2023年8月8日に発生したハワイ・マウイ島での山火事で、100人以上が死亡、現在も5,000人以上の人々が避難生活を強いられている。被害は人間だけではなく飼われていた動物たちにもおよび、3,000匹以上のペットが行方不明になっているという。

そんな状況をなんとかしたい、マウイの動物たちを助けたいと、クラウドファンディングに挑戦しているのが堀口久美子さんだ。「ビビりで人前に出るのは苦手」という堀口さんが、なぜ今回クラウドファンディングに挑戦したのか、取材した。

「もともとハワイにいたような気がする」

堀口さんがはじめてハワイに行ったのは大学生のとき。ハワイ在住の親戚を訪ねた。

「はじめてハワイに行ったときに『私、もともとここにいたような気がする』と、なんとなく感じたんです。ハワイにいるだけで血液がサラサラになるような、デトックスになるような、そんな感覚がありました」

結婚し、子どもが生まれた後は、毎年家族でハワイに行くように。特に観光するわけでもなく、ただハワイの空気を楽しんだ。

マウイ島にて

堀口さんはもともと絵を描くのが好きで、会社員のかたわらクリエイターとしても活動している。

堀口さんの作品

平日は働き、それ以外の時間はハワイを感じられるような絵を描いている。また昔から動物が大好きで、自宅では地域猫の世話をするのが癒やしの時間だ。

マウイ島火災、動物たちが気がかり

そんな折、マウイ島の山火事が発生。大きく被害を受けた西部ラハイナを訪れたこともあった堀口さんはショックを受けた。

堀口さんが訪れたときのラハイナの様子

「火災のニュースを見てから、1週間くらいモヤモヤしていました。地域猫と遊んでいるときも『マウイの動物たちは今どうしているんだろう?』と気になってしまって。でも、私一人が募金をしたところでたかが知れているし、どうしよう……とモヤモヤしていたんです」

一人でできることは限られている。でも、自分が中心となって行動を起こせば、大きなことができるかもしれない。そこでクラウドファンディングが頭をよぎった。

「でも、私はもともと表に出るのは苦手でビビりだし、お金に関わることって抵抗があるし……と怖くて一歩踏み出せませんでした」

そんなとき、自身が所属している会社「ボーダレス・ジャパン」のメンバーや活動に背中を押された。ボーダレス・ジャパンは社会問題をビジネスで解決する「ソーシャルビジネス」に取り組み、多くの起業家を輩出している。失敗もたくさんしながら、めげずに挑戦を続けるメンバーの姿を見て、行動することを決意した。

「私はいつも妄想することだけは人一倍で、行動には移せませんでした。でも、ハワイや動物たちのことが頭にあるのに、今何もしなければ一生こういう人間のままだ、と思ったんです」

クラウドファンディング立ち上げ

そこからのスピードは早かった。

クラウドファンディングサイト「For Good」に連絡を取り、記事や画像の準備、マウイ島の動物支援団体への連絡などを進めていった。支援活動はスピードが命。For Goodのスタッフから「1週間で立ち上げましょう」と言われ、ときには徹夜して準備した。こうして火災発生から約2週間後、クラウドファンディングのプロジェクトを開始した。

集まった資金は、マウイにいる動物たちの保護活動を60年以上続けている「マウイヒューメインソサイエティ」の活動資金にあてられる。リターン品には堀口さんが描いた絵のポストカードやバッグなどを用意した。

動物保護活動を行うマウイヒューメインソサエティー

プロジェクト自体は9月いっぱいで終了するが、堀口さんはその後も活動を続けるという。

「クラファンが終わった後も、クリエイターとして絵やグッズの売り上げの一部を毎月寄付しようと思っています。これからも、私の心はハワイとともにあります」

マウイ島は観光業が大きな収入源で、今回の火災によって経済的にも大きな打撃を受けている。「ラハイナ以外の場所は問題ないから、ぜひ観光に来てほしい」という地元の声もあがっているそうだ。

「今回、勇気を出して行動したおかげで、多くの気づきがありました。結局は、自分にできることをやるだけなんだと思います。それに、私一人の力ではここまでできませんでした。協力して、応援してくれた人たちに本当に感謝しています」

「マウイ島の火災に苦しむ動物たち、彼らを支える団体を支援したい」プロジェクト

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