2021年12月30日と31日、同人誌即売会・コミックマーケット99(以下、コミケと略)が開催され、2日間で11万人が来場しました。2年ぶりのコミケということで、サークルスペース・コスプレ・企業ブースなどそれぞれで盛り上がりを見せましたが、もう一か所長蛇の列を作った場所がありました。それが献血バスです。当日献血の所要時間は最大150分にもなりました。

イベントなどでよく見かける献血バスですが、献血の集まりの状況について日本赤十字社の鈴木賢太郎さんと江川なつみさんに話を聞くと、新型コロナウイルスによるテレワークの増加やイベントの中止などにより、大きな影響を受けていることが分かりました。

コミケの献血率の高さ

2019年のコミケは、4日間の開催で献血バスは総数29台、献血人数は1864人でした。2021年はコミケの開催期間自体が2日間に縮小しており、8台の献血バスで献血人数は553人でした。

東京都赤十字血液センター 事業推進一部 参事 鈴木賢太郎さん

「通常は受付から休憩も入れて40分くらいで(献血は)終わるのですが、(今回は)バスのキャパ的にオーバーするような状況でしたので、受付から終了するまで150分のお時間を頂戴する。というアナウンスをしていました。それでも献血に協力いただいた方々がいました」(東京都赤十字血液センター 事業推進一部 参事 鈴木賢太郎さん)

1日に1台の献血バスで平均すると46~47人の献血をするそうなので、8台だと368人~376人が一般的な献血人数になります。やはりコミケでの8台で553人という献血人数は、平均をはるかに超えた人数ということになります。

鈴木さんによると、一般的なイベントと比較して、コミケは献血する人の割合は非常に高く、毎回献血をする人、新規で献血をする人の両方が多いイベントだそうです。

「参加する多くの方々が、献血会場で献血することや、コミケ献血応援イベント期間内に献血に協力することも含めて、イベントに参加すると捉えていただいているのではないでしょうか」

また、開催時期は献血が非常に厳しい時期と重なっているそう。鈴木さんは、「年末にこれだけの人数でご協力いただける規模のイベントは本当に少ないので、非常に助かりました」と話します。

コロナ禍で献血も中止相次ぐ

コミケの開催規模縮小にもみられるように、現在、安定的な献血への協力が得られにくい状況にあるそうです。それは、イベントの相次ぐ中止や企業のテレワークの推進によって、人が集まる機会が減少している影響によるものです。一番影響を受けているのが企業の団体献血の中止だそう。首都圏で稼働する献血バスのうち、企業の団体献血などを中心に多い時で約5割が中止となりました。

関東甲信越ブロック血液センター 事業部 献血管理課 江川なつみさん

「緊急事態宣言が出て、一番厳しい時は関東甲信越内で月間400件の会場が中止になってしまったこともあります。リモートワークを継続している企業様も多く、今も月間50件くらいは中止になってきていて、その代わりの会場を探すために職員が奔走している状況です」(関東甲信越ブロック血液センター 事業部 献血管理課 江川なつみさん)

現在は、企業の団体献血の中止の代わりに、地域に根差した町内会や奉仕団体などに協力をしてもらっているそうです。

お正月などの参拝時期には神社に献血バスがでることも。写真は、明治神宮での献血会(提供写真)

「現在、新型コロナウイルス感染症による影響を受けている方がたくさんいらっしゃると思います。そういう方々に心からお見舞い申し上げます。その中で輸血を待つ患者さんのために手を差し伸べている方々に対して改めて感謝を申し上げます。この時にも、怪我や病気と闘って血液を待つ患者さんがおりますので、ぜひお一人でも多く、お一つでも多くのご協力を頂ける団体様、手を挙げて頂けると大変助かります。ぜひご協力をよろしくお願いいたします」(鈴木さん)

献血バスは、集まる人数が少なくても50人が献血に協力できて、実施できる会場があれば、相談して配車することができるということです。

明治神宮の献血会では、協力者に干支のぬいぐるみがプレゼントされた(提供写真)

取材をしていて印象深かったのは、日本赤十字社の皆さんが何度も献血の協力者に対してお礼の言葉を言っていたことです。今、このような社会状況の中で自分に出来ることの一つとして、久々に献血ルームに足を運んでみようと筆者も思いました。

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