おなかが繋がった状態で生まれた双子の赤ちゃん。 24年後の姿に「すごい」「素敵」「応援しています」

おなかが繋がった状態で生まれた双子の赤ちゃん。 24年後の姿に「すごい」「素敵」「応援しています」
生まれた時の様子①(@sakahika さんから提供)

栄さんと光さんは結合双生児として生まれ、生後2か月ごろに分離手術の実施が決まりました。
現在、24歳になったふたりは新たな夢に向かっています。

挑戦しているのは「低身長モデル」。
いったんは遠のいた夢に、もう一度手を伸ばしており、YouTubeなどにもその活動を記録し「すごい」「素敵」「応援しています」などのコメントが多く寄せられています。

この歩みについて、お母さま、栄さん、光さんにお話を伺いました。

母が受け止めた診断

生まれた時の様子②(@sakahika
さんから提供)
母と2人の様子(@sakahika
さんから提供)

妊娠初期に医師から「結合双生児です」と告げられた瞬間、お母さまは頭が真っ白になったと振り返ります。
想定外の事実に戸惑いはありながらも、「授かった命を大切にしたい」と出産を選び、前を向くことを決めました。

分離手術へ

出生後の検査で、内臓は基本的にそれぞれに備わっている一方、肝臓の一部が結合していることがわかりました。
そのため、体重がそれぞれ3kgを超えたころに分離手術を受ける方針が決まりました。

お母さまは最善の医療判断に委ね、手術に向けた準備を進めました。

前夜に伝えられた可能性

分離手術後の様子(@sakahika
さんから提供)

栄さんと光さんが生後2か月になった頃、手術の実施が正式に決定しました。
しかし前夜、胆管の状態によっては手術中に方針の見直しが必要になる可能性があると説明を受けます。

その後、手術中に胆管が2人分あることが確認され、手術は約4時間で終了。
術後2週間で退院し、家族は大きく安堵しました。

「自覚」はいつ

栄さんは「自分が結合双生児だったと自覚した時期は、はっきりとは覚えていません」といいます。
幼い頃から写真を見て自然に受け止めてきたからです。

「むしろ大人になった今のほうが、つながっていた頃の写真を見ると『これは本当に私たち?』と思うことがあります」と笑顔を見せました。

からだと向き合う。左右対称に現れる症状

幼少期の2人(@sakahika
さんから提供)

ふたりには現在、脊柱側弯症があります。
診断は突発性ですが、症状が左右対称に現れていることから、生まれ方の影響の可能性にも静かに目を向けています。

ふたりの素顔

共通する土台は、慎重さと心配性。
一方で、物事を決める場面では意見が分かれることもしばしばです。

栄さんは自分を「おっちょこちょいで短気」と分析し、光さんのストイックにやり切る姿勢を尊敬しています。
光さんは「真面目で気にしい、優柔不断」と自己分析しつつ、「栄は新しいことに飛び込むのがうまい」と語ります。

母が語る、その後

出産と手術ののちも、家族には経済や健康など現実的な課題が続きました。
お母さまは働きながら暮らしを支え、「子どもたちには我慢をさせた時期もあったが、前を向く姿に助けられた」と振り返ります。

出産後のある時期には、夫の病気や家計のやりくりなど難しさが重なり、家族は安全を最優先に暮らしの形を見直す選択も経験しました。
お母さまは介護の仕事に就き、日々の生活を支えながら、「それでも子どもたちの前向きさに救われた」と語ります。

なぜ今、語るのか“隠す”から“届ける”へ

家族は長らくは結合双生児である事実を公にしない選択をしてきました。
かつてテレビ番組で誕生時の出来事を紹介した際には、多くの励ましとともに一部で誤解や心ない声も届き、しばらくは公表を控えた時期もあったのです。

しかしその後、ネット上にすでに当時の情報が掲載されていることを知り、「隠すより、私たちの言葉で伝えよう」という気持ちに変わっていきます。
成長したふたりが自分の言葉で語れるようになった今、経験を社会に届ける意義をあらためて見いだしました。

2023年ごろのテレビ出演も、本人の言葉で伝える重要性を再確認する機会になりました。

低身長モデルへ

初めてのモデル撮影の様子①(@sakahika
さんから提供)
初めてのモデル撮影の様子②(@sakahika
さんから提供)

「低身長モデル」という夢は、実は5~6歳の頃から芽生えていたといいます。
プリンセスに憧れるような気持ちで「将来はモデルになりたい」と思っていたものの、12~13歳頃には背の伸びが落ち着き、いつしか夢は遠のいていきました。

転機は、2023年ごろにテレビ番組へ出演した際、将来の夢を問われたこと。
改めて調べると「低身長モデル」という道があると知り、「諦めなくていいのかもしれない」と感じたそうです。

番組内で思いを口にすると、放送を見ていた振袖会社の担当者から声がかかり、撮影を経験。
この実感が背中を押し、いま本格的に挑戦を始めています。

現在の身長は、栄さんが145cm、光さんが143cmです。
現在は養成所でウォーキングや撮影の基礎を学びながら、低身長モデルとしての活動機会を探しています。

小柄で双子という個性を強みに、安心して挑戦できる場に出会いたいと準備を重ねています。

得られた視点

栄さんと光さん(@sakahika
さんから提供)

光さんは、さまざまな条件のもとで活躍するモデルたちに勇気づけられてきました。
生まれ方や背の高さなど「条件の違い」がもたらしたのは、他者への想像力と共感だと見つめます。

「別の条件で生まれていたら持てなかったかもしれない視点です」と語りました。

これから

「私たちの存在から、医療の力や『夢は諦めなくていい』ということが伝わればうれしい。低身長で双子という個性を力に、いつかステージに立ちたい」と栄さんと光さんは、まっすぐに話します。
お母さまは「生まれてきてくれた日からの歩みを見てきました。次は、夢が叶う瞬間をそばで見届けたい」と結びました。

ふたりの物語は、「条件」が限界ではなく、視野を広げるきっかけになり得ることを教えてくれます。
いったん置いた夢を“選び直す”勇気は、誰にとっても等しく開かれている。そんな気づきを、静かに手渡してくれました。

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