「ダイエットでも痩せなかったのに」突然5kgも痩せた身体。気がつくと救急搬送されており…→聞かされた診断結果と現在の様子を聞いた

「ダイエットでも痩せなかったのに」突然5kgも痩せた身体。気がつくと救急搬送されており…→聞かされた診断結果と現在の様子を聞いた

糖尿病でも1型と2型があるのを知っていますか?遺伝的な要因に加え、生活習慣が大きく影響している2型糖尿病に対し、生活習慣とは関係なく、主に自己免疫によって膵臓のインスリンを分泌する細胞が破壊され、インスリンがほとんど作れなくなるのが1型糖尿病です。糖尿病患者の約90~95%が2型で、1型は約3%程度です。今回は、27歳のときに1型糖尿病と診断された海音(みお)さんに話を聞きました。

体に違和感を覚え、救急車で搬送

海音さんが救急車で運ばれる2〜3週間ほど前、ダイエットをしてもなかなか減らなかった体重が5kgほどするすると落ちていきました。また、倦怠感や頻尿、普段飲まないジュースを欲するなど、明らかに体調の変化が続いたのです。

体に異変を感じていた(海音さんより提供)

違和感を覚えつつも「体重が減ってラッキー!」くらいに思っていたという海音さん。ところが、夜に熱っぽさ、呼吸のしづらさ、急激な喉の渇きを感じてベッドから動けない状態に。なんとか水を飲むも、数秒で吐き出してしまい、水分補給もままならないままだったのです。

一人暮らしの海音さんは意識がもうろうとする中、救急車を呼び、目を覚ますとICUで両手に複数の管がつながれていました。

ICUで知った糖尿病という現実

3日間過ごしたICUでの最後の日「あなたは糖尿病です」と告げられた海音さん。

そして、病気についていろいろと説明を受けますが「糖尿病」という言葉で頭がいっぱいになり、すべてを理解することができず、状況の整理もできませんでした。

「運動が大好きで、食生活も気をつけていた自分がなぜ?」という気持ちだったと話します。

その後、海音さんが一般病棟で出会ったのは、両腕のない看護師さんでした。腕がなくても器用に注射や処置をこなし、笑顔で患者と向き合う姿に深く心を打たれ「こんなにも前向きに生きる人がいるのに、自分は何を嘆いているのだろう」と感じたといいます。

人生まだ終わってない(海音さんより提供)

この看護師さんとの出会いが、海音さんに「生きる力」を取り戻すきっかけを与えました。

「劇症1型糖尿病」だとわかり…

医師から「1型糖尿病の可能性が高い」と告げられた海音さんは、ネットで調べるうちに、1型・2型・妊娠糖尿病・家族性若年糖尿病などの種類があることを知りました。

検査の結果、発症までの期間が短い「劇症1型糖尿病」と判明。原因は不明でした。これまで“糖尿病=生活習慣が原因の病気”と思っていた海音さんにとって、受け入れるまでには時間がかかったといいます。糖尿病にもさまざまな種類があると知り「一括りにしてはいけない」と考えが変わりました。

1型糖尿病だった…(海音さんより提供)

病気がわかったのはコロナ禍の最中。面会はできませんでしたが、仲の良い友人が塗り絵を送ってくれたり、Instagramで励ましのメッセージをくれたりしました。そのメッセージはすべてスクリーンショットして、今でも大切に残しています。

「本当に周りの人に救われました」と海音さんは話していました。

SNSで料理の発信をするように…

現在、SNSで料理について発信している海音さん。

料理に挑戦(海音さんより提供)

「最初は『血糖値を上げにくい料理ってどう作るの?』と戸惑うことばかりで、糖質量の計算や食材の組み合わせ方など、覚えることが多くて本当に大変でした」と語ります。料理に没頭し、気づけば6時間もキッチンに立っていたことも。

しかし、試行錯誤するうちに少しずつ楽しくなり「同じ悩みを持つ人の役に立てるかも」とSNSで発信を始めることに。ライブ配信をしながら自身の病気の啓蒙活動をしつつ、食べたものを報告したりレシピを紹介したりして、今では「血糖値を気にしながらもおいしく食べられる料理」を考えることが、海音さんの日常の楽しみとなりました。

海音さんの作った料理(海音さんより提供)

病気とともに生活するなかで、食事面では糖質だけでなく塩分の管理も意識している海音さん。我慢しすぎるとストレスがたまり暴飲暴食につながった経験から、現在は「無理なく続けられる工夫」を大切にしています。

運動面では筋トレだけでなく有酸素運動も欠かせません。
「体を動かすことは数字のためだけでなく心を整える時間でもあり、今では日課のひとつです」とも。

長く付き合っていく病気に対して「完璧を目指すより自分のペースで前向きに。病気があっても笑顔で自分らしく生きられる」と、これからも発信していきたいと語っていました。

発信を通して伝えたいこと

海音さんは同じ1型糖尿病の方やご家族からメッセージをいただくことがあり、特に印象に残っているのは、病気を告知されたばかりの人から「不安だったけど、あなたの投稿を見て希望が持てた」と言ってもらえたことでした。

一方で「糖尿病なら甘いものは食べられないでしょ」など、誤解や偏見の言葉を受けたことも。
「1型糖尿病がまだまだ正しく理解されていない証拠だと思っています」と語ります。

だからこそ、海音さんが発信を通して伝えたいのは「制限の中でも工夫しながら前向きに生きている人がいる」「病気=必ずしもつらい人生ではない」「糖尿病には種類がある」ことです。

海音さんは「発信を通して誰かの心が少しでも軽くなり、希望を持てるきっかけになれることが本当に嬉しいです。そして、いつか『1型糖尿病』という言葉を聞いても誰もが偏見ではなく、理解で受け止められる社会になってほしいと心から願っています」と話していました。

1型糖尿病の見えない苦労

1型糖尿病は見た目ではわかりにくい病気です。ですが元気そうでも実際は毎日インスリンを打ち、血糖値を測り、体調の波と向き合っています。

「糖尿病=血糖値が高い病気」というイメージがありますが、実は血糖値が下がりすぎる低血糖のほうが命に関わる危険があるのです。手が震えたり冷や汗が出たり、意識が遠のいたりなど、海音さん自身も管理がうまくいかなかった時期に救急車で運ばれたことがありました。

さらに、1型糖尿病は完治する病気ではないので治療を一生続ける必要があります。インスリンやセンサー、診察などを含めると、毎月1万〜3万円ほどの医療費がかかるそうです。そうした現実も含め「見えない苦労」を知ってもらいたくて、海音さんはSNSで発信を続けています。

挑戦は続きます(海音さんより提供)

「これからはSNSでの発信を軸に、1型糖尿病に対する正しい理解をより多くの人に広めたいです。また、同じ病気を抱える人たちが孤独を感じず、自分らしく生きられるような社会づくりにも貢献していきたい」と、今後への思いを話してくれました。

糖尿病と聞くと、2型を思い浮かべる人が多いかもしれません。けれど、糖尿病にはいくつかの種類があり、症状や治療法もそれぞれ異なります。大切なのは、病気を正しく知り、見えない苦労に目を向けること。そんな小さな理解や気づきが、誰かを支える力になるのかもしれません。

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