バク宙の練習で失敗して首を骨折してしまった、けーそんさん。
“脊髄損傷”と診断され、歩けなくなり車いす生活になりました。
現在は、旅行やテーマパークでの体験をInstagramで発信しており、障がいがあっても楽しめるサービスの紹介には「参考になります!」「元気をもらえます」といった声が寄せられています。
そこで、けーそんさんに障がいのことや、発信をする理由などを聞きました。
バク宙の失敗が人生を一変させた日
ある日、バク宙の練習をしていたけーそんさん。最初は指導者の元で練習していたのですが、そろそろ一人でも大丈夫だろうと思い、自主練習したところ失敗してしまいます。首を骨折する瞬間も意識が飛ぶことはなく、痛みもまったくありませんでした。

声を出して助けを求め、30分後発見され救急車で大きな病院に救急搬送されました。
そこでけーそんさんのお母さんが呼ばれ、代理でインフォームドコンセントを行うことに。そしてMRI検査後、全身麻酔で手術が行われ、首を金属で固定されました。現在も首に6本のボルトが入っているそうです。
※インフォームドコンセント…医療を受ける患者が、病気や治療法について十分に説明を受け、理解した上で、自らの意思で治療を受けることに同意すること。
脊髄損傷の告知と受け入れまで
脊髄損傷と伝えられたのは、手術から数日後のことでした。怪我した瞬間体がまったく動かなくなり、治らないという覚悟はしていたというけーそんさんは、脊髄損傷と聞いたとき「まあそうでしょうねという気持ちだった」とそのときのことを振り返ります。
「正直めちゃめちゃ後悔していますし、悲しいものは悲しいです。最初のうちはベッドで1人泣くこともありました」


ただ、やってしまったものは仕方がないため「それでも、生きていてよかったと思うようにしました」と話していました。

脊髄損傷によって、生活の中で困難なことやサポートが必要となる場面はたくさんあります。そこで、特に大変なことは、排便、排尿、お風呂の3つです。

最も大変なのは排泄に関するケアです。トイレに行きたいという感覚がなく、毎晩便座に座って薬を使いながら、介助を受けて排便を行います。時間がかかることもあり、毎日の負担のひとつになっているそうです。
排尿についても感覚がないため、自分で出すことはできませんが、漏れてしまうことも。そのため、定期的に専用の器具を使って排尿を行っており、夜間は安眠のために管を挿入したままにしています。

お風呂は一人で浴槽に浸かることはできないため、シャワーのみ。車いすの椅子の部分と同じ高さの、1m四方くらいの台に乗り移ってシャワーを浴びているそうです。
発信は「誰かのため」と「自分のため」
「誰かの役に立てたら」という思いから、障がいについて発信を始めたというけーそんさん。
「活動を始めて良かったと思っています」と語るその理由には、活動の幅が広がり、新しい出会いがあったことでした。その中でも、脊髄損傷のためのチャリティーマラソン「wings for life world run」に参加し、打ち合わせでエナジードリンクを展開する企業の本社に行ったことが印象的だったと話します。

また、見ず知らずの方からDMをいただくことも増えました。事故がきっかけで半身に麻痺が残ってしまい、ほとんど外に出ることがなくなった女性の旦那さんからは、けーそんさんの発信を見て心を動かされ「このまま立ち止まっているだけじゃダメだな」という気持ちになったというメッセージがあったといいます。
そうした「応援しています」という内容のメッセージが多く「それは大きな励みとなっています」と語っていました。
また、旅について発信しようと思ったきっかけは、外出する理由が欲しかったからでした。
「旅行は好きですが、アニメや読書も趣味なので何も用事がなかったら引きこもります」と語るけーそんさん。
そこで、車いすでの外出は大変なのですが、旅行について発信するのであれば強制的に出かけなければなりません。
「発信は単にバリアフリー情報を届ける訳ではなく、自分が社交的であり続けるためでもあります」
車いすでも、楽しみや希望は広がる
けーそんさんは脊髄損傷の経験や旅の発信を通して、重い障がいや車いすであっても、いろいろ楽しいことがあるということを伝えたいと話します。
「僕の投稿を通して、1人でも元気や勇気をもらえたという人がいれば嬉しいです」
今後、挑戦したいことについて「海外に行ってみたいです。そして、いろいろな国のバリアフリー事情をこの目で確かめたいです!」と語ってくれました。
ここまで、たくさんのことを乗り越え、車いすでもさまざまなところに出かけ、楽しむけーそんさんの姿は多くの人に元気を届けています。車いすだからこそ、これまで見えなかった視点もあるようです。そうした視点で発信するけーそんさんの投稿は、障がいのある方はもちろんのこと、そのご家族や支援者にとっても貴重な情報となるでしょう。
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