「生理の前の不調に悩んでいる…」という方は多いのではないでしょうか。生理の前のイライラ感や眠気、肌荒れなどのPMS(月経前症候群)に悩む人は、月経のある女性の約70~80%、また、PMSの中でも特に精神症状が強いPMDD(月経前不快気分障害)は、月経のある女性の約1.8~5.8%の方が該当するとされています。
そこで自身もPMDDで悩み、生理についてさまざまな情報を発信している、なおたろーさんに話を聞きました。
心では分かっていても体が言うことを聞かない…
個人差はありますが、生理の約2週間ほど前になると体や心に不調が出ることがあります。それは、肌荒れ、体重増加、頭痛、むくみ、眠気または不眠、集中力の低下、乳房の張り、情緒不安定など人によってさまざまで、これらはPMS(月経前症候群)と言われています。
さらに、PMDD(月経前不快気分障害)はPMSと比較して精神的症状が重く、強い気分の落ち込み、イライラ、怒りっぽくなる、情緒不安定、集中力の低下、不安感、緊張感、焦燥感などの症状があります。PMSもPMDDも生理がくると症状は落ち着き、生理前になるとまた不調になります。
現在PMDD治療中のなおたろーさんは、20年以上前のことなのであまり覚えていませんが…と振り返りながら、少なくとも生理が始まった1年後には異変があったといいます。それは「感情がコントロールできない」「不安感・焦燥感に襲われる」といった症状でした。

(@naotarotarouさんより提供)
その当時は、生理前にそういった不調が起こるということは知らなかったため、その異変がPMDDだったかどうかは分からなかったのですが「おそらくPMDDだったのではないか?」と話すなおたろーさん。
また、学生時代は人間関係、社会人時代は仕事のストレス、出産後は育児のストレスや子どものイヤイヤ期などが重なったときは、比較的症状が重かったと語っていました。
なおたろーさんがPMDDの症状で特に辛かったのは、自傷行為に悩んでいたことと、それ以上に自分の感情をコントロールすることができず、周りに八つ当たりや暴言をぶつけてしまっていたことでした。
学生時代において、調子の悪い時期は人とのコミュニケーションを避けていました。しかし、子育て中はそうすることもできず「当時2歳だった長男や、夫には本当に迷惑をかけてしまいました…」と語ります。
なおたろーさんは八つ当たりや暴言をぶつけてしまったとき、いつも「どうして冷静になれないのだろう」と後悔をしていました。しかし、心では分かっていても体が言うことを聞かず「愛する家族を傷つけてしまう自分なんて、消えてしまいたいと思うほど悩んでいた」と話します。

(@naotarotarouさんより提供)
そうした辛い症状が、PMDDとはまだ気づいていなかったころのなおたろーさんは、人と関わらないために1人になるようにしていました。
「鬱っぽいから」と正直に言えば「メンヘラかよ」と思われるかもしれないし「調子が悪いの」と言えば余計な心配をさせてしまうので「用事がある」「バイトがある」などと嘘をついて、早めに人との関わりを終わらせるようにしていたと語ります。
女性ホルモンは自力でコントロールできるものではなかった
辛い症状を経験しながらも、ある日、その症状がパッとなくなり1~2週間は元気に過ごせるため、ホルモンの影響だとは思わず、メンタルが弱いだけだと思い込んでいました。しかし、2週間後にはまた辛い症状に襲われるのです。

そんなとき、テレビで「生理前のイライラに効く…」というCMがあったことを思い出します。
「生理痛の薬しか知らなかったけど、生理前のイライラを抑えられる薬があるなんてびっくり」と、そのときの気持ちを思い出したなおたろーさんは「もしかして自分も生理が関係しているのではないか?」と感じ始めました。そこで、生理日予測アプリをインストールしてみました。
また手帳も購入し、2ヶ月間その日の体調や気持ちについてメモを取ることに。すると生理開始2週間前から、かなり体調が悪くなっていることが分かりました。その症状をインターネットで検索したなおたろーさんは、まずPMS(月経前症候群)という言葉を知ります。PMSの症状に当てはまってはいましたが、さらに検索していくとPMDD(月経前不快気分障害)という言葉に出会い、驚くほどその症状と合っていたのです。

そこでなおたろーさんは、婦人科を受診しました。最初、医師からはピルか漢方薬の服用を勧められたのですが、当時はピルの知識がまったくなかったため、ピルを選択することができなかったといいます。しかしその後、インターネットや本などでピルのことを勉強し、次男の出産後の生理再開をきっかけにピルを服用することに…。
ピルを服用し始め、1週間ほどは軽い頭痛が続いたのですが、飲み続けることで治ったといいます。そして、これまで出ていた不安感、焦燥感などといった鬱症状が出なくなったのです。
「もっと早く飲めばよかった…!」と思ったのが一番最初の感想だと話します。
これまで「生理は病気じゃないから我慢するもの」「生理なんてみんな一緒なんだから」と言われてきたというなおたろーさんですが「症状は人それぞれだし、女性ホルモンは自分ではコントロールできないものだと痛感しました」と語ってくれました。
そして現在、ピルを飲み続けて8年になります。
自分に合う方法を見つけることを諦めないでほしい
なおたろーさんは、PMDDの経験をSNSで発信しています。
そのきっかけは、当時PMDDのことをインターネットで調べたとき、解説はあっても体験談がほとんどなかったということからでした。そのため「自分がPMDDなのかも?」と思っても、実際にそれで病院に行ったという話を聞くことができなかったため、病院に行く勇気をなかなか持つことができなかったのです。
そこで「もしかしたら私のように辛くて泣いている人が、同じようにスマホで必死に検索している人がいるかもしれない」と思ったなおたろーさんは「体験談をブログやSNSで発信すれば、検索に引っかかって『1人じゃない』と思ってくれるかもしれない」と考え、発信を始めました。

さらになおたろーさんは、PMSやPMDDについて産婦人科医の方にお話を聞き、2024年11月5日に「生理前モンスターだった私が産婦人科医に聞くPMS•PMDD攻略法」を発売しました。
「医学的な知識で、すごく難しい内容ですので、読者が手を止めることなく読み進めることができる内容になるように意識しました。専門的知識を噛み砕いて説明をしなくてはならないし、噛み砕きすぎても知識が不足してしまうといった問題が起こってしまうので、そのさじ加減が非常に難しかったです」と本にするにあたって意識したことを話してくれました。また「締切ギリギリまでネームを練っていました」と笑いも交えていました。
なおたろーさんが、同じようにPMSやPMDDに悩む方々に一番伝えたいことは、生理の症状やPMS・PMDDの症状は人それぞれであること。女性ホルモンは目で見えるものではないので、人と比べる必要も一切ないということです。
そして「辛いな」「この症状さえなければ毎日楽しく過ごせるのにな」と思っているのなら、絶対に無理をしないでほしいといいます。

また「さまざまなセルフケアの方法を試してみることもできますし、低用量ピル以外にも治療にはさまざまな選択肢があるので、自分に合う方法を見つけることをぜひ諦めてほしくないなと思います」と語ってくれました。
生理の不調は人それぞれであるため、周囲に理解されず、一人で苦しさを抱えている方もいるかもしれません。しかし、なおたろーさんは治療を始めたことで、辛い症状がなくなりました。治療をするまでに時間はかかりましたが、そうした体験を発信してくれることで「病院で相談してみようかな…」「一人じゃないんだ」という気持ちになった方も多いのではないでしょうか。