岡山県玉野市の児島湖沿いを走っていると、近未来を思わせる不思議な建物が目に入る。正面には「451BOOKS」の文字が見えた。そう、実はこちら書店なのです。

まるっとした不思議なフォルムが目を引く外観

外観だけでなく、内観もユニーク。入り口の扉を開けるとすぐに螺旋階段が現れる。ぐるぐるっと階段をのぼる、その途中のあちこちにも本がレイアウトされていて、誘惑がいっぱい。階段を登り切ると、所狭しと本が並ぶ空間が広がる。「なんだか秘密基地に来たみたい!」そんな気持ちになってワクワクする。

扉を開けるとすぐに螺旋階段が登場

「以前、建築のお仕事をしていたんです。その頃は、プレハブ住宅を設計していたんですが、ある時、妻がお店を開くという流れになって。自分の思うまま、自由に設計して建てたのがこの店舗です」と、店主の根木慶太郎さんは教えてくれた。当初は妻の有紀さんが経営するカフェとして建てられたのだそう。

一冊一冊、セレクトした本を扱っている

螺旋階段から2階へ上がると、当時は児島湾を一望できるカフェスペースが広がっていたという。螺旋階段は、非日常を味わうような空間へ導く架け橋のような役割として設置された。

螺旋階段を登る途中にも本がいっぱい!

カフェオープンから15年が経ち、有紀さんが「やり切ったなぁ」という気持ちでカフェを閉店することを考えていた頃、夫の慶太郎さんから「本屋をしてみようかな」と相談されたという。

「夫は元々本が好きな人で。仕事をする傍ら、集めていた古本をインターネット上で売り始めていたんです。すると、思っている以上に反応が良かったようで少しずつ売れるようになっていた。わたしも本が好きで、幼い頃は『家が本屋だったらいいのに』なんて考えていたこともあった。やってみたらいいかなと本屋を始め、15年が経ちましたね」と、有紀さんは振り返って笑った。

螺旋階段を登ると所狭しと本が並ぶ空間へ

451BOOKSが扱う本は、古本、新書、リトルプレスなどさまざま。本棚がジャンル分けされていない点も特徴的。「偶然の出会いを大切にしてほしいという思いがあって、敢えてそうしていますね」と、慶太郎さん。

あちこちに飾られたポスターや小物もかわいい

取材当日、子ども連れやカップル、1人でふらっと訪ねて来た常連など、幅広い層の客が451BOOKSへやってきた。みんな、まるで宝探しをしているかのように本棚を覗き込み、あちこち楽しそうに手を伸ばしている様子が印象的だった。

「この本が欲しい!」そんな明確な目的を持って書店に行くのは効率がいい。けれど、偶然手にした本が、手元にずっと置いておきたいような大切な一冊になることもあるかもしれません。気になった方はぜひ一度訪ねてみてください。

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