突如身体が思い通りに動かなくなり…目すら開けられなくなった女性。医師から“まさかの診断”を受けるも→SNSで発信を続ける理由とは

突如身体が思い通りに動かなくなり…目すら開けられなくなった女性。医師から“まさかの診断”を受けるも→SNSで発信を続ける理由とは
普段の様子(@from_dystonia_girlさんより提供)

身体がねじれるように緊張したり、自分の意思とは無関係に動いたり、症状の現れ方は人によって大きく異なり、非常に幅広いのが特徴である「ジストニア」という病気があります。
@from_dystonia_girlさんは、ずっと元気で大学では留学をしたほどでした。仕事も遊びも全力で楽しむ毎日でしたが、ある日首が勝手に動くなどの症状が出始め「全身性ジストニア」と診断されます。
ジストニアと診断されたときのこと、病気との向き合い方などについて話を聞きました。

※ジストニア…筋肉や骨に異常がないにもかかわらず、全身あるいは体の一部がねじれたり、固まったり、ふるえたりして思い通りに動かない症状

全身にわたって現れる症状

@from_dystonia_girlさんは「全身性多巣性ジストニア」という病気を抱えており、首のねじれや腹部の強い緊張、腕や手のこわばり、歩行時の膝や足先の症状など、全身にさまざまな不随意運動が生じています。

「全身性ジストニア」と診断(@from_dystonia_girlさんより提供)

症状が出ている場所は常に筋肉が緊張している状態のため、痛みや強いこり、不快感を伴うといいます。さらに症状が強まると、排尿が途中で止まったり、舌咽神経の過緊張で声が出なくなったり、顎が無意識に強く食いしばられて食事がしづらくなることも。

「普段は眠る直前まで症状が続き、脳が休む睡眠中だけが唯一、症状が落ち着く時間です」と話していました。

病名がつき、不安と覚悟が入り混じった日々

約5年前、精神科でうつ病や不安障害、パニック障害の治療を受けていた時期に、首が勝手に右にねじれたり、力が入りすぎたり、まぶたも意図せず力が入って開けられない状態になりました。

通院していたクリニックの医師から神経内科の受診を勧められ「ジストニアの可能性が高い」とされ、検査や診断が進んでいきました。

体が勝手に動く…(@from_dystonia_girlさんより提供)

約4年前に入院し「全身性ジストニア」と診断されますが、体が勝手に動くという症状に病名がつき、少し安心したそうです。

しかし、仕事や治療の今後に対する不安もありました。結婚が決まっていた時期でもあり、結婚式の前後で周囲に迷惑をかけるのではないかという心配も強く感じていた@from_dystonia_girlさん。それでも、自身の明るい性格から「病気がわかったからには向き合って付き合っていくしかない」と前を向こうとする覚悟と、不安が入り混じった不思議な気持ちだったと振り返ります。

結婚式を控え(@from_dystonia_girlさんより提供)

寄り添いながら楽しむ工夫

@from_dystonia_girlさんの旦那さんは、ジストニアとわかったときから治療法を探し続けており、その気持ちは今も変わっていないといいます。たとえ完全に治らなくても、痛みの少ない日や、楽しく自分らしく過ごせる日が少しでも増えればいいと考えているそうです。

旦那さんの工夫で車中泊も(@from_dystonia_girlさんより提供)

「症状と向き合うのも、治療を頑張るのも本人自身ですから、そばにいる自分が少しでも過ごしやすい日常を一緒に作れるよう寄り添いたいです。アウトドアやバスケットボールの試合を観に行く、車中泊を快適にする工夫など、病気でも一緒に楽しめることを考えるようになりました」と話してくれました。

不安障害、パニック障害、ジストニアと向き合うなかで…

病気になってから@from_dystonia_girlさんの日常生活は大きく変わりました。一人で外出するのが難しく、杖や車いすでの移動。食事では箸を細かく動かすのが難しくなり、フォークやスプーンを使うことが増えました。飲みものはストローを使う、飲み口が細いカップやボトルを選ぶなどの工夫をしています。

車いすでの外出(@from_dystonia_girlさんより提供)

以前は小児医療の現場で、子どもたちやその家族に心理社会的な支援を行う専門職として働いていました。
「大切に思っていた仕事へ、以前のようには戻れない現実に落ち込むこともありました」と語ります。

@from_dystonia_girlさんの症状は、首や顔など目につきやすい部分にも現れるため、外出時は視線が気になってしまうこともあります。悪意がないことはわかっていても、じっと見られることで緊張し、杖や車いすで公共交通機関を利用する際には一時期、外出を控えていたこともありました。

視線を感じることもありました(@from_dystonia_girlさんより提供)

以前は「自分に厳しく、弱音を吐かないように」と思い込んでいた@from_dystonia_girlさんですが、不安障害やパニック障害、ジストニアと向き合う中で考え方を少しずつ変えていきました。楽しいことは思いきり楽しみ、泣きたいときは我慢せず泣き、やり場のない怒りは自分なりの方法で発散するなど、自分の感情に素直でいることを心がけています。

現在は脳神経内科クリニックへの受診、リハビリ病院への通院、訪問リハビリを並行して行い、治療に取り組んでいます。

「笑顔で人を元気にする」を目標に…

@from_dystonia_girlさんは、ジストニアと診断されたとき、病気や治療の情報がほとんど見つからなかった経験から「自分の発信が同じ症状の人の役に立つかもしれない」と考え、SNSで情報を共有し始めました。

病気の有無にかかわらず、苦しい思いを抱える人たちにも「一緒に頑張っている人がいる」と伝え、誰かの笑顔や安心につながればという思いで、今も発信を続けています。

笑顔で人を元気に(@from_dystonia_girlさんより提供)

今後の小さな目標は、リハビリを続けて体力をつけ、また大好きなアウトドアを楽しめるようになること。
そして大きな目標としては、前職で出会った子どもたちから「つらいときも、あなたが笑顔でいてくれると安心できる」と言われた経験から、“笑顔で誰かを元気づけられる存在でいたい”と語ります。

さらに、SNSでの発信を通じて、障がいの有無にかかわらず、子どもや家族、悩みやストレスを抱える人たちがつながれる場をつくることも、いつか叶えたい夢だと明かしました。

ジストニアの症状は、ときに周囲から不審に見られてしまうこともあります。
それでも「こういう病気があるのだ」と知ってもらえるだけで、患者の不安は大きく軽くなるといいます。

@from_dystonia_girlさんの旦那さんのように、身近な人のちょっとした工夫や寄り添う姿勢が、当事者の暮らしや笑顔を支える大きな力になる。そんなことを改めて感じさせられます。

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