看護師だった女性。7年後、父の闘病をきっかけに転身。現在のまさかの姿に「驚きを隠せません」「見えない」

看護師だった女性。7年後、父の闘病をきっかけに転身。現在のまさかの姿に「驚きを隠せません」「見えない」
看護師時代(鈴木さんより提供)

神奈川県を中心に建設機械器具のレンタル、販売、修理事業を展開する鈴機商事。その社長となったのは、元看護師の鈴木百合子さんでした。

看護師だった鈴木さんが、なぜ土木建設機械レンタル業界で社長を務めることになったのか、話を聞きました。

看護師としての道を選んだ理由

鈴木さんが看護師を目指したのは、高校生の頃。頭を縫うけがをした際に、看護師さんの優しさを感じたことがきっかけでした。

また、看護師という手に職をつけることで、今後人生で何があっても大丈夫という保証が欲しかったこともあるといいます。

 

看護師時代(鈴木さんより提供)

鈴木さんは看護師として就職しますが、1年ほどで妊娠したため、長くは勤めませんでした。

「長時間の残業や夜勤があり、覚えることも多く、ミスが許されない仕事なので大変でしたが、自分の行動が患者様やご家族の『ありがとう』に直結するのでやりがいのある仕事でした」と語ります。

また、子どもが幼いときに別居し、シングルマザーとなった鈴木さんですが、いつでも看護師に戻れるという安心感もありました。

鈴木百合子さん(鈴木さんより提供)

父の想いを継ぎ、経営の道へ

鈴木さんが父の会社を継ぐ決意をしたのは、29歳のとき。父の肺がん闘病をきっかけに、会社への想いを改めて知ったからでした。

寡黙で仕事一筋だった父は、手術後すぐに職場復帰し、1週間で再入院。その後も「会社はどうだ」と気にかけ、動けない状態でも「会社に行くから車を出せ」と言い、断ると「迎えに来い」と会社に電話したこともあったといいます。

「そんな父の会社や社員に対する熱い想いを再認識し、父の想いの詰まった会社をより良くしていきたい」と、鈴木さんは会社を継ぐことを決意しました。

その後、父が他界。

鈴木さんは入社前にもかかわらず、父の死後すぐに取締役に就任。その後、会社の実情を学びながら経営学修士(MBA)を取得し、青年会議所では理事長に就任。

組織を学ぶなど、仕事・子育てや家事・社外活動を両立させながら活動していきました。

「父が亡くなったことはとても悲しかったですが、手続きなどのやるべきことや会社を良くしたいという『使命感』に燃えていました。その結果が社長就任であると思っています」

周囲の反応と、継承への強い決意

建設機械のレンタル・販売・修理を手がける鈴機商事。新社長に就任した鈴木さんと初めて顔を合わせた人は、お客さまを含め、皆一様に驚きを隠せませんでした。

それは「見た目から建設業界の人間に見えないようで…」と鈴木さん。しかし、状況を知っている人からは「社長になったんだね!がんばってね!」と言っていただけると話します。

「周囲は応援してくださる方がほとんどなので、とても嬉しいし、有難いです」

鈴木さんは、業界未経験・女性、血縁の創業者が不在という面で、苦労したことが山ほどありました。しかし「父の想いの詰まった会社をより良くしたい」という決意が固かったことや、もともとポジティブな性格なこともあったため「苦労を苦労とは思っていません」と語ります。

建機と一緒に写る鈴木さん(鈴木さんより提供)

信頼を得る努力と、会社改革への挑戦

鈴木さんは、まず前社長との信頼関係を築く必要がありました。
「相手からすれば、何も知らないお嬢様だと思われていたと思います」と振り返ります。

前社長からの要求には、期待値を超える成果で応えるよう努力していきました。また、受け入れてもらうには実績で信頼を得ることが必要だったため、会社の管理をしていた鈴木さんは積極的に売上に貢献するよう努力をします。

さらに、コロナ禍では実行委員長として、例年行っている建機展を急遽オンラインのバーチャル展示会とするために、社内外の調整も行いました。管理部として、オペレーションがうまくいっていないところや、管理が行き届いていないところを見つけては改善するよう努め、社員が仕事をしやすい環境を整えていったのです。

建機展集合写真(鈴木さんより提供)

鈴木さんが仕事で大切にしていることは「相手の意見を聞き、想いを受け入れること」です。

同じ会社で働いていても、年齢や背景は人それぞれ。なぜそう考えたのか、より良くするにはどうすればいいのかを考えるためにも、相手の話に耳を傾け、想いを受け止めることが大切だと感じています。

「基本を忠実に守り、自ら模範を示し、自分の工夫や改善を加え、創造的に自立していくという『守破離』を大切にしており、このプロセスが何事も大切だと実感しています」と話していました。

「神奈川No.1の地場レンタル会社」を目標として

鈴木さんの今後の目標は、新体制を固めていくこと。

新体制となり理念経営を行うために、経営理念と行動指針を制定し、組織化を進めています。これまで個人主義・売上至上主義の会社でしたが「チームで協力し合い成果を出すこと」「付加価値を高め利益率を高めていく」ことにシフトしていると話していました。

発足時には、社員に新体制の方針を理解してもらうために経営計画発表を行い、変更点の説明をしたといいます。
「DX化に向けてワークフローの導入や基幹システムの変更、人事評価制度を変更し1対1でのミーティングの導入、完全週休2日制度の導入、福利厚生をさらに改善するなど、社員が働きやすい環境づくりに取り組んでいます」

「社員みんなが仕事にやりがいを感じてイキイキと働き『神奈川No.1の地場レンタル会社』になることが今の目標です」と鈴木さんは語っていました。

息子さんと(鈴木さんより提供)

鈴木さんには、この記事を読んだ人や新たな道に進もうとしている人へ、こうメッセージを残しています。

それは「なぜ新しい道に進みたいのか目的を明確にし、必ずやり遂げる決意をすることが大切」ということです。鈴木さん自身は「父の想いの詰まった会社をより良くしたい」という目的を達成するために、その時々でベストだと思う決断をしてきました。

「私は大好きな父の死というショックな出来事がきっかけとなりましたが、心から『やりたい』と思えることなら、つらい出来事もその過程の中のひとつの出来事となります。できると信じて挑戦し続ければ、必ず道は開けます!一緒に頑張りましょう!」と力強く話してくれました。

父の死というつらい経験をしながらも、鈴木さんはさまざまな努力を重ねてきました。

その歩みは決して平坦ではなかったはずですが、信念を持って前に進む姿に、勇気をもらった読者も多いのではないでしょうか。

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