東アフリカの内陸に位置するウガンダ。ここで2022年8月、JICAとウガンダサッカー連盟らとの共催で、女子サッカー大会TICAD CUP 2022が開催された。同大会では、裸足でサッカーをしてきた難民とホストコミュニティの混成チームが1勝をあげ、関係者に大きな感動を与えた。この大会には、JICAウガンダ事務所で日本とウガンダの連携を支援している森亜矢子さん(NGO-JICAジャパンデスク担当)も関わっていた。

初勝利を収めた後の難民・ウガンダ混成チーム

徳島からニューヨーク、そしてウガンダへ

徳島県出身の森さんはサッカー少女だった。兄たちが所属するクラブに入り、男子に交じってサッカーに汗を流していた。

津峯神社(徳島県阿南市)で遊ぶ子ども時代の森さん

高校卒業と同時に徳島を出て、大阪にある大学で建築デザインを学んだ。その後、建築の勉強を続けようと渡米したものの、いろんな人と関わる仕事がしたいとウェブデザインを学ぶことにした。卒業後は日系情報誌を製作するニューヨークの会社に勤務した。

渡米から数えて11年が過ぎようとしていた頃、「何か人のためになることがしたい」と、国際協力の仕事に興味を持ち、当時、“アフリカとかに行く人”という程度のイメージしか持ち合わせていなかったJICA海外協力隊に、貯金がなくても参加できる、現場の経験を手に入れるのに一番いい方法と思って応募した。

「ダイビングが好きで、徳島でも時々潜っています。だから、海がきれいなところを(活動希望国として)何か国か選んだんですけど」

しかし、彼女に届いた合格通知には、海に面していないウガンダの文字。彼女も晴れて“アフリカとかに行く人”になった。

ウガンダの田舎の学校でパソコンを教える

森さんが応募したのは、自身のスキルを生かせる「PCインストラクター」という職種。途上国の人々にとってパソコンを使えるようになることが、将来的にプラスになると考えたことも理由の一つだ。そんな彼女は、ウガンダの地方にある政府の運営する中高等学校で、ICT(情報通信技術)の指導やコンピューターのメンテナンス等を行った。

スカイプを使って日本とのオンライン通話を体験する授業の様子(ウガンダ)

活動を通して、政策の影響を一番に受けている地元の人々の努力と苦労、そして、それでも変えることができない課題を目の当たりにし、政府と現場(地域)の大きなギャップを感じた。

その2者の間を取り持ち、人々の生活を改善させたいと、協力隊を終えた後は国連平和大学の修士課程でメディアと平和・紛争学を研究した。そこでの学びから、地域と連携をとりながら国際協力を推進していくことに関心が高まり、再びウガンダに戻った。そして、記事冒頭で紹介した通り、NGO-JICAジャパンデスクとして、日本のNGO等とウガンダをつなぐ業務に従事している。

JICAウガンダ事務所にて

難民が抱えるメディアの課題

森さんに今後の展望を聞くと、「メディアを使った平和構築という分野の仕事を模索していきたい」と返ってきた。

ウガンダは、150万人以上の難民が滞在している、アフリカ最大の難民受け入れ国と言われている。国境を接するコンゴや南スーダンからの難民は、着の身着のままで母国を逃れる、いわば、日本人がイメージする“難民”が多い。ただの道具としてスマホ等を途上国の難民に渡しても、ICTの基礎がないため正しい情報が得られる保証はなく、むしろ、騙されて被害に遭う事例も報告されている。

「そうした被害を防ぎ、難民や紛争に遭った人たちの手助けをしていきたい」と、森さんは一つひとつ言葉を選びながら丁寧に語った。

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