河川の清掃活動で、この暑い夏に特につらいのが、草刈り作業です。何度刈ってもどんどん伸びる生い茂った草。そんな堤防で活躍する驚異の草刈り機がTwitterで紹介され、13.7万以上のいいねをつけるなど話題になっています。

ラジコン操作で一度走り始めると、草刈り機の倍ほどもある草をものともせず、どんどん進んでいきます。まるで草を飲み込んでいっているように見えます。

コメント欄も、「スゲェパワフルにも程がある」「最初飲み込まれた草木は別の次元にでもいってるのかと思ったぐらいスムーズになくなってく」「もりもり消えてゆく。僕の近所の河川もお願いします!」などと盛り上がっています。

このことをツイートしたのは、生物保全の相談、環境学習活動や講演など様々な自然環境を守る活動をしている富山ゆう太(@mizube_tomiyama)さんです。今回のことを聞きました。

富山さんは現在、大分県由布市湯布院町で活動しています。湯布院は、温泉で有名な観光地です。温泉などの湧き水が多く、1年を通して気温、水温が温かいため、外来生物が過ごしやすく増えてしまうという課題があるそうです。

そんな中、この地域で「湯布院の田園地帯を流れる川の再生をしよう」と外来種の水草を抜くなどの活動をしようとしていたところ、堤防の草が生い茂っていたため前段階として草刈りをすることになったそうです。

「ゴミの清掃とか堤防の点検とか色々ありますけどやっぱり草が大変です。今までは、(手で持つタイプの)普通の草刈り機でやっていました。もちろん大変で夏は暑いです。そもそも誰がやるのという話になるんです。そういうのを担ってきていた人も高齢化してきていて、業者に頼もうにも、そんなお金はありません。全国どこでも問題になっています」

今回紹介した草刈り機は、大分県が所有していた、「ハイブリッドラジコン草刈機 神刈」という草刈り機。この日は、県の職員さんが来てラジコンで操縦してくれたそう。河川の草刈りに限り、希望する一般市民にも貸し出してくれるようになっているそうです。

アテックスが製造する「神刈」。そのお値段は、なんと300万円以上です。値段に見合う草刈りの威力だったのでしょうか。

「私も、河川の生態を守るために活動してきて草刈りはずっとやっているのですが、これはすごいです。びっくりしました。2メートルくらいある背丈の草を踏みつぶしながら刈れるので、どんどん刈り取ってすすんでいました」

斜面は45度までいけるとのこと。ラジコンで操作する。(富山ゆう太さんより提供)

機体の重量が365キログラムでタイヤがキャタピラ方式なので、重機が通った後のように草は全てつぶされて、刈っていたように見えたそうです。

「草刈りの中でも蔓(つる)の草に関しては、手動の草刈り機だと絡むんです。このような機械なら市民一人でも出来ますし、進化したんだな。と思いました」

『40分でコレですよ』(富山ゆう太さんより提供)

本来、自然を守るというだけであれば、草刈り機も必要ないそうですが、景観や安全など人間が暮らしやすさを追求するとやはり必要な草刈り。人間の暮らしのために他の生物の住処をなくすことがないように、知恵を絞って、生活していきたいと思いました。

刈られたあとの草は細かく切られている(富山ゆう太さんより提供)

「河川管理を楽にするために、よくコンクリートにしようという話が出ます。コンクリートにすれば、生物の多様性が全てなくなってしまいます。少子高齢化で人が減って、河川環境の保存などの自然の守り手が減っていく中で、農作業とか泥臭い仕事であっても最先端技術を使って、そこを突破していくのが人間の知恵と工夫なんです。今回のような機械を導入すれば、自然を守っていけるのでそういう方向になればいいと思います」

この記事の写真一覧はこちら