「うまい!」「いいねぇ」「ごめーん」「ありがとう」瀬戸内海に面する岡山県玉野市の渋川海岸に、スポーツを楽しむ人々の声とボールの爽快な音が響きます。ラケットを片手にボールを打ち合っているのは「TEAM晴れの国FRESCOBOL岡山」のメンバー。県内初のフレスコボールのクラブチームを立ち上げたメンバーに、フレスコボールの魅力や楽しみ方について聞きました。

思いやりのスポーツ「フレスコボール」

フレスコボールは、ブラジル発祥のビーチスポーツ。1945年にリオデジャネイロのコパカバーナビーチで誕生し、現在は世界各地のビーチで親しまれるようになっています。日本に入ってきたのは10年ほど前で、日本フレスコボール協会を中心に、全国に23の公認クラブチームがあります。

フォアハンドとバックハンドを使い分けながらペアでラリーを続ける

必要なものは、卓球よりも一回り大きい木製のラケットとゴム製ボール、そしてペアの相手。打ち合う相手は敵ではなく味方で、向かい合う2人が協力し、ボールを落とさずにラリーを続ける点で、羽子板のような印象を受けます。相手の打ちやすいところへとボールを打ち返し、ラリーを続ける様子から「思いやりのスポーツ」とも言われているそうです。

ラケットには厳しい規定がないので、オリジナルのカスタマイズやアートペイントなども楽しむことができる

岡山発の公認クラブチーム発足

「TEAM晴れの国FRESCOBOL岡山」が立ち上がったのは2022年10月。国内で22拠点目となる、日本フレスコボール協会公認の地域クラブです。

TEAM晴れの国FRESCOBOL岡山のロゴマーク

代表を務めるのは、岡山県内でトレーニング指導をしているKAZこと井上和明さんと、HIDEこと池田英明さん兄弟。アドバイザーは、ブラジル生活経験のあるサンパウロ森清こと森清将史さんです。

2月に沖縄県宮古島で開催された「FRESCOBALL JAPAN TOUR 2023」にクラブチームの新しいユニフォームで参加(提供写真)

「フレスコボールの動きがトレーニングに使えるのではと弟HIDEから提案されました。実際にやってみると、いろんな動きがあるからトレーニングメニューのひとつとしても使ってます」
「海が好きだから、ビーチでできるスポーツっていうのがまたよくて。渋川海岸は眺めもいいし、ビーチじゃなかったら、トレーニングメニューのひとつくらいで、フレスコボールにここまではまらなかったかも」とKAZさん。

ブラジルでの生活経験のある森清さんは、
「ブラジルでフレスコボールを少しだけ友達とやったことがあって。ブラジルのビーチでやっている人も見かけたこともあります」
「フレスコボールは、場所とちょっとした時間があれば気軽にできるところがすごくいい。手軽でシンプルだけど、奥が深い。上達の終わりがないから、練習する度に、自分の成長具合が目に見えるのが楽しいです」と話します。

ペア同士の距離は7m、試合時間は5分間、持ち玉は30球。ペアでラリー回数やテクニックを披露して採点が行われる(提供写真)

フレスコボールの魅力

フレスコボールにはまっている3人は元球児です。本格的に始めたのは半年前。2022年7月に岡山県玉野市で開催されたフレスコボールの体験会をきっかけに、「面白いスポーツだから、一緒に楽しめる仲間を増やそう」とチーム設立に向けて動き始めました。

「沖縄フレスコボールキャンプ」イベント公式アンバサダーの沖縄人気芸人ありんくりんと(提供写真)

「野球指導に携わっているので、自分もプレーしたい欲はあるけど、指導していたらなかなかできないし、試合に出る機会も減って。フレスコボールは気軽にできて、自身のプレーしたい欲も満たしてくれるんですよね」と森清さん。

「まずは玉突きからやってみよう」と体験参加者にラケットっとボールの使い方を説明する森清さん

またKAZさんは、「フレスコボールの特有のルール、相手を打ち負かさず、ペアで繊細につなげていくかがおもしろいし魅力かな。ボールを落とさずに取るというルールに必死についていくので、そこに駆り立てられる。つながらなかったら、くそーってなるし、うまくつながるように考えるようになる。フレスコボールはまだまだ初心者だけど、技術もどんどん磨きたいって思ってるし、競技志向も湧いてきてるよ」と話します。

「うまいねぇ!」KAZさんの前向きな声かけは初心者をやる気にさせてくれる

2月に沖縄で開催された試合に参加したHIDEさんは、「ラリーを続けて得点を積み上げる競技、バディを思いやり、コミュニケーションを取りながら5分間を戦う。プレーの中で個々をアピールする事で、新たな自分を発見出来るのもフレスコボールの良さかと」と沖縄での試合を振り返りながら、フレスコボールの魅力を熱く語りました。

2月に沖縄県宮古島で開催された「FRESCOBALL JAPAN TOUR 2023」(提供写真)

世代を超えて楽しんでいきたい

今後、県民だれでも気軽に楽しめるスポーツとして、様々な年代の人に普及していきたいと、3人は話します。

フレスコボール体験会に初めて参加する小学生の相手をするHIDEさん

「体験会には、子どもから大人までが参加しています。競技人口がまだまだ多くはないので、今後いろんな人にやってもらいたいです。家族で楽しめる県民スポーツへの普及活動と岡山から日本代表選手を育成するジュニアクラブの設立にも取り組んでいきたいです」

「何の仕事をしていようが、社会人だろうが、学生だろうが関係ない。性別も、世代も関係なく、誰でも始めやすい。知らないからこそ、いろんな人と交わりやすいのがフレスコボールの良さです」

「スポーツ界によくある細かい決まりごとがないので入りやすいし、自分のペースの中でできるのがいい。思いやりのスポーツっていうのがいいでしょ」

2023年4月には、中国地方での初公式戦「FRESCOBALL JAPAN TOUR 2023」の開催が渋川海岸で予定されており、岡山のクラブチームとしての初めての大会参加を控えています。

岡山県玉野市にある渋川海岸

たった数回、たった数分のラリーで、コミュニケーションをたくさんとりながら、距離がグッと近くなった感じがするフレスコボール。暖かくなるこれからの季節、家族や友達、はじめましてのメンバーと気軽に、フレスコボールの魅力に触れてみてはいかがでしょうか。

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