一見ふつうに見える人も、病気や障がいを抱えていることもあります。世の中にはあまり知られていない疾患もあり、そのことで傷ついてしまう人もいるのが現実です。

5歳のちよちゃんは、SGA性低身長症と知的障害、自閉症スペクトラム、協調運動障害を抱えています。ちよちゃんのお母さん(@chiyo.u2017)は、ちよちゃんの日常についてInstagramで発信しています。

SGA性低身長症のちよちゃん(@chiyo.u2017さんより提供)

ちよちゃんの身長が伸びなくなったのは、1歳9ヶ月のとき。3歳でSGA性低身長症と判明するまで、周りの人の言葉で傷つくこともあったといいます。

今回は、ちよちゃんについて、お母さんに話を聞きました。

ちよちゃんについて発信を始めたきっかけ

SGA性低身長症のちよちゃん(@chiyo.u2017さんより提供)

ーちよちゃんについて、Instagramやブログでの発信を始めたきっかけがあれば教えてください。
もともとSNSで子どもについて発信することについては、消極的でした。障がい児をさらしている、子どもで稼ごうとしている、といった否定的な意見があることを承知していたからです。
しかし、通院や療育園への通園の日々から、わが家を含めただでさえ社会から孤立しがちな障がい者やその家族の姿を見てきました。
それなら、一見ふつうの子に見える娘のことを発信していくことで、見た目で判断されがちな障がい者のイメージを変えたり、差別のないやさしい社会の実現に貢献できるかもしれない…と考えを少しずつ変えていったことがきっかけです。

SGA性低身長症について

ーSGA性低身長症とありますが、生まれたときのちよちゃんの身長、体重はどのくらいだったのでしょうか?また、SGA性低身長症とはどのような症状なのでしょうか?
ちよは38週で誕生し、身長43.8cm、体重2302gでした。SGA(子宮内発育不全)とは、お母さんのお腹の中にいる在胎週数が十分でも、体が標準よりも小さく生まれることを指します。
SGA児でも、そのうち9割は3歳くらいまでに身長が追いつくと言われていますが、追いつかない場合はSGA性低身長症が疑われます。
さらに一定の条件を満たすと、成長ホルモン注射による治療が適応となります。ちよの場合、一番平均との差がひらいていたのが、成長ホルモン注射を始める直前の3歳、80cm(-4SD)でした。

ー現在ちよちゃんの身長は何cmでしょうか?
5歳11ヶ月時点で身長106.7cm、体重18.6kgです。同じクラスのお友だちと比べても、ちょっと小柄な子くらいの印象にまで大きくなりました。

SNSやブログでの発信

ーSNSやブログでの発信をされていますが、投稿についてどのようなことを意識して投稿内容を考えていますか?
障がい児も健常児と変わらないことがあるよ、という他愛もない日常を投稿するのもいいのですが、障がい児育児ならではの大変だったり、悩ましいエピソードも入れるようにしています。
また、同じような境遇にある方々の少しでも参考になるようにと、娘の障がいが発覚する前の自分が知りたかったことや、将来、大きくなったちよの妹たちが知りたいことはなんだろう、などと読み手を意識して、投稿内容を考えています。

ーこの病気について発信することで、どのような変化がありましたか?また、良かったことなどもありましたら教えてください。
同じような境遇にある方々から、DMやコメントでご相談を受けることが増えました。
自分の体験を踏まえて相談者さんの気持ちに寄り添っていくことで、私自身の気持ちにも整理をつけることができ、お互い1人で抱えこまなくてよかったな、と思えるようになりました。
たとえば、一生懸命愛情をもって育てているつもりでも、周囲からちゃんと食べさせていないから、栄養が足りずに大きくならないんじゃないか、といった虐待やネグレクトを疑われているようなことを言われてつらかったこと。
また、低身長は直接命にかかわる症状ではないため、子どもに痛い思いをさせてまで必要な治療なのか、と悩んだ時期があったことなど。そういった同じ悩みをもつ方々の後押しになれるのは、ちよのおかげです。

ちよちゃんの活動

ちよちゃん(@chiyo.u2017さんより提供)

ー事務所に所属されていますが、ちよちゃんは現在どのような活動をされているのでしょうか?
ちよ自身は普段からリハビリや通院が多いので、モデル活動よりもブログでの障がいに関する認知などの発信がメインです。また、毎月は行けていないのですが、月一回開催のカフェで、さまざまな障がいをお持ちのほかの所属者の皆さんと、交流をさせていただいています。

ー事務所に入ったきっかけについて教えてください。
まず1つはSNSをはじめたきっかけ、と同じ理由です。もう1つは、病院や療育園といった発達の専門機関以外にも、社会との接点として、ちよにもできることはないか、と探していたことです。
習いごとのような形で、なにかできればいいなと。周囲のすすめもあり、モデルさんはどうかと県内や近隣のモデル事務所をあたりましたが『障がい者モデルは、需要がないのでやっていない』とはっきり言われてしまいました。
それならばと、障がい者専門のタレント事務所、ココダイバーシティ・エンターテイメントのオーディションを受け、CE生(エントリータレント)として所属するにいたりました。

ーこれからちよちゃんと一緒にチャレンジしたいことはありますか?
検査やリハビリが落ち着いたら、事務所のイベントにもっと参加し、いろいろな方々と触れあって、視野を広げていけたら良いなと思っています。
また、ちよには発達障害のひとつである協調運動障害というものもあり、運動が苦手で、手先もとても不器用です。ですが体や骨の成長のおかげか、ボールを投げたり手先を使った工作といった、細かな作業もできるようになってきました。
自閉症によるこだわりは薄く、むしろ飽きっぽい性格を逆手にとって、楽器・お絵かき・ハンドメイドなど、いつかお仕事にもつなげていけそうなことにも、たくさんチャレンジさせていってやれたら…と思っています。

これから多くの可能性をもつちよちゃん。今後どのようなことに興味をもち、力を伸ばしていくのか楽しみですね。

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