を購入したお客さんからのメッセージで、”絵を描くことの楽しさ””ゼロから一を生み出す楽しさや素晴らしさ”を感じるようになりました。

いろいろな人が手に取ってもらえるものへ

それからイラストレーターを目指し、たくさんのイラストを描いてきたいとまさんですが、「イラストの原画はお客さんが手に取りにくいのではないか?」という思いに至ります。

お菓子のパッケージデザインも手掛ける

もっと多くの人に手に取ってほしい、自分の作品を身近に感じてほしいという思いから、イラストを使ったオリジナルグッズの制作も手掛けるようになりました。現在は、カフェや書店、雑貨店とのコラボグッズを制作し、作品の幅を広げています。

コラボグッズ(缶バッジ)

今後の目標は絵本。「”このイラストが載った絵本を見てみたい”と言ってくれたお客さんがいるんです。文章はまだまだ勉強中ですが、挑戦したいと思います。イラストだけではなくて、イラストとお話がバランスがとれた絵本を作りたいです」

絵本に挑戦することを決めてから、イラストに対しても、ちょっとした変化があったといいます。

「子どもたちがより親しみを感じてもらえるように、という視点が加わりました。でも変わらないのは、あまり力を入れすぎず、肩の力をいれずに描くようにしていること。実際にイラストを見た皆さんにも自由に想像を楽しんでもらいたいです」

オリジナルグッズを見つめる(個展での様子)

優しくて、わくわくするいとまさんの世界。これからも絵本の中に連れ出してくれるような、素敵な想像の時間を与えてくれることでしょう。

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