幅広い世代に愛され続けている、ゲームやアニメで人気の「ポケットモンスター(以下、ポケモン)」のイラストが、岡山県の奈義中学校の廊下に掲示してあります。近くでじっくり見てみると、消しゴムで作られた、消しゴムハンコの作品。数えてみると151匹! この作品を作ったという生徒に、消しゴムハンコの魅力と制作方法について話を聞きました。

奈義中学校の廊下に掲示されている作品集

出会いは小学校高学年のとき

「楽しそうだな、自分もやってみたいと思い作ってみた」
そう話すのは、奈義中学校2年の竹久心暖さん。小学校高学年の時に、消しゴムハンコをつくっている動画を見たのがきっかけで消しゴムハンコにはまります。初めての作品は羊のイラスト。たまたま家にあった消しゴムとカッターナイフで作ったそうです。

たくさんの作品が箱の中から出てくる

自分の好きなキャラクターで作ってみようということで、幼いころから好きだったポケモンのハンコを、小学6年生の頃から1日1つずつくらいのペースで、全て1人で作っていきました。そして、完成したのが、初代ポケモン151匹の消しゴムハンコ。箱の中から出して並べてもらうと、個性あふれるキャラクターが細部まで丁寧に彫り出されていました。

箱の中から次々と出されたキャラクターの中でも、一番のお気に入りはどくばちポケモンの「スピアー」。最近作ったのは、がんこうポケモン「レントラー」だそうです。もともとカラーで描かれているキャラクターのどの部分を凹凸にするかは自分で考えていきます。

最初につくった「フシギダネ」(左)、一番難しかった「ギャラドス」(中)、一番のお気に入りの「スピアー」(右)

中学生の消しゴムハンコ制作に密着!

用意するものは、トレーシングペーパー、土台の消しゴム、カッティングボード、デザインナイフ、デザイン画、そしてスタンプ台。心暖さんが利用しいているナイフは特別なものかと思いきや、100円均一で購入したデザインナイフだそう。これなら、誰でも簡単に取りかかれそうです。

少ない材料で気軽に始められる

2021年もあとわずかということで、年賀状にも使える来年の干支「虎」を作ってみてもらいました。

【デザインを消しゴムにうつす】
まず、自分が作りたいデザイン画をトレーシングペーパーにうつします。つぎに、土台となる消しゴムにトレーシングペーパーをのせて、ナイフキャップでこすり、デザイン画を転写。心暖さんは、自分の好きなイラストやキャラクターのデザインを使って消しゴムハンコを作ることが多いそう。

デザインが動かないようにテープで固定。デザインをキレイに転写させることもポイントのひとつ。

【消しゴムを回すのがポイント】
消しゴムにイラストを転写したら、いよいよ消しゴムに切り込みを入れていきます。ポイントは、消しゴムを回すこと。ナイフが動かされることはほとんどなく、消しゴムをくるくると回転させながら、線の周りを掘り始めます。また、ナイフの持ち方を鉛筆持ちにし、斜め45度くらいの角度で、掘り進めるのもポイントです。

慎重にナイフを斜めに入れる

【集中して慎重に】
「彫った時の境目が分かりづらい。そこが難しい」
心暖さんが使うのは、二層構造の消しゴム。表裏で色が異なるので、彫った箇所をくり抜いたり、細かい調整に便利ですが、わずか数ミリの線を扱う時には、境目が分かりづらく、集中力が必要です。細い線を切り落としたり、ちぎったりしないように、慎重にナイフを入れて彫り出された削りかすまでも、作品のように見えました。

削りかすまで作品に見える

押してからのお楽しみ

「彫っている時が楽しい。完成してインクを押してみるまで、どうなるかが分からないところが魅力」と話す心暖さん。デザインを消しゴムに転写してから完成まで、約1時間で虎の消しゴムスタンプが完成しました。

デザインを写すところから完成まで約1時間

消しゴムハンコに出会うまでは、何かにあまりはまったことがないという心暖さん。好きなものに出会い、集中して取り組むことができるものを見つけた心暖さんが、これからどんな作品を作っていくかが楽しみです。

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