生まれつき骨が折れやすい病気「骨形成不全症」を抱える吉次まりさん(@mari_yoshitsugu)。これまでに経験した骨折は100回以上にのぼります。
「健常者にとって骨折が『割り箸が2つに割れる』ことだとすれば、私たちの場合は『割り箸にグッと力を入れたらひびが入る』ようなイメージです」と吉次さんは語ります。
現在、1人で国内外を旅するなど、さまざまなことに挑戦し続ける吉次さん。これまでの歩みと、自身の病気について積極的に発信する理由を伺いました。
幼い頃から自分の病気を説明していた吉次さん
骨形成不全症の多くは胎児期に判明しますが、吉次さんの場合はエコー検査で分からなかったといいます。しかし、頭蓋骨が非常に柔らかく、お世話の際に異様に泣くことから、ご両親は違和感を覚えていました。

1〜2歳の頃に診断を受け、幼稚園に通う頃には自ら病気の説明ができるようになっていました。現在38歳の吉次さんは、身長約130cm、体重16kg。幼稚園時代は赤ちゃんほどの大きさでした。
「なんで赤ちゃんがいるの?」と不思議がるお友達には、「お腹の中で病気になって、骨が折れやすいからぶつからないでね」「みんなより成長がゆっくりだから小さいんだよ」と伝えていたそうです。「悲しいというより、聞かれたから答える感覚でさらっと説明していました」と当時を振り返ります。

幼稚園ではご両親に抱っこされて園庭を楽しんでいましたが、小学校に入り車いす生活になると壁に直面します。介助員さんがつくことで周囲との行動に差が生じ、体格差が目立ち始めた小学3年生頃からは「みんなと同じように生まれていたら…」と落ち込むこともありました。幼い頃は気の向くままに動いていたため骨折が絶えず、中学生頃までは常に包帯を巻いている状態だったといいます。
骨形成不全症によって大変だったこと
年齢とともに骨が強くなり骨折しにくくなる傾向があるとはいえ、日常的な注意は欠かせません。普段から車いすで生活する吉次さんが特に気をつけているのは、電車内での「立ち位置」です。
・上から荷物が落ちてこないか
・ヒールを履いた人がバランスを崩して倒れてこないか
・車いすの低い視点でも、周囲の人とぶつからないか
携帯電話を足に落としただけでも骨折につながるため、物を落とさない工夫も必要です。

最もつらいと感じるのは、骨折によって突然「生活が止まってしまう」こと。予定がすべて白紙になる悔しさや、「なんであんなことをしてしまったのか」という後悔に苛まれます。仕事で生産性を求められる場面では思い悩むこともありますが、そんな時は「時が過ぎるのを待つ」のが一番。骨が治り、できることが増えていくにつれて、心も少しずつ前向きに回復していくと話してくれました。

知ってもらうために、SNSや仕事で発信
SNSで病気について積極的に発信している吉次さんですが、当初は「自分自身のマネタイズ」が目的でした。
しかし、発信や社会生活を通じて、病気や障がいについて知ってもらうことの重要性に気づいたといいます。
現在は一般企業で会社員として働いています。
「仕事に出かければ、自然と人の目に触れます。駅員さんにスロープを出してもらう姿を見てもらうだけでも、『この街には車いすで生活している人がいる』と知ってもらうきっかけになるんです」。
職場で共に働く同僚たちも、自然と吉次さんに必要な配慮を理解していきます。こうした日常的な関わりが、障がいに対する先入観をなくす第一歩になると信じています。

1人旅を通して感じた、周囲との関わり方
吉次さんの行動力は海を越え、サンフランシスコやハワイ、国内では大阪、福岡、沖縄などでの1人旅を楽しんでいます。
「旅行が好きだから行っているだけで、不安はありません。誰かと一緒だと『足手まといにならないか』と気を遣うので、むしろ1人の方が気が楽なんです」。
そこには「障がい者=介助者と行動するもの」という世間の暗黙のルールに対する、少しの反抗心もあるといいます。

障がいの有無にかかわらず、人との関わり方は本来同じはず。
制度や環境を整えるだけでなく、「お互いを知ろうとする姿勢」が大切だと吉次さんは強調します。
以前、お店でウィンドウショッピングを楽しんでいた際、すぐに店員さんが声をかけてくれたことがありました。
親切心からとはいえ、「困った時はこちらから声をかけるので、そっとしておいてほしい」と感じたそうです。
「障がい者にはこうすべき」と決めつけるのではなく、まずは少し様子を見守り、本当に必要な時に手を差し伸べる。そんな社会になってほしいと願っています。

現在、ヘルパーを募集している吉次さんは「ボランティアというより、『ちょっと稼ぎたい』『この人面白そう』といった、もっとライトな感覚で応募してもらえたら嬉しいです」と明るく語ってくれました。
100回以上の骨折を経験しながらも、自分の足で社会に出ることを選び、単身で海まで渡ってしまう吉次さん。
その行動力の根底にあるのは、「もっと色々な世界を知りたい、知ってほしい」という純粋なエネルギーでした。
障がいの有無に関わらず、自分の人生を思い切り楽しむ彼女の姿は、多くの人の背中を力強く押してくれます。

