トゥレット症候群という病気を聞いたことがありますか?
自分の意思とは関係なく、首を振る、まばたきをする、体をたたくといった「運動チック」と、短い声が出る、咳払いをする「音声チック」の両方が1年以上続くと「トゥレット症候群」と診断されます。
この病気と向き合いながらも、SNSで活動しているへち(@hechi_3dayo)さん。
今回はその体験を伺いました。
数十秒に1回、チックの症状が…
へちさんは「運動チック」「音声チック」の両方がありますが、現在は音声チックが中心。
「あっあっ」「あれー?あれー?」「にゃーにゃー」などの声や「あーっ」と、大きな叫びが出ることもあります。

多いときは数十秒に1回、少ないときは数分間出ないこともあり、波があるといいます。へちさんの場合は、初対面の人の前では出にくく、慣れると増える傾向があるのも特徴です。

小学生になった頃、お父さんから「病気じゃない病気だよ」と伝えられ、自分がチック症であると自覚したへちさん。
「自分は病気なんだ」と深刻にとらえることはなく、両親はいつも最善を尽くして支えてくれたと振り返ります。

だましだましの日々を過ごした中学生時代
症状が最も強く出たのは中学生の頃でした。
公表すれば心ない言葉を受けるのではと恐れ、隠していましたが、症状は抑えきれず、いじめを受けた経験も。
へちさんは仲の良い友人に「くせが悪化してしまうような病気なんだ」と打ち明けたが「それくらいで(笑)」と取り合ってもらえず、他のクラスメイトに公表する気にはなれなかったといいます。
両親や担任の先生の協力でいじめについて対処しましたが、症状を抑えることで疲労が溜まりやすいへちさんは、保健室で休むこともありました。しかし「さぼり」と誤解され、反感を持たれることもあり、もっと良い方法があればと悩むことも。精神的にも苦しい日々を過ごしました。

「何とかだましだましの日々を過ごしたという感じです。二度と戻りたくありません」と当時を振り返ります。
「少しでも自分にできることがあるのなら」という思いで…
両親が新しい治療法を見つけてくれるたび「少しでも改善が見込めるなら」と前向きに取り組んできたへちさん。
やがて、自分のためにも他のチック症の方たちのためにも、認知が広がった方がいいと考え「少しでも自分にできることがあるのなら」とSNSでの発信を始めました。

現在の活動は日々の動画投稿がメインで、依頼があれば他アカウントに出演したり、トゥレット症候群について講演で体験を伝えたりしています。

現代社会においてへちさんが感じることは、メディアではかなり症状の重い方々ばかりが取り上げられているため、チック症への認知は広まったのですが、少し偏った認識で広まってしまっていると。
「チック症を正しく知っていただきたいと思っています。チックがあってもこういう生き方もできる、と参考になればうれしいです」と語るへちさん。さらに「これからも続けられるところまで、SNSでの発信を続けていきたい」と今後の目標を話してくれました。

実際、動画を見た人から「電車で大声をあげる人を見ても、きっと苦しんでいるのだろうと、なるべく気にならないような振る舞いをすることができました」といったコメントも寄せられていました。
公共の場で首を振っていたり、声をあげていたりする人を見かけた経験のある人も多いのではないでしょうか。そんなとき「こういう病気がある」と知っているだけで、接し方や心の持ち方は変わるはずです。

