香川県高松市の画家・松山真理さん。一見すると、同じ人が書いたとは思えないような多様性に満ちた絵と、音楽に合わせて即興で作り上げる迫力あるライブペイントが特徴です。また、創作活動だけに留まらず、ワークショップも積極的に開催している彼女のアートに対する考え方、作品作りの根幹にある思いに迫ります。

転機となった寺の天井画制作

芸術の道に進むと決めたのは高校2年生の頃。美術部に所属し、油絵を描く毎日が人生で一番楽しいと感じたことがきっかけです。東京の大学に進学し、美術専門の学科で彫刻を専門に学んだ後、地元香川県に戻りますが、すぐにアーティストとしてのキャリアをスタートさせたわけではありません。働く傍ら絵画作品の制作に取り組んではいたものの、普段は派遣社員や高校の美術教師として働く日々を過ごしました。その後、絵の仕事1本だけでやっていこうと決意。アルバイトで生計を立てながら制作活動を行い、個展を開催するなどしていました。

「猫だって珈琲を飲みたくなる時がある」

「日曜日のBARBER」

転機となったのは教師時代の同僚が住職を務める、三豊市の寳林寺(ほうりんじ)の本堂天井画制作。この作品の制作後、徐々に仕事の依頼が舞い込むようになりました。また、この作品の完成をきっかけに、画風にも大きな変化が起きました。

寳林寺の天井画

「ここで一回違うことせんかったらいかんなってすごい直感的に感じたんですよ。やり切ったけん、次のステージ行くためには殻を破らんかったらいかんなと」

2年かけて天井画を制作した後は、それまでの松山さんにはなかった表現方法で、バラエティーに富んだ作品を制作し始めます。それはつまり、今まで芸術家として作り上げてきた世界観を壊すということでした。

「connect」

「常に破壊と再生をしていきたいっていうのが自分のテーマなんですよ」

それだけではなく、即興で音楽の演奏に合わせ、インスピレーションで絵を描くライブペイントも開始。そこで描く作品も毎回表現が異なるというのですから驚きです。

ライブペイント(2020年11月 四国村農藝祭)

アートで人生を豊かに

画風は変化しても根底にある思いは揺らぎません。

「アートを通じたコミュニケーションを大切にしたいんです」

作品の制作をするときには常にその先に人を想像し、何を伝えたいかを考えます。必ずしも、松山さんの意図と作品を見る人の感じ方が同じであるとは限りませんが、見た人が色々な視点を持ち、それをお互いがシェアすることでさまざまな価値観を持てるようになる。それが結果として人生を豊かにすることに繋がればと言います。

ライブペイント(2019年7月)

また、創作活動をする中で感じた喜びや楽しみなどを自分だけのものにするのではなく、みんなにシェアしたいという思いから、オンラインでのアートレッスンや塗り絵教室など、ワークショップも積極的に開催しているそうです。

「海」がテーマの空間で五感を刺激

松山さんは、6月1日から13日まで、高松市にオープンしたばかりの小規模複合施設「BRIC」で、こけら落としとして個展を2週間開いています。

レセプションパーティーにて、海を投影しているスクリーン上でのライブペイント

入ってすぐの1階を浅瀬、奥の半地下を深海に見立て、「瀬戸内海」をテーマにした絵画作品を展示。さらに、オリジナルアロマや巨大スクリーン、音響からもまるで海にいるかのような空間を演出します。

深海をイメージした半地下の空間は新作コーナー

「海で泳いだりするときって、ほぼ裸じゃないですか。何もないというか。丸裸で、命がダイレクトに見える感覚があって。それを感じたときに自分の本質が見えてきたんですよね」

そんな自身の経験から、来場者がありのままの自分を見つめなおすきっかけになればと考えています。

1Fには松山さんがかつて制作した作品が並ぶ

今後、日本だけではなく世界にもどんどん活動拠点を広げていきたいと言う松山さん。その活動や作品の”変化”から目が離せません。