雄大な那岐山や田園風景の広がる自然豊かな岡山県奈義町。この町には滝山を源流とする滝川が流れている。水質がよく生物も多くいることから、昔から多くのホタルが生息し、「滝川ホタル」と呼ばれ、夏の夜の風物詩として地元住民らに親しまれている。

奈義町在住のアマチュアカメラマン、小林猛さんが撮影したホタル。

1975年には岡山県の天然記念物に指定され、たくさんのホタルが飛び交う奈義町滝本地区では、25年前から地元住民の有志が主催し、小規模ではあるが心温まる「ホタル祭り」が開催されている。

夕暮れ時ホタルが飛び交い幻想的な滝川の様子(提供:小林猛さん)

今回は、祭りを主催している滝川ホタル祭り実行委員長の有宗啓三さん、前委員長の有宗泰明さん・克子さん夫妻に、祭りへの思いやホタルの住む環境維持について話を聞いた。

左から滝川ホタル祭り実行委員長の有宗啓三さん、前委員長の有宗さん夫妻(克子さんと泰明さん)

ホタル祭りへの思い

ホタル祭りは、1996年から地元組合の有志で取り組んだのが始まり。夜は真っ暗となる農道に、地元住民らの手で足元を照らすソーラーランプを設置したり、転落防止のロープを張ったりして『ホタルロード』が作り上げられる。また、朝から婦人部の人たちが仕込みをした名物のおでんを始めとした屋台も並ぶ。岡山県内をはじめ各地からホタルを観に、多い時で300~500人もの人が訪れてにぎわっているという。

滝川で見られるホタルの光の乱舞(提供:小林猛さん)

滝川ホタル祭りを開催することで、多くの人を呼び込み地域活性化に繋がるのではないか、また、環境づくりをはじめ準備などを通して、人々の交流の場の一つになればとの思いがあり、皆が協力して取り組んでいる。

2019年の滝川ホタル祭りメンバーの集合写真(提供:有宗泰明さん・克子さん)

ホタルの住みやすい川づくりのために

「自分たちが子どもの頃は学校から帰ってきた夕方から日暮れ頃になると、川が真っ赤になるほどのホタルが飛び交っていた。そして、窓を開け蚊帳で寝ていたその室内にも入ってくる程だった」と啓三さんは懐かしそうに語ってくれた。

しかし、農薬の使用等により一時生息数が激減。その後の環境保全などにより少しずつ数が戻ってきたそう。

子どもたちの手にも届くところで光を放つホタル

一度、絶滅状態にまで陥ったことのある滝川ホタル。現在、ホタルが生息するための川の環境保全については、毎年11月頃に地区住民で清掃活動を行っている。

夜になるとホタルの飛び交う滝川の昼間の様子

夜になると、ホタルの飛び交う滝川。昼間に訪れても、雄大な那岐山の麓に流れる清流に心地よい風が吹き、マイナスイオンを感じる。まさに癒しの空間だ。

マイナスイオンたっぷりで癒しの効果もありそうな川辺

地元の自然の宝を皆で守る

ホタル祭りが始まって25年。今まで、繋ぎ続けてきたこの祭りが、新型コロナウイルス流行で2020年につづいて2021年も開催が中止となった。立ち上げた当時は若かったメンバーも高齢となってきており、世代交代をしていた矢先だったという。

ホタルの生息する滝川に掲げられた看板

今は、携帯電話やSNS等で便利な世の中になり、また、このコロナ禍で人と人との触れ合いがますますネット中心になってきている。

「コロナ禍が落ち着いたら、この地元の自然の宝を皆で守り、ホタル祭りのように人と人が直接顔を合わせて交じりあい、交流を深めていく場をぜひ、若い人たちに継承していって欲しい」と3人は熱く語ってくれた。

地元の自然の宝を皆で守りたいと話す3人

風のない曇りの時がベストというホタルの鑑賞。6月中旬頃までは見られるというこの風情ある景色を、一度見に訪れてみてはいかがだろうか。