日常のなかで思わずハッとする経験をすることもあるかもしれません。今回は、そんな出来事を体験した、50代の女性佐藤さん(仮名)に話を伺いました。
レジ前で起きた小さなトラブル
近所のスーパーでの出来事です。
会計の直前、佐藤さんが財布を開くと小銭入れが破れ、硬貨が床に散らばってしまいました。
慌てて拾い集めていると、後ろに並んでいた若い女性がすっとかがみ、「大丈夫ですか?」と声をかけ、一緒に硬貨を拾ってくれました。
「私も昔、同じことがあって」と笑うそのひと言に、張りつめていた空気がふっと和らいだといいます。
差し出された“備え”
会計を終えた後、その女性は自分のバッグから小さなポーチを取り出し、「よかったら、これ使ってください」と手渡しました。
遠慮する佐藤さんに、こう続けます。
「母が“予備を持っておきなさい”って言うんです。今日、それが役に立って嬉しいです」
思いがけない気遣いに、胸の奥がじんわり温かくなったと佐藤さんは振り返ります。
受け取った優しさを、次の誰かへ
見ず知らずの相手からの親切に「なんて素敵な方なんだろう」と心から感じた佐藤さん。
「あなたのお母様もきっと素敵な方なんでしょうね。今日は本当にありがとうございました」と感謝を伝えました。
この出来事をきっかけに、困っている人を見かけたら迷わず声を掛けようと決め、今では自分も“予備のポーチ”をバッグに忍ばせているそうです。
「ちょっとした神対応」が、社会の温度を上げる
人の優しさは、思いがけない瞬間にふっと現れます。
受け取った親切は時間が経っても色あせない記憶に。
一人ひとりができる「小さな気遣い」を積み重ねていくことが、日々の景色を少しずつ優しくしていくのかもしれません。

